14 / 36
キャンプファイヤー
揺らめくフレッシュグリーン
しおりを挟む
洗い場の豆電球の灯りを頼りにして、班のみんなで後片付けを済ませた後、全クラスが広場に集合した。
広場の中心には、日中到着した時にはなかった四角く木の枠が組まれ、中には薪が山の様に積まれている。火の粉がかからないように一定の距離を空けて、ぐるりと取り囲むようにクラス単位で地面に腰を下ろしていった。
組み上げられた薪に灯油がかけられる。先端に布を巻きつけた長い棒を持った先生が、残りの灯油に棒の先を浸してから火をつける。メラメラと炎を上げる棒を薪の山にかざす姿は何かの儀式みたいだ。
ボッと音がした瞬間に薪の上に火柱が上がり、驚いた女子の悲鳴が上がる。でも、それは一瞬で、煌々と燃え上がる炎の美しさに誰もが目を見張り、次第におお~っという歓声に変わった。
灯油のかかっていない部分にも、勢いを増した炎がなめるように這っていき、パチパチと爆ぜる音を響かせる。オレンジ色の炎が、火の粉をまき散らしながら天に伸びていく様子は、息を飲むほど神秘的だった。
炎に照らされたクラスメイトの姿は、炎の動きを映して陰影の濃淡を揺らめかせる。火から離れていても十分に熱を感じ、眩しさに手をかざす生徒もいた。
魅せられたように炎を見つめている薫子が、すごい迫力だねと理花に語り掛けた。炎を見つめ過ぎて、熱で乾きがちな目を、瞬きで潤しながら理花が相槌を打つ。
「ほんとにすごいね。こういうの見ると、理科で習った炎の温度を思い出さない?」
「ならないってば!もう、理花ったら、こんな時まで理科の実験……」
はっとした薫子が口を押えて、きょろきょろ周囲を見回した時、いつの間にやってきたのか、傍に座っている司が先を訪ねた。
「理科の実験がどうしたの?」
揺らめく炎にくぎ付けになっていた理花は、薫子が口をつぐんだ理由にまで頭が回らず、同じ疑問を口にした。
「炎の色の温度の話をしていたの。司君は覚えてる?」
「ああ、そういうのあったな。内炎と外炎だっけ。暗赤色は低温で、橙色、黄色白色、まばゆい白熱という順に高温になる」
「すごい司君!さすが男の子!っていうか、司君って本当は頭いいんだね」
「本当は、って言葉いらなくないか?ほめられた気がしないんだけど。でも、どっかでこんなやり取り聞いたような…‥」
「こ、理花。C組の出し物の準備しにいこうよ。司君話し中にごめんね」
薫子が急に慌てだしたので、理花は不思議に思いながらも、立ち上がった。
クラス単位の出し物はA組から始まる。C組の出し物は三番目だけれど、女子は準備のための時間が必要だった。
理花は15人の女子たちに声をかけ、揃って広場を離れると、足早にバンガローを目指した。
キャンプ場に着いた時に想像した通り、木々に囲まれた山道は真っ暗だった。所々にぽつんとある電灯と、バンガローの入り口に設けられた灯りだけが、闇夜を照らす道しるべになる。
みんなも怖いのか、先頭を歩く理花と薫子から離れないように、団子のように固まって進んでいた。
突然、夜のしじまを破って、開会式のマイクテストが行われ、遠くから司会者の声がこだました。頭を覆う木々のあちらこちらから、姿の見えない鳥たちの警戒する声が聞える。
これから開会式の先生たちの話が始まり、司会者が場を盛り上げながら、A組の出し物を紹介するのだろう。A組の出し物が何なのかは知らないけれど、理花は大智の活躍がみれないことが心残りだった。
広場の中心には、日中到着した時にはなかった四角く木の枠が組まれ、中には薪が山の様に積まれている。火の粉がかからないように一定の距離を空けて、ぐるりと取り囲むようにクラス単位で地面に腰を下ろしていった。
組み上げられた薪に灯油がかけられる。先端に布を巻きつけた長い棒を持った先生が、残りの灯油に棒の先を浸してから火をつける。メラメラと炎を上げる棒を薪の山にかざす姿は何かの儀式みたいだ。
ボッと音がした瞬間に薪の上に火柱が上がり、驚いた女子の悲鳴が上がる。でも、それは一瞬で、煌々と燃え上がる炎の美しさに誰もが目を見張り、次第におお~っという歓声に変わった。
灯油のかかっていない部分にも、勢いを増した炎がなめるように這っていき、パチパチと爆ぜる音を響かせる。オレンジ色の炎が、火の粉をまき散らしながら天に伸びていく様子は、息を飲むほど神秘的だった。
炎に照らされたクラスメイトの姿は、炎の動きを映して陰影の濃淡を揺らめかせる。火から離れていても十分に熱を感じ、眩しさに手をかざす生徒もいた。
魅せられたように炎を見つめている薫子が、すごい迫力だねと理花に語り掛けた。炎を見つめ過ぎて、熱で乾きがちな目を、瞬きで潤しながら理花が相槌を打つ。
「ほんとにすごいね。こういうの見ると、理科で習った炎の温度を思い出さない?」
「ならないってば!もう、理花ったら、こんな時まで理科の実験……」
はっとした薫子が口を押えて、きょろきょろ周囲を見回した時、いつの間にやってきたのか、傍に座っている司が先を訪ねた。
「理科の実験がどうしたの?」
揺らめく炎にくぎ付けになっていた理花は、薫子が口をつぐんだ理由にまで頭が回らず、同じ疑問を口にした。
「炎の色の温度の話をしていたの。司君は覚えてる?」
「ああ、そういうのあったな。内炎と外炎だっけ。暗赤色は低温で、橙色、黄色白色、まばゆい白熱という順に高温になる」
「すごい司君!さすが男の子!っていうか、司君って本当は頭いいんだね」
「本当は、って言葉いらなくないか?ほめられた気がしないんだけど。でも、どっかでこんなやり取り聞いたような…‥」
「こ、理花。C組の出し物の準備しにいこうよ。司君話し中にごめんね」
薫子が急に慌てだしたので、理花は不思議に思いながらも、立ち上がった。
クラス単位の出し物はA組から始まる。C組の出し物は三番目だけれど、女子は準備のための時間が必要だった。
理花は15人の女子たちに声をかけ、揃って広場を離れると、足早にバンガローを目指した。
キャンプ場に着いた時に想像した通り、木々に囲まれた山道は真っ暗だった。所々にぽつんとある電灯と、バンガローの入り口に設けられた灯りだけが、闇夜を照らす道しるべになる。
みんなも怖いのか、先頭を歩く理花と薫子から離れないように、団子のように固まって進んでいた。
突然、夜のしじまを破って、開会式のマイクテストが行われ、遠くから司会者の声がこだました。頭を覆う木々のあちらこちらから、姿の見えない鳥たちの警戒する声が聞える。
これから開会式の先生たちの話が始まり、司会者が場を盛り上げながら、A組の出し物を紹介するのだろう。A組の出し物が何なのかは知らないけれど、理花は大智の活躍がみれないことが心残りだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる