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キャンプファイヤー

揺らめくフレッシュグリーン

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 洗い場の豆電球の灯りを頼りにして、班のみんなで後片付けを済ませた後、全クラスが広場に集合した。
 広場の中心には、日中到着した時にはなかった四角く木の枠が組まれ、中には薪が山の様に積まれている。火の粉がかからないように一定の距離を空けて、ぐるりと取り囲むようにクラス単位で地面に腰を下ろしていった。

 組み上げられた薪に灯油がかけられる。先端に布を巻きつけた長い棒を持った先生が、残りの灯油に棒の先を浸してから火をつける。メラメラと炎を上げる棒を薪の山にかざす姿は何かの儀式みたいだ。
 ボッと音がした瞬間に薪の上に火柱が上がり、驚いた女子の悲鳴が上がる。でも、それは一瞬で、煌々と燃え上がる炎の美しさに誰もが目を見張り、次第におお~っという歓声に変わった。

 灯油のかかっていない部分にも、勢いを増した炎がなめるように這っていき、パチパチと爆ぜる音を響かせる。オレンジ色の炎が、火の粉をまき散らしながら天に伸びていく様子は、息を飲むほど神秘的だった。

 炎に照らされたクラスメイトの姿は、炎の動きを映して陰影の濃淡を揺らめかせる。火から離れていても十分に熱を感じ、眩しさに手をかざす生徒もいた。

 魅せられたように炎を見つめている薫子が、すごい迫力だねと理花に語り掛けた。炎を見つめ過ぎて、熱で乾きがちな目を、瞬きで潤しながら理花が相槌を打つ。

「ほんとにすごいね。こういうの見ると、理科で習った炎の温度を思い出さない?」

「ならないってば!もう、理花ったら、こんな時まで理科の実験……」

 はっとした薫子が口を押えて、きょろきょろ周囲を見回した時、いつの間にやってきたのか、傍に座っている司が先を訪ねた。

「理科の実験がどうしたの?」

 揺らめく炎にくぎ付けになっていた理花は、薫子が口をつぐんだ理由にまで頭が回らず、同じ疑問を口にした。

「炎の色の温度の話をしていたの。司君は覚えてる?」

「ああ、そういうのあったな。内炎と外炎だっけ。暗赤色は低温で、橙色、黄色白色、まばゆい白熱という順に高温になる」

「すごい司君!さすが男の子!っていうか、司君って本当は頭いいんだね」

「本当は、って言葉いらなくないか?ほめられた気がしないんだけど。でも、どっかでこんなやり取り聞いたような…‥」

「こ、理花。C組の出し物の準備しにいこうよ。司君話し中にごめんね」
 薫子が急に慌てだしたので、理花は不思議に思いながらも、立ち上がった。 

 クラス単位の出し物はA組から始まる。C組の出し物は三番目だけれど、女子は準備のための時間が必要だった。
 理花は15人の女子たちに声をかけ、揃って広場を離れると、足早にバンガローを目指した。

 キャンプ場に着いた時に想像した通り、木々に囲まれた山道は真っ暗だった。所々にぽつんとある電灯と、バンガローの入り口に設けられた灯りだけが、闇夜を照らす道しるべになる。

 みんなも怖いのか、先頭を歩く理花と薫子から離れないように、団子のように固まって進んでいた。

 突然、夜のしじまを破って、開会式のマイクテストが行われ、遠くから司会者の声がこだました。頭を覆う木々のあちらこちらから、姿の見えない鳥たちの警戒する声が聞える。
 これから開会式の先生たちの話が始まり、司会者が場を盛り上げながら、A組の出し物を紹介するのだろう。A組の出し物が何なのかは知らないけれど、理花は大智の活躍がみれないことが心残りだった。

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