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Case:天野 11
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私はディルドバイブを手渡され、湯船の中に沈める。動かす事は止めているのでお湯の中パッと見たら男性器がそのまま取り外されている様な感じだ。
ディルドバイブの先端を自分の方に向けると変な感じがする。取り出されたものを手に持っている自分の姿が滑稽だろう。そんな事を思いながら私は悠司に後ろから抱え込む様に抱かれていた。
「慣らすか。濡れないと痛いだけだしな」
「っ」
おもむろに悠司が私の足をM字に開き膝を立たせた。そして水着のパンツをずらすと秘所を晒して指でなぞった。突然触れられた迎え入れる場所は既にヌルヌルと潤っていた。明らかにお湯とは違う滑りに指を滑らせた悠司が私の耳元で囁いた。
「もうトロトロだな。シャワーしてからまだ時間が経っていないのに。想像したのか? これが入るの」
悠司の声が思った以上に低くて、それだけでゾクリとしてしまう。身体の奥が疼いてくる。悠司はこれと言いながら、私の持っているバイブを撫で自分の陰茎を扱く時の動きをする。
その動きを見ていると、益々興奮してくる。生唾をゴクンと飲み込んだら、悠司にたっぷりと濡れた入り口の体液を指で掬われ、隠れいていたはずの花芯を見つけて塗りつける。
「あっ、ああっ!」
一度悠司にベッドで抱かれたので鈍くなっているかと思ったけどそんな事はなかった。花芯が剝かれ撫でられる度に痺れ快感が身体に溜まっていく。
「ほら、こっちも凄く触って欲しそうだ……」
悠司は三角ブラを湯船の中で指さした。案の定パッドのないブラの中心は、しっかりと立ち上がった乳首が主張をしている。
「だから、こんな風になるから恥ずかしいのに、ああっ!」
やっぱりパッドは外すべきじゃなかった後悔する。しかし悠司はそれを元々狙っていたかの様に、私の花芯を弄っている反対の手でそのしっかりと主張した乳首を上から擦る。
ブラのざらりとした素材が敏感になった乳首に擦りつけられ堪らない。私は背中の悠司に身体を反らせて預ける。
「んっ! あっ、そこっ!」
「凄くいい。首も肩も全部綺麗だ。ああ……ほら、また溢れてきた」
何度も何度も指で足の付け根と乳首を弄られ湯船の中で蜜をこぼす。明らかにお湯と違う泥濘が出来て悠司は私の耳の中に舌を差し込みキスをした。
「ああっ!」
耳は極端に弱いので、しゃぶられたり舐められたりすると直ぐに身体が反応してしまう。
まずい……凄く今ので身体が熱くて。早く弾けてしまいたいのに。そんなちょっとすれば簡単に達しそうな私に、悠司は差し込んだ舌を引っ込めた後こう呟いた。
「涼音。ほら、こんなにふやけてる。今なら痛くないから自分で入れてみろよ」
「!」
自分でこれを入れるなんてとんでもない! こんなにリアルな男性器のバイブを入れるなんて──数分前ならそう思っていただろう。
玩具には少しだけ興味があっただから冷やかさない悠司の誘導する言葉に、大胆になっているのかもしれない。悠司に促されると思わず従ってしまう。
ゴクンと唾を一飲みして、ゆっくりとバイブの先端を自分の入り口に押しつけてみる。お湯の中だけど泥濘んでいるその場所はゆっくりと先端を飲み込んでいく。
「んんっ!」
固い様な柔らかい様なソフトシリコンは絶妙に形を縁取っていて、もはや陰茎とあまり違いがない様にも思う。ゆっくりと進めて奥の方まで自ら飲み込んだ。
「っっ。ぁは、入った……」
「本当だな」
私の呟きに後ろから覗き込んでいた悠司が笑った。
飲み込むなら進むだけだから問題ない。エラの部分とかソフトなカーブになっていて引っかかりも多少ある。それでもこれは偽物だと分かる感触だ。本物だったらそれはそれで困るけど。
「痛みとかないか?」
悠司が後ろから私を抱きしめながらそっと入り込んだバイブの根元を持つ。
「うん。大丈夫痛くない。でも、何か変な感じ」
「変な感じって?」
「うーん。リアルなのにやっぱり偽物っていう感じはする。知らない人みたいな」
「ハハハ! そりゃそうだ。これは人じゃないぜ」
「わ、分かってるわよ! とにかくただ入ってるっていう感じ?」
とにかくこの異物感についてどう伝えていいか分からず私は色々言い方を変えてみる。
「そうだな、今のところ入っているだけだもんな。でもこうやって使うんだぜ?」
悠司はそこで根元にあるソフトシリコン越しのボタンを押す。すると突然中に入ったものが例のぐねぐねした動きを中ではじた。
「あっ! ちょっとこれはっ……!」
モーターの音は元々小さいので聞こえないけれど、ぐねぐねと動こうとする動きを膣内で感じる。特に激しい動きでも強い振動でもないのが妙な感じがする。身体をよじる事はない。
「んーっ。くすぐったい? 思ったよりあんまり気持ちがいいって言うほどでは」
私は比較的冷静に答える事が出来た。動くだけなら前のピンク色のバイブの方が凄かった。奥の方で動くし動くパターンが複雑だったからだ。
「ふーんそっか。ま、そんなに強いバイブにしてないしな。じゃぁこのぐらいの強さなら?」
「えっ? 強さって変えられるの?」
悠司は根元にあるボタンを何回か押す。そう思った瞬間ブーンと強さが増して強く振動を伝えてくる。
「あっ! ちょっ、ちょっと強いかな? で、でもうん。大丈夫……っっ、あっ!」
いや、大丈夫と言ったもののこれはまずいかも。奥の方の当たる部分が振動で結構クル。思わずM字に開いていた足を閉じたくなた時、悠司がバイブの根元を握ったまま前後に動かしはじめた。
「あああっ!」
この動きには驚いて私は大きな声を上げてしまった。喉を反って後ろにいる悠司の肩に自分の後頭部を預ける。
そうかディルドバイブって……そういう事なのね!
悠司はゆっくりとバイブをお湯の中で前後に動かしはじめる。震えるディルドは奥まで届く長さを持っているので私は悶絶するしかない。
「だっ、駄目動かしちゃ、いやぁっ、あっ、あっ、あっ!」
私は動かされる度に腰を揺らしてしまい、気持ちよさから逃れようとした。でも悠司はそれを許してくれない。後ろから片手で身体を抱きしめたまま、ディルドを出し入れする。動かすせいで波が生まれてお湯の表面が揺れる。
「動かしちゃ駄目って──だけどこれはこういう使い方をするんだよ。ほら涼音、握ってみろよ」
悠司が耳元で笑いながら私の耳たぶを口に含む。それすらも快楽に変わって続々と背中を駆け上がろうとする。そんな中、悠司はそれを私に持たせようとする。自ら握って出し入れをしろと言うのだ。
「あっ、やっ、そんなの出来ない! あっああっ……」
まずいわこれは。腰が勝手に動いちゃう。気持ちよくてもっと強くして欲しいって思う。それに角度が微妙に当たるし、当たった部分に振動があってそれで尚更感じてしまう。
「感じる? この他人みたいな男の形をしたものにさ? 涼音はいやらしいなぁ」
悠司に囁かれて私は益々顔を赤くしてしまう。赤いのは顔だけだけじゃない。眼球も熱が籠もっていて瞼を閉じるとチカチカとしだす。決定的に気持ちよくなる為にはもう少し角度が欲しい。私は思わず手を伸ばして、悠司が握っていたそれを貰う。
そして──
「あっ、あっ、あっ……ヤダ、イッちゃうイクっ──っっあっあっ!」
悠司が動かしていた以上に激しく前後に出し入れすると、自分が一番当てて欲しい角度に変えて自分で動かす。
はしたない事にあっという間に私は駆け上がり、身体を硬直させて果ててしまった。
「ハーッ、ハーッ」
私は肩で息をしながらブーンと動くバイブを中で締め上げたまま前後に動かすのを止める。数秒してからようやく私はバイブの動きを止める。
す、凄い。何これ? 私、自分で出し入れして勝手に。
あまりの自分の恥ずかしい行動に、今すぐ湯船の中に沈んでしまいたくなった。絶対悠司に笑われる。そう思って本当に沈んでしまおうと湯船に顔をつけようとした時、後ろからぎゅっと悠司に抱き上げられる。
「なる程。角度が必要だったんだな。それじゃぁもう一回」
「えっ」
そう言うと悠司は再びボタンを押してディルドバイブを動かした。
「まっ待って! ちょっと待って。だってイッたばっかりなのに──あっ!」
「だからもう一度気持ちよくなろうぜ? 今度は俺がこっちを弄ってやるから」
「ひぃあぁ! そこ弄っちゃ駄目!」
私は思わず悲鳴を上げた。悠司は痛いほど尖っている乳首を片手で水着の上から擦ったり押し込んだりする。それだけでも感じやすくて困るのに、同時に私がさっき激しく動かしていた角度でバイブの抽送をはじめる。
「やっ、止め、止めてっ。わっ、私、私っ直ぐイッちゃうからっ!」
少し落ち着いていたとは言え再び突かれると感じやすくなっている。簡単に快楽が身体の中で膨れ上がっていく。中に潜り込んだバイブが容赦なくある角度の部分を突いて堪らなくなる。そこは一番感じやすい場所なのだ。恥ずかしいがお漏らしをしたくなる様な感覚に似ていて、とてもまずい。ゾワゾワと鳥肌が立って私は後ろから回された悠司の腕に自分の腕を絡ませた。そうしないと何処かへ行ってしまいそうな感じになる。預けた背中にカチカチになった悠司の陰茎を感じる。ものすごい熱を持っているのが分かる。
悠司は私の痴態を見て興奮しているのだ。それが分かったらあっという間だった。目の前が霞んで生理的な涙が零れる。
「あっ、あっああっ──ッッッ……」
最後は引きつった様な声になった。私は腰を浮かしてブルブルと震えるとバイブによって二回目の絶頂を迎えてしまった。
どうしよう……これは、癖になるかもっ! そんな事を考えてしまったけど、直ぐに考えを改める事になる。悠司と一緒に果てるなら余韻も楽しめるのだが、まだ達していない彼は再びディルドバイブで私を責めはじめた。
「だ、駄目。だから連続は、駄目よっ! 壊れちゃうっっ!」
敏感になった身体は制限を知らない。女性は何度も達するのは楽しめる事とかもしれないけど、これは……
そんな涙目の私を悠司は後ろから抱きしめながら囁く。
「もう一回だけだからさ。そうしたら……」
そうしたら何になるの?
