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Case:天野 4
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突然目の前でもじもじし始めた三十代の男女に、高校生の陽菜さんが目を丸める。
当然付き合っているのに今更じゃないのか──と思っているのだろう。少し引き気味だった。
「な、何なのよーその反応。三十代の男女が付き合って数ヶ月って一番盛り上がる時期だよね? 名前で呼び合うの事を指摘されたぐらいで照れるって。涼音さんは凄く可愛いけどさーお兄ちゃんはキモーい」
そう言いながら陽菜さんはピザの二口目をパクッと頬張った。そして、もぐもぐとリスみたいに口を動かす。
その陽菜さんの言葉にハッとなった天野は、自分の分のピザをお皿に取る。それからペッパーソースを手にして結構な回数を自分のピザに振った。
「キモいって。少し照れただけだろ! そうじゃなくても、どうして俺が照れたらキモいんだよ!」
心外だと天野が文句を言い出す。
「もう、ペッパーソースかけすぎだし! そんなにかけなくても美味しいよ? だってーお兄ちゃんって、今まで彼女なんて取っ替え引っ替えだったじゃなーい。だから、そんな事で照れるなんて思わないでしょー」
二口目もよく咀嚼して飲み込んだ陽菜さんが、天野のペッパーソースを取り上げた。
「そ、そうか。って、俺の女性遍歴を地味に倉田の前で晒すな! す、涼音っていう名前を言わないのは、会社で付き合っている事を公にしていないからだ」
気が動転していたのか天野は溜め息をついてから、ペッパーソースをかけたピザを口にした。それから小さく辛いと呟いていた。
「えー何でー? 社内恋愛禁止の会社だっけ?」
次々と天野の答えに質問を返す陽菜さんだ。
大きなくりくりとした瞳を丸めて首を傾げる。でも手にはピザを持ったままだ。今度は大きくかじりついた。リスのごとくもぐもぐと咀嚼している。
天野はミネラルウォーターを飲みつつ辛さに首を振った。陽菜さんを見つめながら『別に社内恋愛禁止はしていないけど』と呟いて話し始めた。
「……色々面倒くさい事に巻き込まれるからな。だから隠してるのー」
陽菜さんの口調を真似て天野が短く説明する。
それからピザを折り曲げて大きな一口でパクッと食べた。豪快な食べ方に「おお」と周りのお客さんも目を丸めていたのが分かった。
何処へ行っても目立つ天野。格好いいから、素敵だから、それだけじゃない何かを持っていると思う。華があるのだろう。皆の視線が自然と集まる。今だってそうだ。陽菜さんは家族だから天野のそういう特性をよく知っているのだろう。
天野の発言を聞いた後、ずっと咀嚼をしてた陽菜さんはひどく真剣な顔をしていた。そしてようやく飲み込んだ後、うんうんと小さく何度も頷いた。
「そうだよねー。だってあれほど女性の敵! ってぐらい、女性を取っ替え引っ替えだったんだからさー隠しておかないと、お兄ちゃんより涼音さんに被害が及びそうだもんねー」
「だからそれを言うか? お前なっ……グッ!」
ピザが盛大に詰まったのか、胸の辺りをドンドンと叩く天野だ。
私が慌ててミネラルウォーターを注ぎグラスを天野に渡す。天野はごくごくと飲み干す。
「天野、大丈夫? 陽菜さん。きっと天野は私の事も考えて、会社で秘密にしていてくれると思うの。ほら天野は人気者だから、私が仕事がやりにくくなったらって……気を遣ってくれているの」
私は何となくな理由をツラツラと陽菜さんに返す。
もちろん天野の優しい、人を気遣う性格を考えての返答だ。すると私の片手を取ってぎゅっと陽菜さんが両手で握りしめる。
