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26 差別
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今日もカラリと晴れた空。
屋上の緑を堪能しながら食事をする社員はちらほらいる。皆離れたベンチに座っているので会話は聞こえない。
「少し日差しが気になるけど。やっぱり外はいいわよね。気分転換になるし」
舞子がもぐもぐとサンドを頬張ってからぽつりと呟いた。舞子の寂しそうな様子に私は溜め息をついた。
先週末も愚痴は聞いた。例の通らなかった企画の話だろうか。お昼の時間、和馬がいてもいなくても話を聞いて欲しいと言う事は、午前中に何かあったのだろう。私も、佐藤くんの事があったし。お互い大変だなと思い私は舞子の話を聞く事にした。
「何かあったんでしょ。話を聞くよ」
「ううっ。那波ありがと~」
舞子は身振り手振りで話し始めた。
◇◆◇
舞子の話のは、こうだ。先週私に愚痴をこぼしていた企画が通らなかった話には続きがあった。舞子の企画が通らなかったのは、企画の内容が駄目だったから──ではなかった。むしろ周りの皆は舞子の企画を通すべきだと言っていたのに、企画部の部長は皆の反対を押し切り、ライバルである男性社員の企画を通したのだ。
「何でそうなるの?」
私は慌ててペットボトルのお茶を飲んだ。喉にごはんが詰まりそうだったからだ。
そんな私の背中を少しさすってくれた舞子は、自分がかじったサンドを見つめてポツポツと話した。
「部長のさ……アレな性格のせいなの。話には聞いていて前から知っていたんだけどね。だから腹を立てても仕方ないのだけど。言われたのよ、とうとう部長から面と向かって直接『女だからお前はここまでだ』って」
「ええっ。何それ」
そんな堂々と今の世の中で言えるものだろうか。それは社内にあるハラスメント機関に訴える事が出来ると思う。私はそう言葉を続けようと思ったが、舞子は苦笑いをした。
「この企画が通ればさチームリーダを飛ばして、課長への道が認められるんだって。だから部長の言葉通りであれば『俺は古い人間だから、女の地位はここまでって決めている。これ以上は俺の元では評価する事が出来ない。本当に済まない』だってさ……」
ぽつりと寂しそうに舞子は呟いた。
「そんなひどい事を言うなんて。随分前からって事は、元々企画部の部長はそんな事を言う人だったの?」
私は驚いてお弁当箱を隣に置いて舞子に向き直る。
女だからとか男だからとか線を引かれてはたまったものではない。今は女性だって認められる人はしかるべき役職に就いている。『俺の元では評価する事が出来ない』なんて、そんな自分勝手な事を言う部長が許されるはずがない。
舞子は頷いてポツポツと話し出す。
「線を引くの止めて欲しいよね。これだから年配の男性は、古くさい考えで困るわ。だけど、そういう部長という事は、部内の皆は知っているし多分……他の部署でも知っている人、多いと思うよ。うちの部長はこの会社が出来た当初からいる創始者メンバーだから、社長や副社長も性格は知っていると思う」
舞子は私の背中をポンと叩いてお弁当の続きを食べる様に促す。そんな舞子に促されて私はお弁当を再び手に持った。私はお箸でごはんを掬い食べる。
「そんな人をのさばらせている会社ってどうなのよ」
怒りを咀嚼に変えてごはんとそぼろを食べる。鼻息を荒くしてむしゃむしゃと食べ進める私の姿がおかしかったのか舞子が笑った。
「ありがとう。一緒に怒ってくれて。優しいね那波は。だけど、口の中噛んだりするかもしれないからゆっくり食べて?」
「そんな優しいなんて事はないよ……分かったゆっくり食べる」
何故か舞子になだめられて私はシュンとしてしまう。
「女だからって理由で役職につかせない事は問題あるんだけどさ。その事以外は、本当に……本当に尊敬している上司なのよ。だから余計困るんだよね」
舞子が言うには、色々部長にはお世話になったそうで入社してからずっと沢山事を教えてもらったのだとか。企画の事だけじゃなくて、各部署を練り歩いた部長だからこそ様々な知識が満載なのだとか。
「だからってそんな差別を大声で言っていい事じゃないでしょ」
「部長はかなり年配だし。後少ししたら年齢的にも退職ね。そういう時代の人だと仕方がないんだろうね。考え方を変えたくても、出来ないんだってさ」
更に、舞子の部長はこう続けたそうだ。
「こんな俺だから利用するだけ利用して、これ以上価値がないと思えば羽ばたいていって欲しい。他の部署に行くなら推薦状を書くから」
その部長の言葉を、舞子がたっぷり真似をしながら話した。
「そ、そんな……」
(そんな事、いいはずがない! 推薦状なんかで妥協出来るものか!)
