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04 ビキニアーマーなんて着たくない
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「って事なの。ひどいと思わない~?! うううっ~」
私は洗いざらい思いの丈をイサークに吐き出した。話が長くなったのでイサークは椅子に座って話を聞く羽目になっていた。
表情を表に出さないイサーク。泣き出した時は流石に驚いていたけれど、すっかりいつものイサークになっていた。
無言、ひたすら無言。何だか岩にでも話しかけている気分になり私は拳を作りポカッとイサークの三角筋を叩いた。
「ねぇ?! 聞いてるの?」
「聞いているさ」
「岩がしゃべった!」
「岩?」
私はイサークの声を聞いたら、止まりかけた涙が再び溢れてきた。
イサークは叩いた私の拳を大きな手で包み込んだ。いつも剣を握るその掌はカサついて所々にたこが出来ていた。
私はちり紙を取ってチーンと鼻をかんだ。そして涙を拭って呟く。
「……よく考えたらさ、このビキニアーマーが宝箱から出てきた時、ルカは私に渡すかカスミに渡すかで、迷っていたわよね?」
「そうだったか?」
「そうよ!」
ダンジョンに潜った仲間は途中で散り散りになった。泥棒のキーロも一緒だったから、宝箱を見つけたら鍵を開けて欲しかったのに。キーロは途中ではぐれちゃうし。必要な時に役に立たないんだから。だから一つしかない宝箱の鍵は貴重だったのよ。
一番奥の魔物を倒したら出てきた宝箱の中に、この紫色のビキニアーマーがあった。その宝箱を開けた時、勇者ルカにカスミ、イサーク、私の四人だけだった。もしかして、あの時からルカはカスミに思いを寄せていたのかしら。
「きっと肌の露出をカスミにさせたくなかったのよ。だから私にビキニアーマーを……」
ルカは私とカスミを見比べてから、私に紫の派手派手しいビキニアーマーを差し出したのよ。
そう思うと、余計悔しくなってきた。何て事なの?! 私だってカスミと一つ違いの乙女なのよ。しかも私は処女なのに、こんなビキニアーマーを着る事になるとは思わなかったわよ。
「ビキニアーマーなんて凄く恥ずかしかったのに! それでもルカからの贈り物だから大切に思って身につけたのに……」
カスミが好きなら好きと早く言ってくれたらよかったのよ。そうしたらこんなに恋心を募らせる事はなかったのに。
私は改めてビキニアーマーを身につける恥ずかしさを思い出し、身悶えていたらイサークは首を傾げた。
「俺がルカの立場だったら、そうだなカスミが好きだとして。それならビキニアーマーはカスミに渡すがな」
いつもなら相槌ですら打たない、返事をしないイサークなのに低く冷静な声でぽつりとこぼす。だけどその内容は聞き捨てならなかった。
「えっ?! だってこんなに派手で露出が多いのに? カスミって巨乳なのよ背が低いけど。そしたらルカだけじゃないイサークや仲間内の男達に肌をさらすのよ?!」
私は驚いて頭の天辺から声を上げた。
巨乳のカスミがビキニアーマーなんて着たらトンデモない。私よりも凄いから。魔物やら男達やらで大変な事に。そうよ一緒に戦っているパーティー仲間の男達ですらどんな目で見るか。
「巨乳……そうなのか? それはどうでもいいが。そうすりゃルカは好きなカスミの体を堂々と見る事が出来るだろ。それに毒や攻撃からも守ってくれる優れた防具でもある」
嘘! 何て事を言うの、普段、無表情のくせしてイサーク!