「涼音さんって優しいー。だけど、お兄ちゃんの歴代の付き合い方って、本当に尋常じゃないんです。お兄ちゃんの彼女さんと普通に会話したいのに。大抵言葉の通じない、外国の女性が多くて。さすがにネイティブに太刀打ち出来る英語力は、今の私ではないしー」
「言葉の通じないって……そ、そういえばそうね」
慰安旅行で初めて抱かれた時の話を思い出した。
確か、岡本が天野を街で見かけたけど、白人女性に声をかけられていたとか。しかも、直ぐにホテルへ直行したとか……
天野って、天野って! そんな事が、未成年の陽菜さんにバレているなんて。私は思わず天野を見ながら額に怒りマークを浮かべてしまう。
すると天野が水を飲んで一息つき、姿勢を正す。それから慌てる事なくゆっくりと首を左右に振って否定した。
「そういう付き合い方はもう今後しないんだ俺は……今は、真剣なんだ」
焦らないどっしりとしたその態度が、本当に真剣だという事が伝わってくる。
そんな風に言われると凄く嬉しい。嘘じゃない事は私自身が理解している。だけど、陽菜さんには通じなかったみたいだ。
「えーホントー? あのお兄ちゃんなのにー」
「そうそう。あのお兄ちゃんが超ひたむきなの。恋しているの」
そう言いながらもう一切れ新しいピザに手を伸ばした。
「だったら! もっと早くに涼音さんを紹介して欲しかったのにー」
ぷぅと可愛くふくれっ面をする陽菜さんだ。
「長続きする恋人っていうのは、俺も初めての事だから。週末はいつも倉田と過ごしていて。高校生っつても陽菜だって分かるだろ? それだけ夢中で楽しいんだ。だけど、今までの俺も俺だから、なかなか陽菜に言えなかったのーごめんなさいー」
再び天野は陽菜さんの口調を真似て話し始める。どうやら調子が戻ってきた様だ。
しかし、陽菜さんは天野が「週末はいつも」という言葉を発した時にピクリと動いた。
それから、口を一度開いて何か話し出そうとしたが、私をチラリと見て口を閉じた。ものすごく言いにくそうな困った顔になっていた。
ん? 何だろう。何かを言いかけて止めた?
私は思わず首を小さく傾げた。すると、私の様子を見てから陽菜さんは瞳を伏せる。コホンと咳払いをし、空になった自分のお皿をぎゅっと握りしめ小さく呟いた。
「私だって。お兄ちゃんの彼女が、涼音さんなのは凄く嬉しいけど。何だか嘘みたい……」
珍しく語尾を伸ばさない真剣な話し方だった。
それに気づいているのかいないのか天野は、空になった陽菜さんのお皿を自分の方に持ち上げながら不満そうに口を尖らせた。
「はぁ? 何で嘘みたいなんだよ」
天野のそんな口調を聞いて、陽菜さんも口を尖らせた。
「……だってお兄ちゃんチャラいのに。真剣になったからって、こんなに素敵で美人でスタイル抜群で。それだけじゃなくて、仕事が出来そうな……ううん、きっと仕事が出来る涼音さん、女性が社内にいたからって。そんな易々と彼女になってくれるはずないって……あっ、痛い!」
突然軽めの天野の手刀が、ポコンと小さく音を立てて陽菜さんの頭の上に落ちた。もちろん本気で叩いたわけではない。
「倉田の存在を疑う様な事を言うな。怒るぞ」
言われてみれば、陽菜さんはハイテンションでずっとしゃべり通しだったが、今の言葉は私を本当の彼女と思っていない様な口調だった。
もしかして私は、陽菜さんに認められてないのかな。素敵だと言ってくれたから、嬉しくて舞い上がって恥ずかしい。
むしろ天野が素敵すぎるから、優しいから。彼の事をよく知っている陽菜さんだから、私が不釣り合いだと思ったのかも。何となくそんな事を考えてしまい、私は陽菜さんの気持ちを探ろうとじっと見つめる。
すると、天野に言われた言葉に陽菜さんは慌てて、ガタンと音を立て椅子から立ち上がる。