私は舞子にかける言葉を飲み込んでしまった。代わりに心の中で精一杯叫んだ。
呆然とする私の姿を見て舞子は、何故か清々しい顔をした。
「那波に聞いてもらってスッキリした」
「いや。全然スッキリしないでしょ。私はひどくモヤモヤしてきたよ」
私は肩を落として力なく呟く。どんな考え方になったらスッキリするのだろう全く分からない。
「だよね。ごめん……」
舞子は肩をすくめて最後のサンドのかけらを口に放り込んだ。それからもぐもぐと咀嚼して飲み込むと真っ青の空を見上げて瞳を細めた。
「那波がモヤモヤする様に『そういう考えはおかしいよね?』って思う自分と、それでも部長と仕事をするのが楽しくて『まぁ別にこのままでいいかも』って思う自分がいて。後者の気持ちが強くて、今まで踏ん切りがつかなかったっていうのが正直な気持ちだったの」
「舞子……」
「だけど冷静になって考えて……いや、よく考えなくてもだけど。うちの部長さ、分かりやすいよね? 『お前はここまで』って言われたら、それ以上努力したって今の部長の下では何の芽も出ないわけだし。無駄なわけだし。うん。大丈夫」
「大丈夫って?」
「那波に聞いてもらえて、一緒に怒ってもらって改めて思ったの。やっぱり『居心地良くても私はこのままでいいとは思えない。おかしいものはおかしい。私自身もっと上を目指したい』って。だから、思い切って部署替えの申請を出そうと、推薦状を書いて貰おうと思う。だってさ──」
人の考え方は、他人が変える事は出来ないし。
舞子はそうぽつりと呟いた。そう呟いた瞬間、スーッと流れてきた綿菓子みたいな雲が太陽を隠した。
舞子の表情が見えなくなっけど、少し寂しそうでそれでも明るく笑っていたと思う。真逆の感情が入り乱れた笑い方だから、沢山の事を諦めて悔しくて……力尽きたのだと、この時は思った。
(そういえば、こんな舞子の笑い方と同じ笑い方をしていた人を見た事がある。そうだ、中村さんだ)
同じ部署の先輩で、退職した中村さんも同じ様な笑い方をしていた。評価が上がらず疲れ果てて中村さん。舞子も含めて、皆諦めるしかなかったのだろうか。雲の影の下、私は残りが少なくなったお弁当箱を見つめてぽつりと呟いた。
「私だったら……自分が部署を異動するのは嫌だけどな。だから身を引くなんて考えられないって言うか」
変えるも変えられないも、おかしいのは舞子じゃない。企画部の部長だ。今の時代にそれはおかしいと、それを認めさせるべきで変えさせるべきだ──と、思ってしまう。だから自分が部署を去る事になるなんておかしい……
そこまで考えて、私は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
(もしかして中村さんの業務ランクが上がらなかったのは、女性だったから? いやでも、そんなうちの二課はそんな事あるはずない)
色んなパズルのピースを組み合わせる様に、自分の置かれている現状や中村さんに起こった当時の事を思い出す。
そんなはずはない。と、色々な出来事を思い出し、あの時はおかしくなかったか? じゃあ、あの時は? と、頭の中で検証を始める。
冷や汗なのか、夏の暑さの汗なのか分からない雫が頬を伝った。
そんな私を現実に引き戻したのは舞子の声だった。
「ふふふ。強気の那波ならそう言うと思った。でもさ、そんなに身を引くなんて考え方でもないんだけどね」
舞子は組んだ細い足をぶらぶらさせながらカフェオレを一口飲んだ。
(身を引くとは違うって、どういう事だろう)
私は舞子の言っている意味が今ひとつ理解出来なかった。
「そ、う……なんだ。とにかく考え方の整理がついたならさ、週末みたいな暴飲しなくて済みそうだね」