そう尋ねたかったけどディルドバイブの抽送がはじり私は喘ぐ事しか出来なくなった。
◇◆◇
「ハーッハーッハーッ」
三度目の絶頂は意識が飛ぶかと思った。キーンと周りの音が聞こえなくなって、視野が極端に狭くなった。多分ちょっとした酸欠。イキ過ぎて酸欠する私って……散々湯船中で弄られて精も根も尽き果てそうだった。
「も、もう。む、無理」
ディルドバイブの凄さを思い知った私は逆に怖くなった。どうしよう、これは、一人でかなり慰められるしまずいわよ。
何がまずくて怖いのか。その答えははっきりと分かる。快楽に殊更弱い身体になっているのだ。二人の恋人にすっかり開発されたとしか言えない。人のせいではない。そういう要素が元々あったのかもしれない。
私はすっかり打ち上げられたトドの如く、露天ジェットバスの縁で仰向けになっていた。のぼせたのはお湯のせいじゃない。絶頂に追いやられ続けく、たくたになってしまった。だらりと片方だけ足を湯船に浸けた姿で何度も肩で息をする。
悠司はそんな私の側に来るとワインではなく水を口に含み、私に口づけ流し込んでくれた。何度か繰り返した後、最後優しく舌を絡めて離れていった。
「気分は悪くないか?」
そう言いながら私の頬を撫でて、顔にはりついた髪の毛を丁寧に拭っていく。
「う、うん……大丈夫」
私はようやく息を整えて再び力を抜いて仰向けに寝転んだ。空には満天の星。ずっとバスに浸かっていたけど、基本外なので冷たい空気が優しく肌を撫でた。興奮した身体を急速に休めてくれる気がする。
なのに……私の顔を上から悠司が覗き込むと私の上からゆっくりと覆い被さってきた。
「えっ、なっ、んっ!」
それから唇をゆっくりと合わせてくる。合わさった唇の隙間から肉厚な悠司の舌が潜り込んでくる。ああ……こんなに何度も達したのに、それでも悠司のキスは優しくて好きだ。絡めた舌で追いかけたけどやがて悠司は離れていった──のだが。
悠司が私の股の間に身体を滑り込ませていてゴリゴリと下半身を私に押しつけてくる。そういえば私はバイブで湯船の中で達したけど、悠司は一度も達していない。
私は視線をそのまま悠司の股間に移す。ゼブラ柄のサーフパンツの下にある大きく猛りきったものが縁取られている。
「あ、あの、その」
私はあんなに何度も達したのに、再び受け入れる事が出来るのだろうか? そう思って怖々と悠司を見上げる。
そこには髪の毛から雫を垂らし、ポタポタと雫を落とす悠司がいた。少し垂れ気味の二重とスッと通った鼻筋。シャープな顎のラインと太い首から肩にかけての筋肉。最低限落とされたライトに照らされた顔が色っぽくて私はそれだけで何も言えなくなった。
しかも私を見つめる瞳がギラギラとしていて、何を欲しているのか言葉がなくても分かる。
「悪いな……早いから」
そう言いながらごそごそとサーフパンツを下げると、勢いよく飛び出す陰茎が目に入った。赤黒く脈打つそれはさっきベッドで抱かれた時より一回り大きく感じる。
あっという間に避妊具を装着した悠司は私の湯船に垂れている足と反対側の足を担いでゆっくりと私の中に潜り込んできた。
「──っっ」
私は言葉にならず背中を反らせて胸を突き出す。ゆっくり入ってくる悠司の形がやたらとはっきり分かる。何度もディルドバイブでかき回された膣内なのに、悠司の形を覚えているのかピッタリと吸い付いて彼自身を迎え入れる。
「っ──凄ぇ……! うっ」
悠司も私と同じ感じだろう。ギラギラとした瞳をより輝かせて口角を上げた。ディルドバイブの威力は凄かったけどやっぱり玩具である事を思い知る。
私の反った身体を見つめ悠司は片手でブラを横にずらし片方の乳房を外に出す。ふるん……と揺れて躍り出た乳房に、上半身を倒しながら悠司は頂点に口づける。尖った乳首をゆっくりと吸い上げ口内で舐め回す。
「あっああ……」
私は腰を揺らしてされるがママになる。肩に足を担がれたままだけど、ふやけた身体は随分と柔軟性を持っているのかちっとも痛くない。自ら腰をくねらせてもっともっと……と、悠司にねだった。
「んっ……」
悠司は乳首を口に含んだまま、腰をゆっくりと前後に動かしはじめた。
「あっ、凄い……おっきぃ……ヤダっこんなの、直ぐイッちゃう」
悠司の陰茎はカサの部分がしっかり張り出して、私の内壁を掻き出す様に動く。敏感になった身体は湯船から出た事で少し冷めたと思ったのに、あっという間に内側から熱を持つ。快感はどんどんと腰の辺りに溜まる。
少し激しくされたら最後だ。
私はあっという間に駆け上がってしまう。ゆっくり動いて──と、思う自分もいる。あっという間に駆け上がる感触も悠司自身ならかまわない。だから激しく動いて欲しいのに──と、思う自分もいる。
どっちに転んでも私は悠司に全てをさらけ出し嬌声を上げるのだろう。それでも、それが幸せだと思うなんて。
「あっ……悠司……好き」
小さく喘いだ間に名前と思いを伝えると、悠司の動きが一瞬止まった。
それから、私の中で彼の陰茎がぶわっと再び大きく脈打ったのが分かった。悠司は私の乳房から口を離し、肩に担いだ足を下ろした。それから腰をおもむろに掴む。
「……悪い」
小さく呟いた悠司に「何が?」と聞き返す事は出来なかった。突然、腰を目一杯引くとズンと奥まで突いた。
「カハッ!」
少し鈍痛がしたけど、女の身体はよく出来ているものだ。愛する人を易々と受け入れてしまう。痺れた感覚が再び私の中を渦巻いていく。腰を掴んだままガツガツと悠司は私を突き上げはじめた。
「あっ、あああっ!」
さっき一番感じやすい角度で突いてくるからあっという間に昇りつめていく。
「あっ、すご、凄いっ イッちゃうから。そんなの、イクッ、イッちゃうッッッあっああ!」
馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す事しか出来ない私は下品にも泣きながら呟く。ジワッと身体の奥の熱が細かい粒になって弾けた事を感じた後も、悠司に突かれ続けて私はとうとう頂点から降りられなくなった。
「っっ!!」
揺さぶられ続けながら声にならない声を上げて首を左右に振ったり、悠司の腰を掴む手を掻きむしり握りしめる。爪がかすめて悠司の腕に少し赤い筋をつけてしまったが、そうしないといられなかった。
ヤダ、イッてるのに! イッてるってば! こんなの、怖い、怖い──!!!
「……! ……!」
悠司が私の足の付け根辺りを見つめながら妖艶に微笑んだ。
だけど、その声は聞き取れない。
私は心の中でしか叫べなくなり、息が出来ない事に気がついた。悠司は私と繋がっている部分にあるむき出しになった花芯に指を這わせた。その部分をゆっくりと撫で上げたものだから私は、足のつま先が真っ白になるほど力を入れて痙攣してしまう。
私の痙攣に合わせて悠司が歯を食いしばって瞳を閉じた。そして瞳を開くと、悠司が私の中で脈打ちながら精を放ったのを感じ取った。
悠司も気持ちよかったかな? そう安堵した途端、スッと……意識が遠くなって、一瞬目の前が暗くなった。
◇◆◇
おそらく数秒だけ意識が途切れたのだろう。直ぐに意識を取り戻したら、目の前でボタボタと雨の様に汗を降らせる悠司がいた。
「フーッフーッフーッ……だ、大丈夫か?」
さっきまで聞こえなかった悠司の声が聞こえる。何度も肩で息をしながらようやく最後に言葉を繋げる。
私を心配そうに見つめる悠司。やっぱり意識が飛んでいたのだろう。気がつけば私も肩で何度も息をしていた。
「ハァハァハァ……うん……大丈夫。凄かった……ハァ……」
最後大きな溜息をついて呟いたら、悠司が崩れる様に私の上に身体を預ける。
「ああ……凄く気持ちよかった。涼音はさ、息をつめる癖を直さないとだな。酸欠はよくない」
悠司は私を強く抱きしめて小さく笑った。
「うん……ホントにね」
どうやったらいいのか全く分からないけれども、呼吸方法を何とかしないと本当に酸欠で意識がなくなっちゃうわ。苦笑いをしながら悠司の背中に腕を回した。
「せっかくハメ潮状態だったのになぁ。あの時話しかけてたけど聞こえてなかったんだろ?」
「ハ、ハメ潮???」
そういえば音が聞こえなくなった時、繋がった部分を見ながら何か言っていると思った。
何て事……ハメ潮って悠司が自分の陰茎を出し入れする度に私が鯨の様に潮を吹いていた──そんな状態だったなんて。
「今日こそはお漏らししないって思ったのに!!!」
私が悔しそうに呟くと悠司は笑いながら背中をさすってくれた。
「お漏らしじゃねぇよ潮吹きだろ」
似た様な成分だって何かの読み物で読んだけど。
「凄く可愛かった。俺、今日は最高に幸せだって思った」
「……幸せ……うん。私も」
恥ずかしいさなか、私と同じ事を感じてくれた悠司だった。私は回した腕に改めて力を込める。
「悠司……好きよ」
「ありがとう。涼音、愛してる」
そう言って私の背中に回した腕で強く抱きしめてくれた。少しの間抱き合っていると、ぽつりと悠司が呟いた。
「でもなぁ。こうして、涼音と恋人の時間を堪能して満足したからかもしれないけどさ」
「うん」
「何だかんだ言っても、岡本がいないとなって思ったわ」
「!」
悠司の一つの結論に私は思わず驚いてしまう。
あれほど嫉妬していたけれども一回りすると何か考えがまとまったみたいだ。
「……禁止令だったんじゃないの?」
恐る恐る尋ねてみる。悠司は口を尖らせて呟く。
「禁止にするのにあいつ、岡本って要所要所で俺の思考の邪魔をするんだ。あー、この時岡本がいればなとか。そういや岡本はこんな事言ってたなとか。だからあいつを禁止にするの無理だって悟ったわ」
そう言えば岡本の名前を出そうとしていたのは私よりも悠司だったわね。
「プッ、ふふふ……」
「ハハッ」
私達は笑いながら、再びお互いを抱きしめた。
そして二人ゆっくりとした夜を過ごし、悠司との二人きりの恋人の時間は終わりを告げた。
ディルドバイブの先端を自分の方に向けると変な感じがする。取り出されたものを手に持っている自分の姿が滑稽だろう。そんな事を思いながら私は悠司に後ろから抱え込む様に抱かれていた。
「慣らすか。濡れないと痛いだけだしな」
「っ」
おもむろに悠司が私の足をM字に開き膝を立たせた。そして水着のパンツをずらすと秘所を晒して指でなぞった。突然触れられた迎え入れる場所は既にヌルヌルと潤っていた。明らかにお湯とは違う滑りに指を滑らせた悠司が私の耳元で囁いた。
「もうトロトロだな。シャワーしてからまだ時間が経っていないのに。想像したのか? これが入るの」
悠司の声が思った以上に低くて、それだけでゾクリとしてしまう。身体の奥が疼いてくる。悠司はこれと言いながら、私の持っているバイブを撫で自分の陰茎を扱く時の動きをする。
その動きを見ていると、益々興奮してくる。生唾をゴクンと飲み込んだら、悠司にたっぷりと濡れた入り口の体液を指で掬われ、隠れいていたはずの花芯を見つけて塗りつける。
「あっ、ああっ!」
一度悠司にベッドで抱かれたので鈍くなっているかと思ったけどそんな事はなかった。花芯が剝かれ撫でられる度に痺れ快感が身体に溜まっていく。
「ほら、こっちも凄く触って欲しそうだ……」
悠司は三角ブラを湯船の中で指さした。案の定パッドのないブラの中心は、しっかりと立ち上がった乳首が主張をしている。
「だから、こんな風になるから恥ずかしいのに、ああっ!」
やっぱりパッドは外すべきじゃなかった後悔する。しかし悠司はそれを元々狙っていたかの様に、私の花芯を弄っている反対の手でそのしっかりと主張した乳首を上から擦る。
ブラのざらりとした素材が敏感になった乳首に擦りつけられ堪らない。私は背中の悠司に身体を反らせて預ける。
「んっ! あっ、そこっ!」
「凄くいい。首も肩も全部綺麗だ。ああ……ほら、また溢れてきた」
何度も何度も指で足の付け根と乳首を弄られ湯船の中で蜜をこぼす。明らかにお湯と違う泥濘が出来て悠司は私の耳の中に舌を差し込みキスをした。
「ああっ!」
耳は極端に弱いので、しゃぶられたり舐められたりすると直ぐに身体が反応してしまう。
まずい……凄く今ので身体が熱くて。早く弾けてしまいたいのに。そんなちょっとすれば簡単に達しそうな私に、悠司は差し込んだ舌を引っ込めた後こう呟いた。
「涼音。ほら、こんなにふやけてる。今なら痛くないから自分で入れてみろよ」
「!」
自分でこれを入れるなんてとんでもない! こんなにリアルな男性器のバイブを入れるなんて──数分前ならそう思っていただろう。
玩具には少しだけ興味があっただから冷やかさない悠司の誘導する言葉に、大胆になっているのかもしれない。悠司に促されると思わず従ってしまう。
ゴクンと唾を一飲みして、ゆっくりとバイブの先端を自分の入り口に押しつけてみる。お湯の中だけど泥濘んでいるその場所はゆっくりと先端を飲み込んでいく。
「んんっ!」
固い様な柔らかい様なソフトシリコンは絶妙に形を縁取っていて、もはや陰茎とあまり違いがない様にも思う。ゆっくりと進めて奥の方まで自ら飲み込んだ。
「っっ。ぁは、入った……」
「本当だな」
私の呟きに後ろから覗き込んでいた悠司が笑った。
飲み込むなら進むだけだから問題ない。エラの部分とかソフトなカーブになっていて引っかかりも多少ある。それでもこれは偽物だと分かる感触だ。本物だったらそれはそれで困るけど。
「痛みとかないか?」
悠司が後ろから私を抱きしめながらそっと入り込んだバイブの根元を持つ。
「うん。大丈夫痛くない。でも、何か変な感じ」
「変な感じって?」
「うーん。リアルなのにやっぱり偽物っていう感じはする。知らない人みたいな」
「ハハハ! そりゃそうだ。これは人じゃないぜ」
「わ、分かってるわよ! とにかくただ入ってるっていう感じ?」
とにかくこの異物感についてどう伝えていいか分からず私は色々言い方を変えてみる。
「そうだな、今のところ入っているだけだもんな。でもこうやって使うんだぜ?」
悠司はそこで根元にあるソフトシリコン越しのボタンを押す。すると突然中に入ったものが例のぐねぐねした動きを中ではじた。
「あっ! ちょっとこれはっ……!」
モーターの音は元々小さいので聞こえないけれど、ぐねぐねと動こうとする動きを膣内で感じる。特に激しい動きでも強い振動でもないのが妙な感じがする。身体をよじる事はない。
「んーっ。くすぐったい? 思ったよりあんまり気持ちがいいって言うほどでは」
私は比較的冷静に答える事が出来た。動くだけなら前のピンク色のバイブの方が凄かった。奥の方で動くし動くパターンが複雑だったからだ。
「ふーんそっか。ま、そんなに強いバイブにしてないしな。じゃぁこのぐらいの強さなら?」
「えっ? 強さって変えられるの?」
悠司は根元にあるボタンを何回か押す。そう思った瞬間ブーンと強さが増して強く振動を伝えてくる。
「あっ! ちょっ、ちょっと強いかな? で、でもうん。大丈夫……っっ、あっ!」
いや、大丈夫と言ったもののこれはまずいかも。奥の方の当たる部分が振動で結構クル。思わずM字に開いていた足を閉じたくなた時、悠司がバイブの根元を握ったまま前後に動かしはじめた。
「あああっ!」
この動きには驚いて私は大きな声を上げてしまった。喉を反って後ろにいる悠司の肩に自分の後頭部を預ける。
そうかディルドバイブって……そういう事なのね!
