命の色

命の色

　頼む！　薬の破片でもいい。見つかってくれ！
　
　汚いとは思わなかった。生きているから、生きていてくれるから、体液も出れば、吐きもするんだ。
　薬・・・・・・。薬・・・・・・。
　
　音も匂いも酷いものだ。でも、美咲が負うものが軽くなるのなら、こんなものは苦でもない。

　看護師が入ってきたのと、大悟が薬を摘まみ上げたのは同時だった。

　「あった。薬。溶けずにまだありました」

　看護師は頷いて、また走って行ってしまった。
　
　他の看護師に汚物を処理していいか聞いてから、薬だけを避けて紙コップの中に落とす。部屋の隅にある便器に似た汚物処理用の陶器に吐しゃ物を捨てて、レバーを捻って水で流した。
　その横にある洗面所で手を洗い終わった時、看護師が薬を持って入ってきた。

「先生に処方してもらいました。大事なお薬です。飲んだのを見届けさせてもらいますね」

　まだ10度までしか頭を起こせない美咲は、少しだけベッドを傾斜させてから、口をゆすいで、汚物入れに吐いてから、新しい薬を舌にのせた。