私は理解出来ない思考を停止させ、パッと舞子に笑いかける。
太陽を隠していた雲がゆっくりと風に流れて、再び明るくなる。
明るくなると同時に舞子の満面の笑顔が見えた。
さすが同期の中で一位、二位を争う美人だ。何もかも吹っ切れた笑顔は女の私でも見惚れるものだった。
「もう~そんな事言わないで。お酒は好きで飲んでるの。また時間が出来たら週末飲もうね。私の話は以上! ありがとう那波……聞いてくれて」
私の肩にポンと手を置いた優しくて美しい友人、舞子。美しいだけじゃない。色んな悩みを飲み超える素晴らしい女性だ。
「うん……」
私は舞子の笑顔につられて微笑むと、舞子は急に私の顔に自分の顔を近づけた。
「今度はさ。私も那波の話を聞いちゃうから」
「え?」
「ほらあるでしょ? 例えば、早坂への告白とか、早坂の反応とか、早坂のプライベートとか。ほらほらほら、どんどん話して。早坂ってどんな感じなの? やっぱり凄くスマートに何事も出来ちゃうの? それとも何か可愛いところとかあるのかなぁ~? あれだけモテている男を落とした那波はさすがだよ。何でも聞くよ。もちろん他人には言ったりしないから! さぁさぁさぁ」
急に鼻息が荒くなり、ミーハーな雰囲気になった舞子に苦笑いになるしかなかった。
屋上の緑を堪能しながら食事をする社員はちらほらいる。皆離れたベンチに座っているので会話は聞こえない。
「少し日差しが気になるけど。やっぱり外はいいわよね。気分転換になるし」
舞子がもぐもぐとサンドを頬張ってからぽつりと呟いた。舞子の寂しそうな様子に私は溜め息をついた。
先週末も愚痴は聞いた。例の通らなかった企画の話だろうか。お昼の時間、和馬がいてもいなくても話を聞いて欲しいと言う事は、午前中に何かあったのだろう。私も、佐藤くんの事があったし。お互い大変だなと思い私は舞子の話を聞く事にした。
「何かあったんでしょ。話を聞くよ」
「ううっ。那波ありがと~」
舞子は身振り手振りで話し始めた。
◇◆◇
舞子の話のは、こうだ。先週私に愚痴をこぼしていた企画が通らなかった話には続きがあった。舞子の企画が通らなかったのは、企画の内容が駄目だったから──ではなかった。むしろ周りの皆は舞子の企画を通すべきだと言っていたのに、企画部の部長は皆の反対を押し切り、ライバルである男性社員の企画を通したのだ。
「何でそうなるの?」
私は慌ててペットボトルのお茶を飲んだ。喉にごはんが詰まりそうだったからだ。
そんな私の背中を少しさすってくれた舞子は、自分がかじったサンドを見つめてポツポツと話した。
「部長のさ……アレな性格のせいなの。話には聞いていて前から知っていたんだけどね。だから腹を立てても仕方ないのだけど。言われたのよ、とうとう部長から面と向かって直接『女だからお前はここまでだ』って」
「ええっ。何それ」
そんな堂々と今の世の中で言えるものだろうか。それは社内にあるハラスメント機関に訴える事が出来ると思う。私はそう言葉を続けようと思ったが、舞子は苦笑いをした。
「この企画が通ればさチームリーダを飛ばして、課長への道が認められるんだって。だから部長の言葉通りであれば『俺は古い人間だから、女の地位はここまでって決めている。これ以上は俺の元では評価する事が出来ない。本当に済まない』だってさ……」
ぽつりと寂しそうに舞子は呟いた。
「そんなひどい事を言うなんて。随分前からって事は、元々企画部の部長はそんな事を言う人だったの?」
私は驚いてお弁当箱を隣に置いて舞子に向き直る。