悠司はゆっくりとバイブをお湯の中で前後に動かしはじめる。震えるディルドは奥まで届く長さを持っているので私は悶絶するしかない。
「だっ、駄目動かしちゃ、いやぁっ、あっ、あっ、あっ!」
私は動かされる度に腰を揺らしてしまい、気持ちよさから逃れようとした。でも悠司はそれを許してくれない。後ろから片手で身体を抱きしめたまま、ディルドを出し入れする。動かすせいで波が生まれてお湯の表面が揺れる。
「動かしちゃ駄目って──だけどこれはこういう使い方をするんだよ。ほら涼音、握ってみろよ」
悠司が耳元で笑いながら私の耳たぶを口に含む。それすらも快楽に変わって続々と背中を駆け上がろうとする。そんな中、悠司はそれを私に持たせようとする。自ら握って出し入れをしろと言うのだ。
「あっ、やっ、そんなの出来ない! あっああっ……」
まずいわこれは。腰が勝手に動いちゃう。気持ちよくてもっと強くして欲しいって思う。それに角度が微妙に当たるし、当たった部分に振動があってそれで尚更感じてしまう。
「感じる? この他人みたいな男の形をしたものにさ? 涼音はいやらしいなぁ」
悠司に囁かれて私は益々顔を赤くしてしまう。赤いのは顔だけだけじゃない。眼球も熱が籠もっていて瞼を閉じるとチカチカとしだす。決定的に気持ちよくなる為にはもう少し角度が欲しい。私は思わず手を伸ばして、悠司が握っていたそれを貰う。
そして──
「あっ、あっ、あっ……ヤダ、イッちゃうイクっ──っっあっあっ!」
悠司が動かしていた以上に激しく前後に出し入れすると、自分が一番当てて欲しい角度に変えて自分で動かす。
はしたない事にあっという間に私は駆け上がり、身体を硬直させて果ててしまった。
「ハーッ、ハーッ」
私は肩で息をしながらブーンと動くバイブを中で締め上げたまま前後に動かすのを止める。数秒してからようやく私はバイブの動きを止める。
す、凄い。何これ? 私、自分で出し入れして勝手に。
あまりの自分の恥ずかしい行動に、今すぐ湯船の中に沈んでしまいたくなった。絶対悠司に笑われる。そう思って本当に沈んでしまおうと湯船に顔をつけようとした時、後ろからぎゅっと悠司に抱き上げられる。
「なる程。角度が必要だったんだな。それじゃぁもう一回」
「えっ」
そう言うと悠司は再びボタンを押してディルドバイブを動かした。
「まっ待って! ちょっと待って。だってイッたばっかりなのに──あっ!」
「だからもう一度気持ちよくなろうぜ? 今度は俺がこっちを弄ってやるから」
「ひぃあぁ! そこ弄っちゃ駄目!」
私は思わず悲鳴を上げた。悠司は痛いほど尖っている乳首を片手で水着の上から擦ったり押し込んだりする。それだけでも感じやすくて困るのに、同時に私がさっき激しく動かしていた角度でバイブの抽送をはじめる。
「やっ、止め、止めてっ。わっ、私、私っ直ぐイッちゃうからっ!」
少し落ち着いていたとは言え再び突かれると感じやすくなっている。簡単に快楽が身体の中で膨れ上がっていく。中に潜り込んだバイブが容赦なくある角度の部分を突いて堪らなくなる。そこは一番感じやすい場所なのだ。恥ずかしいがお漏らしをしたくなる様な感覚に似ていて、とてもまずい。ゾワゾワと鳥肌が立って私は後ろから回された悠司の腕に自分の腕を絡ませた。そうしないと何処かへ行ってしまいそうな感じになる。預けた背中にカチカチになった悠司の陰茎を感じる。ものすごい熱を持っているのが分かる。
悠司は私の痴態を見て興奮しているのだ。それが分かったらあっという間だった。目の前が霞んで生理的な涙が零れる。
「あっ、あっああっ──ッッッ……」
最後は引きつった様な声になった。私は腰を浮かしてブルブルと震えるとバイブによって二回目の絶頂を迎えてしまった。
どうしよう……これは、癖になるかもっ! そんな事を考えてしまったけど、直ぐに考えを改める事になる。悠司と一緒に果てるなら余韻も楽しめるのだが、まだ達していない彼は再びディルドバイブで私を責めはじめた。
「だ、駄目。だから連続は、駄目よっ! 壊れちゃうっっ!」
敏感になった身体は制限を知らない。女性は何度も達するのは楽しめる事とかもしれないけど、これは……
そんな涙目の私を悠司は後ろから抱きしめながら囁く。
「もう一回だけだからさ。そうしたら……」
そうしたら何になるの?
