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第三章

第88話 魔法学院にて

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「おや、勇者君、久しぶりだねー、休暇は楽しめたかい? それともお楽しみだったのかい? あはは」

 授業に堂々と遅刻しておいてなんだお前は。
 まあ俺も人のことはいえないか、新入生の入学式はなんやかんやで欠席してしまったしな。

 まあいい、ひょっとしたらユーギが消えてしまったのではと焦ったのだ。

「ああ、色々あったよ。そういえばお前が言ってたメカドラゴンってのが復活してな」

「メカドラゴン……ああ、あれね、そうか残ってたんだね、僕も見たかったよ。
 そうだドラゴンといえばこの間のドラゴンの街で買ったドラゴンフィギアからインスピレーションを得てね、氷結の魔女として新しい氷の魔法の使い方を模索中さ」

「ユーギ、もう一つ報告だが、氷結の魔女は復活したから、つまりお前のそれは二番煎じだしパクリだ」

 おれは、フリージアが復活して魔王の嫁になったことを話した。
「え? そっか。それは残念だ、まあ、あの子達に力を与えたのは僕だし、それはそれで少し安心したかな」

 ユーギは遠くの空をみる。そうか、本来のエルフとは異質な氷の力はこいつが授けたのか。
「でも、これはこれ、見たまえよ、エターナルブリザード、ドラゴンモード!」

 氷のドラゴンが出現。

 ちなみに今は魔法学の授業中である。比較的広い実習室で、壁は魔法防御に優れたミスリルで作られている。
 この部屋一つで、並みの貴族の家ならまるごと買い取れるほどだ。

 その部屋にでかでかと氷のドラゴンが出現した。
 人の身長の2倍ほどはあるそれに俺は既視感を覚えた。

「これは? そうか、あれか、まるで札幌雪まつりの氷の彫刻だな」

「あはは、実に手厳しい、まさにそれなんだよ、動かそうとすると関節から崩れるんだ。
 まあ所詮は氷だし、関節なんて見た目だけで動かすと全身にひびが入ってね。まいったまいった」

 それは当たり前だ、骨格がないんだし、生き物っぽい動きは不可能だろう。

「ユーギさん! これは素晴らしい。氷の魔法に新たな価値を見出すなんて。
 これは、この彫刻はぜひ、夏のお祭りで展示すれば涼も取れて見物客もたくさん来る、いけるよ!」

 カール氏がさっそく食いついてきた。

「お、御曹司君さっそく商売だね。すばらしい発想だ、乗ろうじゃないか」 

 ユーギとカールはさっそく商談を始めた。この二人は仲良くなったものだ、あくまでビジネスパートナーとしての意味だが。

「なあ、ユーギ、ちょっと話があるんだ。わりとマジだから、放課後に図書館でな」

「ん? まさか愛の告白かい? それともかつての戦いに決着をつけるのかな?」

「そうだな、後者はありだが、それはまた今度だ。他に約束があるなら後で構わないが……」

「ふーん、なんか訳ありって感じだね、いいですとも、聞こうじゃないか」 

 ◆

 図書館の会議室にて。

「――といことなんだ、お前の意見を聞きたい」

 俺はユーギに自分に起こったことを全て話した。

「なるほど……ふむ、ふむ、君は記憶のバックアップであるはずで、なぜ勇者の魔法が使えるのか、と」

「そこなんだ、まず、俺がただのバックアップだとすれば勇者の魔法は使えないはずだ、お前は本当に俺を転生させてないのか?」

「それは断言できるよ。ちなみに、前にも言ったけど僕はもう神の力はつかえないよ。だとすると僕の主神が怪しいけど、それもないはずだ。彼女が嘘つきでないならという前提があるけどね」

「主神って、だれだよ、日本の神様か? まあ、お前がそういうなら信じよう」

「懸命だね、これだけは言わせてもらえるけど、神は嘘はつかない、信仰に関わるからね。それにその必要もない、嘘とは人間に許された唯一無二のスキルだ、誇っていいとも」

 なるほど、嘘は人間の唯一のスキルってか、そんなの誇っていいわけあるか。

「それは、聞いてないが、で、実際どうなんだ?」

「うん? 転生なのかそうじゃないのかって? さあ、分かんないねー、それに、何が問題なんだい? ちなみに勇者の魔法が使えるのは当たり前だよ。だって君そのものじゃないか。
何をもって転生したのか、転生してないのか。その線引きはなんだい? 僕が授けた力はなんだい? 何でも出来る魔法を与えたんだよ。身体は無いけど君は君じゃないかな?」 

 あ、そうか、そうだったな。でもそれではロボさんに身体を返すという目的が解決しない。

「振り出しに戻っただけか、何でも出来る魔法なら、いっそ身体を移し替えることもできるのでは?」

「どうやるのさ? 何でも出来る魔法は、その方法が君自身で理解してないと発動しないっていったよね。ちなみにさっきも言ったけど僕には神の力はないよ。まあ、急がずゆっくり考えたまえよ、君の相棒もそれを望んでるよ」
(そうです、思いつめても結論はでませんよ)

 ふむ、そうだな、前向きにいくか、何とかなるだろう。
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