「イサークってもしかしてひどいムッツリなの? そんな事を言うなんて」
「ムッツリか? 別にそんなつもりはないが。男はそんなもんだろ」
「そんなもんって」
ガーン。もしかしてルカもそうだったのかしら。女とは全く考え方が違うのね男って生き物は。私はてっきり好きな女は隠したいと思ったのに。
ん? そうなると。
「ルカは私が好きだったの? だからビキニアーマーを着せたなんて事は」
「馬鹿か。あるわけないだろ」
イサークに一刀両断されてしまった。
「だよね……」
分かっていたけど、ちょっとぐらい夢を見させて欲しかったのに。女心が分かっていないイサークだ。
「あの時、ヴィヨレの装備はパーティーの中で一番貧相なものだった。だから宝箱から出てきたビキニアーマーをルカは渡したんだ。お前は大切な戦力だから」
「!」
大切な戦力。そう言われて私は再び涙が溢れてしまった。分かっていた。だって、魔法使いのカスミに一番世話になっていたのは私だった。
私は洗いざらい思いの丈をイサークに吐き出した。話が長くなったのでイサークは椅子に座って話を聞く羽目になっていた。
表情を表に出さないイサーク。泣き出した時は流石に驚いていたけれど、すっかりいつものイサークになっていた。
無言、ひたすら無言。何だか岩にでも話しかけている気分になり私は拳を作りポカッとイサークの三角筋を叩いた。
「ねぇ?! 聞いてるの?」
「聞いているさ」
「岩がしゃべった!」
「岩?」
私はイサークの声を聞いたら、止まりかけた涙が再び溢れてきた。
イサークは叩いた私の拳を大きな手で包み込んだ。いつも剣を握るその掌はカサついて所々にたこが出来ていた。
私はちり紙を取ってチーンと鼻をかんだ。そして涙を拭って呟く。
「……よく考えたらさ、このビキニアーマーが宝箱から出てきた時、ルカは私に渡すかカスミに渡すかで、迷っていたわよね?」
「そうだったか?」
「そうよ!」
ダンジョンに潜った仲間は途中で散り散りになった。泥棒のキーロも一緒だったから、宝箱を見つけたら鍵を開けて欲しかったのに。キーロは途中ではぐれちゃうし。必要な時に役に立たないんだから。だから一つしかない宝箱の鍵は貴重だったのよ。
一番奥の魔物を倒したら出てきた宝箱の中に、この紫色のビキニアーマーがあった。その宝箱を開けた時、勇者ルカにカスミ、イサーク、私の四人だけだった。もしかして、あの時からルカはカスミに思いを寄せていたのかしら。
「きっと肌の露出をカスミにさせたくなかったのよ。だから私にビキニアーマーを……」
ルカは私とカスミを見比べてから、私に紫の派手派手しいビキニアーマーを差し出したのよ。
そう思うと、余計悔しくなってきた。何て事なの?! 私だってカスミと一つ違いの乙女なのよ。しかも私は処女なのに、こんなビキニアーマーを着る事になるとは思わなかったわよ。
「ビキニアーマーなんて凄く恥ずかしかったのに! それでもルカからの贈り物だから大切に思って身につけたのに……」
カスミが好きなら好きと早く言ってくれたらよかったのよ。そうしたらこんなに恋心を募らせる事はなかったのに。
私は改めてビキニアーマーを身につける恥ずかしさを思い出し、身悶えていたらイサークは首を傾げた。
「俺がルカの立場だったら、そうだなカスミが好きだとして。それならビキニアーマーはカスミに渡すがな」
いつもなら相槌ですら打たない、返事をしないイサークなのに低く冷静な声でぽつりとこぼす。だけどその内容は聞き捨てならなかった。
「えっ?! だってこんなに派手で露出が多いのに? カスミって巨乳なのよ背が低いけど。そしたらルカだけじゃないイサークや仲間内の男達に肌をさらすのよ?!」
私は驚いて頭の天辺から声を上げた。
巨乳のカスミがビキニアーマーなんて着たらトンデモない。私よりも凄いから。魔物やら男達やらで大変な事に。そうよ一緒に戦っているパーティー仲間の男達ですらどんな目で見るか。
「巨乳……そうなのか? それはどうでもいいが。そうすりゃルカは好きなカスミの体を堂々と見る事が出来るだろ。それに毒や攻撃からも守ってくれる優れた防具でもある」
嘘! 何て事を言うの、普段、無表情のくせしてイサーク!
「イサークってもしかしてひどいムッツリなの? そんな事を言うなんて」
「ムッツリか? 別にそんなつもりはないが。男はそんなもんだろ」
「そんなもんって」
ガーン。もしかしてルカもそうだったのかしら。女とは全く考え方が違うのね男って生き物は。私はてっきり好きな女は隠したいと思ったのに。
ん? そうなると。
「ルカは私が好きだったの? だからビキニアーマーを着せたなんて事は」
「馬鹿か。あるわけないだろ」
イサークに一刀両断されてしまった。
「だよね……」
分かっていたけど、ちょっとぐらい夢を見させて欲しかったのに。女心が分かっていないイサークだ。
「あの時、ヴィヨレの装備はパーティーの中で一番貧相なものだった。だから宝箱から出てきたビキニアーマーをルカは渡したんだ。お前は大切な戦力だから」
「!」
大切な戦力。そう言われて私は再び涙が溢れてしまった。分かっていた。だって、魔法使いのカスミに一番世話になっていたのは私だった。
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