そう尋ねたかったけどディルドバイブの抽送がはじり私は喘ぐ事しか出来なくなった。
◇◆◇
「ハーッハーッハーッ」
三度目の絶頂は意識が飛ぶかと思った。キーンと周りの音が聞こえなくなって、視野が極端に狭くなった。多分ちょっとした酸欠。イキ過ぎて酸欠する私って……散々湯船中で弄られて精も根も尽き果てそうだった。
「も、もう。む、無理」
ディルドバイブの凄さを思い知った私は逆に怖くなった。どうしよう、これは、一人でかなり慰められるしまずいわよ。
何がまずくて怖いのか。その答えははっきりと分かる。快楽に殊更弱い身体になっているのだ。二人の恋人にすっかり開発されたとしか言えない。人のせいではない。そういう要素が元々あったのかもしれない。
私はすっかり打ち上げられたトドの如く、露天ジェットバスの縁で仰向けになっていた。のぼせたのはお湯のせいじゃない。絶頂に追いやられ続けく、たくたになってしまった。だらりと片方だけ足を湯船に浸けた姿で何度も肩で息をする。
悠司はそんな私の側に来るとワインではなく水を口に含み、私に口づけ流し込んでくれた。何度か繰り返した後、最後優しく舌を絡めて離れていった。
「気分は悪くないか?」
そう言いながら私の頬を撫でて、顔にはりついた髪の毛を丁寧に拭っていく。
「う、うん……大丈夫」
私はようやく息を整えて再び力を抜いて仰向けに寝転んだ。空には満天の星。ずっとバスに浸かっていたけど、基本外なので冷たい空気が優しく肌を撫でた。興奮した身体を急速に休めてくれる気がする。
なのに……私の顔を上から悠司が覗き込むと私の上からゆっくりと覆い被さってきた。
「えっ、なっ、んっ!」
それから唇をゆっくりと合わせてくる。合わさった唇の隙間から肉厚な悠司の舌が潜り込んでくる。ああ……こんなに何度も達したのに、それでも悠司のキスは優しくて好きだ。絡めた舌で追いかけたけどやがて悠司は離れていった──のだが。
悠司が私の股の間に身体を滑り込ませていてゴリゴリと下半身を私に押しつけてくる。そういえば私はバイブで湯船の中で達したけど、悠司は一度も達していない。
私は視線をそのまま悠司の股間に移す。ゼブラ柄のサーフパンツの下にある大きく猛りきったものが縁取られている。
「あ、あの、その」
私はあんなに何度も達したのに、再び受け入れる事が出来るのだろうか? そう思って怖々と悠司を見上げる。
そこには髪の毛から雫を垂らし、ポタポタと雫を落とす悠司がいた。少し垂れ気味の二重とスッと通った鼻筋。シャープな顎のラインと太い首から肩にかけての筋肉。最低限落とされたライトに照らされた顔が色っぽくて私はそれだけで何も言えなくなった。
しかも私を見つめる瞳がギラギラとしていて、何を欲しているのか言葉がなくても分かる。
「悪いな……早いから」
そう言いながらごそごそとサーフパンツを下げると、勢いよく飛び出す陰茎が目に入った。赤黒く脈打つそれはさっきベッドで抱かれた時より一回り大きく感じる。
あっという間に避妊具を装着した悠司は私の湯船に垂れている足と反対側の足を担いでゆっくりと私の中に潜り込んできた。
「──っっ」
私は言葉にならず背中を反らせて胸を突き出す。ゆっくり入ってくる悠司の形がやたらとはっきり分かる。何度もディルドバイブでかき回された膣内なのに、悠司の形を覚えているのかピッタリと吸い付いて彼自身を迎え入れる。
「っ──凄ぇ……! うっ」
悠司も私と同じ感じだろう。ギラギラとした瞳をより輝かせて口角を上げた。ディルドバイブの威力は凄かったけどやっぱり玩具である事を思い知る。
私の反った身体を見つめ悠司は片手でブラを横にずらし片方の乳房を外に出す。ふるん……と揺れて躍り出た乳房に、上半身を倒しながら悠司は頂点に口づける。尖った乳首をゆっくりと吸い上げ口内で舐め回す。
「あっああ……」
私は腰を揺らしてされるがママになる。肩に足を担がれたままだけど、ふやけた身体は随分と柔軟性を持っているのかちっとも痛くない。自ら腰をくねらせてもっともっと……と、悠司にねだった。
「んっ……」
悠司は乳首を口に含んだまま、腰をゆっくりと前後に動かしはじめた。
「あっ、凄い……おっきぃ……ヤダっこんなの、直ぐイッちゃう」
悠司の陰茎はカサの部分がしっかり張り出して、私の内壁を掻き出す様に動く。敏感になった身体は湯船から出た事で少し冷めたと思ったのに、あっという間に内側から熱を持つ。快感はどんどんと腰の辺りに溜まる。
少し激しくされたら最後だ。
私はあっという間に駆け上がってしまう。ゆっくり動いて──と、思う自分もいる。あっという間に駆け上がる感触も悠司自身ならかまわない。だから激しく動いて欲しいのに──と、思う自分もいる。
どっちに転んでも私は悠司に全てをさらけ出し嬌声を上げるのだろう。それでも、それが幸せだと思うなんて。
「あっ……悠司……好き」
小さく喘いだ間に名前と思いを伝えると、悠司の動きが一瞬止まった。
それから、私の中で彼の陰茎がぶわっと再び大きく脈打ったのが分かった。悠司は私の乳房から口を離し、肩に担いだ足を下ろした。それから腰をおもむろに掴む。
「……悪い」
小さく呟いた悠司に「何が?」と聞き返す事は出来なかった。突然、腰を目一杯引くとズンと奥まで突いた。
「カハッ!」
少し鈍痛がしたけど、女の身体はよく出来ているものだ。愛する人を易々と受け入れてしまう。痺れた感覚が再び私の中を渦巻いていく。腰を掴んだままガツガツと悠司は私を突き上げはじめた。
「あっ、あああっ!」
さっき一番感じやすい角度で突いてくるからあっという間に昇りつめていく。
「あっ、すご、凄いっ イッちゃうから。そんなの、イクッ、イッちゃうッッッあっああ!」
馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す事しか出来ない私は下品にも泣きながら呟く。ジワッと身体の奥の熱が細かい粒になって弾けた事を感じた後も、悠司に突かれ続けて私はとうとう頂点から降りられなくなった。
「っっ!!」
揺さぶられ続けながら声にならない声を上げて首を左右に振ったり、悠司の腰を掴む手を掻きむしり握りしめる。爪がかすめて悠司の腕に少し赤い筋をつけてしまったが、そうしないといられなかった。
ヤダ、イッてるのに! イッてるってば! こんなの、怖い、怖い──!!!