「違うって! そんなんじゃないよ。涼音さんを疑っているんじゃなくて、むしろお兄ちゃんが……っ!」
そう言って天野に言いかけて、私の方へ振り向くと再び口を閉じてしまった。それからゴクンと息を飲み込んでゆっくりと椅子に座り直す。
「ごめんなさい。変な事言って。私、涼音さんみたいなお姉さんが出来て凄く嬉しくて。だってお兄ちゃんの彼女でこんなに素敵な人は本当に初めてだから、夢だったらどうしよう……って思って」
陽菜さんはマッシュボブを揺らして小さくなった。
私は頭を下げて謝る一際小さくなった陽菜さんの手を、そっと上から握りしめた。体の小さな陽菜さんだ。私の手よりずっと可愛くて小さい。
「私も陽菜さんに会えて嬉しいわ。私ね、会社ではおばさんだから。素敵だなんて言って貰えないのよ。だから凄く嬉しいわ」
私が微笑んで陽菜さんの顔を覗き込むとホッとした顔をしていた。
「そんな事ない。涼音さんは素敵ですっ! あの、本当にごめんなさい……変な事を言って」
「ううん。気にしていないわよ」
断言してくれた陽菜さんだった。私は小さく首を振って微笑んだ。
高校生に気を利かせて貰うなんてね。私こそ駄目ね。
私はそんな思いで、天野に振り向き微笑んだ。
そうしたら天野がホッと溜め息をついて、新しく陽菜さんのお皿にピザをのせて手渡す。
「……バーカ。夢なわけあるかよ。倉田が恋人なのが夢だったら、俺が困るわ」
少し乱暴に答えるけど、優しく天野は微笑んだ。
その顔を見て眉を垂らす陽菜さんだった。
やはり困った様な顔をしている。
だけど「うん」と一つ頷くと、何かを決心した顔つきになり真っ直ぐ天野を見つめた。
「ごめんねお兄ちゃん。だってお兄ちゃんが今までチャラチャラしすぎだからー」
「グッ……チャラチャラしすぎって……だから、陽菜は一言多いんだよ! ほら次はパスタが来るぞ」
天野チャラい説から離れない陽菜さんに、お兄さんの天野は肩を落とすしかなかった。
最後の陽菜さんの困った顔が私は気になったけど、悟られない様に食事を進めていった。
当然付き合っているのに今更じゃないのか──と思っているのだろう。少し引き気味だった。
「な、何なのよーその反応。三十代の男女が付き合って数ヶ月って一番盛り上がる時期だよね? 名前で呼び合うの事を指摘されたぐらいで照れるって。涼音さんは凄く可愛いけどさーお兄ちゃんはキモーい」
そう言いながら陽菜さんはピザの二口目をパクッと頬張った。そして、もぐもぐとリスみたいに口を動かす。
その陽菜さんの言葉にハッとなった天野は、自分の分のピザをお皿に取る。それからペッパーソースを手にして結構な回数を自分のピザに振った。
「キモいって。少し照れただけだろ! そうじゃなくても、どうして俺が照れたらキモいんだよ!」
心外だと天野が文句を言い出す。
「もう、ペッパーソースかけすぎだし! そんなにかけなくても美味しいよ? だってーお兄ちゃんって、今まで彼女なんて取っ替え引っ替えだったじゃなーい。だから、そんな事で照れるなんて思わないでしょー」
二口目もよく咀嚼して飲み込んだ陽菜さんが、天野のペッパーソースを取り上げた。
「そ、そうか。って、俺の女性遍歴を地味に倉田の前で晒すな! す、涼音っていう名前を言わないのは、会社で付き合っている事を公にしていないからだ」
気が動転していたのか天野は溜め息をついてから、ペッパーソースをかけたピザを口にした。それから小さく辛いと呟いていた。
「えー何でー? 社内恋愛禁止の会社だっけ?」
次々と天野の答えに質問を返す陽菜さんだ。
大きなくりくりとした瞳を丸めて首を傾げる。でも手にはピザを持ったままだ。今度は大きくかじりついた。リスのごとくもぐもぐと咀嚼している。
天野はミネラルウォーターを飲みつつ辛さに首を振った。陽菜さんを見つめながら『別に社内恋愛禁止はしていないけど』と呟いて話し始めた。
「……色々面倒くさい事に巻き込まれるからな。だから隠してるのー」
陽菜さんの口調を真似て天野が短く説明する。
それからピザを折り曲げて大きな一口でパクッと食べた。豪快な食べ方に「おお」と周りのお客さんも目を丸めていたのが分かった。
何処へ行っても目立つ天野。格好いいから、素敵だから、それだけじゃない何かを持っていると思う。華があるのだろう。皆の視線が自然と集まる。今だってそうだ。陽菜さんは家族だから天野のそういう特性をよく知っているのだろう。
天野の発言を聞いた後、ずっと咀嚼をしてた陽菜さんはひどく真剣な顔をしていた。そしてようやく飲み込んだ後、うんうんと小さく何度も頷いた。
「そうだよねー。だってあれほど女性の敵! ってぐらい、女性を取っ替え引っ替えだったんだからさー隠しておかないと、お兄ちゃんより涼音さんに被害が及びそうだもんねー」
「だからそれを言うか? お前なっ……グッ!」
ピザが盛大に詰まったのか、胸の辺りをドンドンと叩く天野だ。
私が慌ててミネラルウォーターを注ぎグラスを天野に渡す。天野はごくごくと飲み干す。
「天野、大丈夫? 陽菜さん。きっと天野は私の事も考えて、会社で秘密にしていてくれると思うの。ほら天野は人気者だから、私が仕事がやりにくくなったらって……気を遣ってくれているの」
私は何となくな理由をツラツラと陽菜さんに返す。
もちろん天野の優しい、人を気遣う性格を考えての返答だ。すると私の片手を取ってぎゅっと陽菜さんが両手で握りしめる。
「涼音さんって優しいー。だけど、お兄ちゃんの歴代の付き合い方って、本当に尋常じゃないんです。お兄ちゃんの彼女さんと普通に会話したいのに。大抵言葉の通じない、外国の女性が多くて。さすがにネイティブに太刀打ち出来る英語力は、今の私ではないしー」
「言葉の通じないって……そ、そういえばそうね」
慰安旅行で初めて抱かれた時の話を思い出した。
確か、岡本が天野を街で見かけたけど、白人女性に声をかけられていたとか。しかも、直ぐにホテルへ直行したとか……
天野って、天野って! そんな事が、未成年の陽菜さんにバレているなんて。私は思わず天野を見ながら額に怒りマークを浮かべてしまう。
すると天野が水を飲んで一息つき、姿勢を正す。それから慌てる事なくゆっくりと首を左右に振って否定した。
「そういう付き合い方はもう今後しないんだ俺は……今は、真剣なんだ」
焦らないどっしりとしたその態度が、本当に真剣だという事が伝わってくる。
そんな風に言われると凄く嬉しい。嘘じゃない事は私自身が理解している。だけど、陽菜さんには通じなかったみたいだ。
「えーホントー? あのお兄ちゃんなのにー」
「そうそう。あのお兄ちゃんが超ひたむきなの。恋しているの」
そう言いながらもう一切れ新しいピザに手を伸ばした。
「だったら! もっと早くに涼音さんを紹介して欲しかったのにー」
ぷぅと可愛くふくれっ面をする陽菜さんだ。
「長続きする恋人っていうのは、俺も初めての事だから。週末はいつも倉田と過ごしていて。高校生っつても陽菜だって分かるだろ? それだけ夢中で楽しいんだ。だけど、今までの俺も俺だから、なかなか陽菜に言えなかったのーごめんなさいー」
再び天野は陽菜さんの口調を真似て話し始める。どうやら調子が戻ってきた様だ。
しかし、陽菜さんは天野が「週末はいつも」という言葉を発した時にピクリと動いた。
それから、口を一度開いて何か話し出そうとしたが、私をチラリと見て口を閉じた。ものすごく言いにくそうな困った顔になっていた。
ん? 何だろう。何かを言いかけて止めた?
私は思わず首を小さく傾げた。すると、私の様子を見てから陽菜さんは瞳を伏せる。コホンと咳払いをし、空になった自分のお皿をぎゅっと握りしめ小さく呟いた。
「私だって。お兄ちゃんの彼女が、涼音さんなのは凄く嬉しいけど。何だか嘘みたい……」
珍しく語尾を伸ばさない真剣な話し方だった。
それに気づいているのかいないのか天野は、空になった陽菜さんのお皿を自分の方に持ち上げながら不満そうに口を尖らせた。
「はぁ? 何で嘘みたいなんだよ」
天野のそんな口調を聞いて、陽菜さんも口を尖らせた。
「……だってお兄ちゃんチャラいのに。真剣になったからって、こんなに素敵で美人でスタイル抜群で。それだけじゃなくて、仕事が出来そうな……ううん、きっと仕事が出来る涼音さん、女性が社内にいたからって。そんな易々と彼女になってくれるはずないって……あっ、痛い!」
突然軽めの天野の手刀が、ポコンと小さく音を立てて陽菜さんの頭の上に落ちた。もちろん本気で叩いたわけではない。
「倉田の存在を疑う様な事を言うな。怒るぞ」
言われてみれば、陽菜さんはハイテンションでずっとしゃべり通しだったが、今の言葉は私を本当の彼女と思っていない様な口調だった。
もしかして私は、陽菜さんに認められてないのかな。素敵だと言ってくれたから、嬉しくて舞い上がって恥ずかしい。
むしろ天野が素敵すぎるから、優しいから。彼の事をよく知っている陽菜さんだから、私が不釣り合いだと思ったのかも。何となくそんな事を考えてしまい、私は陽菜さんの気持ちを探ろうとじっと見つめる。
すると、天野に言われた言葉に陽菜さんは慌てて、ガタンと音を立て椅子から立ち上がる。
「違うって! そんなんじゃないよ。涼音さんを疑っているんじゃなくて、むしろお兄ちゃんが……っ!」
そう言って天野に言いかけて、私の方へ振り向くと再び口を閉じてしまった。それからゴクンと息を飲み込んでゆっくりと椅子に座り直す。
「ごめんなさい。変な事言って。私、涼音さんみたいなお姉さんが出来て凄く嬉しくて。だってお兄ちゃんの彼女でこんなに素敵な人は本当に初めてだから、夢だったらどうしよう……って思って」
陽菜さんはマッシュボブを揺らして小さくなった。
私は頭を下げて謝る一際小さくなった陽菜さんの手を、そっと上から握りしめた。体の小さな陽菜さんだ。私の手よりずっと可愛くて小さい。
「私も陽菜さんに会えて嬉しいわ。私ね、会社ではおばさんだから。素敵だなんて言って貰えないのよ。だから凄く嬉しいわ」
私が微笑んで陽菜さんの顔を覗き込むとホッとした顔をしていた。
「そんな事ない。涼音さんは素敵ですっ! あの、本当にごめんなさい……変な事を言って」
「ううん。気にしていないわよ」
断言してくれた陽菜さんだった。私は小さく首を振って微笑んだ。
高校生に気を利かせて貰うなんてね。私こそ駄目ね。
私はそんな思いで、天野に振り向き微笑んだ。
そうしたら天野がホッと溜め息をついて、新しく陽菜さんのお皿にピザをのせて手渡す。
「……バーカ。夢なわけあるかよ。倉田が恋人なのが夢だったら、俺が困るわ」
少し乱暴に答えるけど、優しく天野は微笑んだ。
その顔を見て眉を垂らす陽菜さんだった。
やはり困った様な顔をしている。
だけど「うん」と一つ頷くと、何かを決心した顔つきになり真っ直ぐ天野を見つめた。
「ごめんねお兄ちゃん。だってお兄ちゃんが今までチャラチャラしすぎだからー」
「グッ……チャラチャラしすぎって……だから、陽菜は一言多いんだよ! ほら次はパスタが来るぞ」
天野チャラい説から離れない陽菜さんに、お兄さんの天野は肩を落とすしかなかった。
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