女だからとか男だからとか線を引かれてはたまったものではない。今は女性だって認められる人はしかるべき役職に就いている。『俺の元では評価する事が出来ない』なんて、そんな自分勝手な事を言う部長が許されるはずがない。
舞子は頷いてポツポツと話し出す。
「線を引くの止めて欲しいよね。これだから年配の男性は、古くさい考えで困るわ。だけど、そういう部長という事は、部内の皆は知っているし多分……他の部署でも知っている人、多いと思うよ。うちの部長はこの会社が出来た当初からいる創始者メンバーだから、社長や副社長も性格は知っていると思う」
舞子は私の背中をポンと叩いてお弁当の続きを食べる様に促す。そんな舞子に促されて私はお弁当を再び手に持った。私はお箸でごはんを掬い食べる。
「そんな人をのさばらせている会社ってどうなのよ」
怒りを咀嚼に変えてごはんとそぼろを食べる。鼻息を荒くしてむしゃむしゃと食べ進める私の姿がおかしかったのか舞子が笑った。
「ありがとう。一緒に怒ってくれて。優しいね那波は。だけど、口の中噛んだりするかもしれないからゆっくり食べて?」
「そんな優しいなんて事はないよ……分かったゆっくり食べる」
何故か舞子になだめられて私はシュンとしてしまう。
「女だからって理由で役職につかせない事は問題あるんだけどさ。その事以外は、本当に……本当に尊敬している上司なのよ。だから余計困るんだよね」
舞子が言うには、色々部長にはお世話になったそうで入社してからずっと沢山事を教えてもらったのだとか。企画の事だけじゃなくて、各部署を練り歩いた部長だからこそ様々な知識が満載なのだとか。
「だからってそんな差別を大声で言っていい事じゃないでしょ」
「部長はかなり年配だし。後少ししたら年齢的にも退職ね。そういう時代の人だと仕方がないんだろうね。考え方を変えたくても、出来ないんだってさ」
更に、舞子の部長はこう続けたそうだ。
「こんな俺だから利用するだけ利用して、これ以上価値がないと思えば羽ばたいていって欲しい。他の部署に行くなら推薦状を書くから」
その部長の言葉を、舞子がたっぷり真似をしながら話した。
「そ、そんな……」
(そんな事、いいはずがない! 推薦状なんかで妥協出来るものか!)
私は舞子にかける言葉を飲み込んでしまった。代わりに心の中で精一杯叫んだ。
呆然とする私の姿を見て舞子は、何故か清々しい顔をした。
「那波に聞いてもらってスッキリした」
「いや。全然スッキリしないでしょ。私はひどくモヤモヤしてきたよ」
私は肩を落として力なく呟く。どんな考え方になったらスッキリするのだろう全く分からない。
「だよね。ごめん……」
舞子は肩をすくめて最後のサンドのかけらを口に放り込んだ。それからもぐもぐと咀嚼して飲み込むと真っ青の空を見上げて瞳を細めた。
「那波がモヤモヤする様に『そういう考えはおかしいよね?』って思う自分と、それでも部長と仕事をするのが楽しくて『まぁ別にこのままでいいかも』って思う自分がいて。後者の気持ちが強くて、今まで踏ん切りがつかなかったっていうのが正直な気持ちだったの」
「舞子……」
「だけど冷静になって考えて……いや、よく考えなくてもだけど。うちの部長さ、分かりやすいよね? 『お前はここまで』って言われたら、それ以上努力したって今の部長の下では何の芽も出ないわけだし。無駄なわけだし。うん。大丈夫」
「大丈夫って?」
「那波に聞いてもらえて、一緒に怒ってもらって改めて思ったの。やっぱり『居心地良くても私はこのままでいいとは思えない。おかしいものはおかしい。私自身もっと上を目指したい』って。だから、思い切って部署替えの申請を出そうと、推薦状を書いて貰おうと思う。だってさ──」
人の考え方は、他人が変える事は出来ないし。
舞子はそうぽつりと呟いた。そう呟いた瞬間、スーッと流れてきた綿菓子みたいな雲が太陽を隠した。
舞子の表情が見えなくなっけど、少し寂しそうでそれでも明るく笑っていたと思う。真逆の感情が入り乱れた笑い方だから、沢山の事を諦めて悔しくて……力尽きたのだと、この時は思った。
(そういえば、こんな舞子の笑い方と同じ笑い方をしていた人を見た事がある。そうだ、中村さんだ)
同じ部署の先輩で、退職した中村さんも同じ様な笑い方をしていた。評価が上がらず疲れ果てて中村さん。舞子も含めて、皆諦めるしかなかったのだろうか。雲の影の下、私は残りが少なくなったお弁当箱を見つめてぽつりと呟いた。
「私だったら……自分が部署を異動するのは嫌だけどな。だから身を引くなんて考えられないって言うか」
変えるも変えられないも、おかしいのは舞子じゃない。企画部の部長だ。今の時代にそれはおかしいと、それを認めさせるべきで変えさせるべきだ──と、思ってしまう。だから自分が部署を去る事になるなんておかしい……
そこまで考えて、私は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
(もしかして中村さんの業務ランクが上がらなかったのは、女性だったから? いやでも、そんなうちの二課はそんな事あるはずない)
色んなパズルのピースを組み合わせる様に、自分の置かれている現状や中村さんに起こった当時の事を思い出す。
そんなはずはない。と、色々な出来事を思い出し、あの時はおかしくなかったか? じゃあ、あの時は? と、頭の中で検証を始める。
冷や汗なのか、夏の暑さの汗なのか分からない雫が頬を伝った。
そんな私を現実に引き戻したのは舞子の声だった。
「ふふふ。強気の那波ならそう言うと思った。でもさ、そんなに身を引くなんて考え方でもないんだけどね」
舞子は組んだ細い足をぶらぶらさせながらカフェオレを一口飲んだ。
(身を引くとは違うって、どういう事だろう)
私は舞子の言っている意味が今ひとつ理解出来なかった。
「そ、う……なんだ。とにかく考え方の整理がついたならさ、週末みたいな暴飲しなくて済みそうだね」
私は理解出来ない思考を停止させ、パッと舞子に笑いかける。
太陽を隠していた雲がゆっくりと風に流れて、再び明るくなる。
明るくなると同時に舞子の満面の笑顔が見えた。
さすが同期の中で一位、二位を争う美人だ。何もかも吹っ切れた笑顔は女の私でも見惚れるものだった。
「もう~そんな事言わないで。お酒は好きで飲んでるの。また時間が出来たら週末飲もうね。私の話は以上! ありがとう那波……聞いてくれて」
私の肩にポンと手を置いた優しくて美しい友人、舞子。美しいだけじゃない。色んな悩みを飲み超える素晴らしい女性だ。
「うん……」
私は舞子の笑顔につられて微笑むと、舞子は急に私の顔に自分の顔を近づけた。
「今度はさ。私も那波の話を聞いちゃうから」
「え?」
「ほらあるでしょ? 例えば、早坂への告白とか、早坂の反応とか、早坂のプライベートとか。ほらほらほら、どんどん話して。早坂ってどんな感じなの? やっぱり凄くスマートに何事も出来ちゃうの? それとも何か可愛いところとかあるのかなぁ~? あれだけモテている男を落とした那波はさすがだよ。何でも聞くよ。もちろん他人には言ったりしないから! さぁさぁさぁ」
急に鼻息が荒くなり、ミーハーな雰囲気になった舞子に苦笑いになるしかなかった。
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