「……! ……!」
悠司が私の足の付け根辺りを見つめながら妖艶に微笑んだ。
だけど、その声は聞き取れない。
私は心の中でしか叫べなくなり、息が出来ない事に気がついた。悠司は私と繋がっている部分にあるむき出しになった花芯に指を這わせた。その部分をゆっくりと撫で上げたものだから私は、足のつま先が真っ白になるほど力を入れて痙攣してしまう。
私の痙攣に合わせて悠司が歯を食いしばって瞳を閉じた。そして瞳を開くと、悠司が私の中で脈打ちながら精を放ったのを感じ取った。
悠司も気持ちよかったかな? そう安堵した途端、スッと……意識が遠くなって、一瞬目の前が暗くなった。
◇◆◇
おそらく数秒だけ意識が途切れたのだろう。直ぐに意識を取り戻したら、目の前でボタボタと雨の様に汗を降らせる悠司がいた。
「フーッフーッフーッ……だ、大丈夫か?」
さっきまで聞こえなかった悠司の声が聞こえる。何度も肩で息をしながらようやく最後に言葉を繋げる。
私を心配そうに見つめる悠司。やっぱり意識が飛んでいたのだろう。気がつけば私も肩で何度も息をしていた。
「ハァハァハァ……うん……大丈夫。凄かった……ハァ……」
最後大きな溜息をついて呟いたら、悠司が崩れる様に私の上に身体を預ける。
「ああ……凄く気持ちよかった。涼音はさ、息をつめる癖を直さないとだな。酸欠はよくない」
悠司は私を強く抱きしめて小さく笑った。
「うん……ホントにね」
どうやったらいいのか全く分からないけれども、呼吸方法を何とかしないと本当に酸欠で意識がなくなっちゃうわ。苦笑いをしながら悠司の背中に腕を回した。
「せっかくハメ潮状態だったのになぁ。あの時話しかけてたけど聞こえてなかったんだろ?」
「ハ、ハメ潮???」
そういえば音が聞こえなくなった時、繋がった部分を見ながら何か言っていると思った。
何て事……ハメ潮って悠司が自分の陰茎を出し入れする度に私が鯨の様に潮を吹いていた──そんな状態だったなんて。
「今日こそはお漏らししないって思ったのに!!!」
私が悔しそうに呟くと悠司は笑いながら背中をさすってくれた。
「お漏らしじゃねぇよ潮吹きだろ」
似た様な成分だって何かの読み物で読んだけど。
「凄く可愛かった。俺、今日は最高に幸せだって思った」
「……幸せ……うん。私も」
恥ずかしいさなか、私と同じ事を感じてくれた悠司だった。私は回した腕に改めて力を込める。
「悠司……好きよ」
「ありがとう。涼音、愛してる」
そう言って私の背中に回した腕で強く抱きしめてくれた。少しの間抱き合っていると、ぽつりと悠司が呟いた。
「でもなぁ。こうして、涼音と恋人の時間を堪能して満足したからかもしれないけどさ」
「うん」
「何だかんだ言っても、岡本がいないとなって思ったわ」
「!」
悠司の一つの結論に私は思わず驚いてしまう。
あれほど嫉妬していたけれども一回りすると何か考えがまとまったみたいだ。
「……禁止令だったんじゃないの?」
恐る恐る尋ねてみる。悠司は口を尖らせて呟く。
「禁止にするのにあいつ、岡本って要所要所で俺の思考の邪魔をするんだ。あー、この時岡本がいればなとか。そういや岡本はこんな事言ってたなとか。だからあいつを禁止にするの無理だって悟ったわ」
そう言えば岡本の名前を出そうとしていたのは私よりも悠司だったわね。
「プッ、ふふふ……」
「ハハッ」
私達は笑いながら、再びお互いを抱きしめた。
そして二人ゆっくりとした夜を過ごし、悠司との二人きりの恋人の時間は終わりを告げた。
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