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第五章 迷宮都市タラス

第80話 敵討ち②

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 翌日。俺達はさっそく準備にかかる。

 ベヒモスが森を抜けるのは最短で一週間ほど。
 だが奴は道中で魔物を捕食しながら進んでいるようで誤差はあるそうだ。

 そんな状況で待ち構えるのは得策ではないし、ルカが言うにはこの街の城壁では意味がないそうだ。
 最低でもエフタル王国にあった大結界クラスの防御魔法が無ければいけないそうだ。

 だから、俺達がバシュミル大森林に進入しベヒモスを直接討伐する。

 俺達はタラスの街を歩く。ルカも珍しく外出している。

「実はのう、キッチンカーを勝手に改造させてもらったぞ。これから四人旅になるし、場所もバシュミル大森林ときた。装備もそれなりでないといかん。
 セバスちゃんはともかく吾輩たちは素人だ。それにテントも広めのをもう一つ用意しなければな。お主たちも感じていたであろう? 四人用のテントといってもだな、実は四人寝るのは不可能じゃ」

 ……確かに、俺もそれには同感だ。ギリギリ寝れれば良いという物ではない。パーソナルスペースは重要なのだ。
 性別が違えば尚の事。

「ところでキッチンカーを改造ってどこを改造されたのですか?」

「カイル少年よ、さすが男の子じゃのう。気になるか? いいじゃろう。まず最大の改造は動力源じゃ。
 今までは二十番の魔剣のキャリア―的な意図で、吾輩が開発した後期型のキッチンカーは二十番の魔剣のマウントスペースを確保していた。
 いずれは、二十番の量産も視野に入れておったからのう。まあその収納スペースも魔剣自体を改造したため使えぬ。
 だから、そこを潰して動力源は魔石のみにした。魔石はコストはかかるが、それは吾輩のポケットマネーで充分賄えるじゃろう。
 それに、お主たちも結構稼いでおるだろう? 何も問題はない。

 しかし二十番をマウントできなくなったデメリットはある。
 重い魔剣を運ぶというデメリットだ、それでもカイル少年には常にそれを装備して行動できるように訓練の意味合いもある。何事もポジティブに考えねばな。

 だが、おかげでキッチンカーの収納スペースが大きくなった。だから追加で強力な魔法結界発生装置を増設することができた。
 テント周辺にエフタル王城の大結界に匹敵する強力な魔法結界を張れるようにしておいた。
 夜も安心して眠れるし、火を起こしても外部に知られることはないじゃろう。これで旅はずっと楽になるはずじゃ」

 なるほど、それは素晴らしい改造だ、夜寝ているときに、マンイータークラスの魔物の襲撃を受けたら……とてもじゃないが旅は不可能だ。

 俺達はタラスの商店街で一通りのサバイバル用品に追加のテント。そして食料を買う。

 いよいよ出発だ。

 冒険者ギルドのマスター、ローランドさんに事情の説明をすると北門を出る。
 今回の任務は冒険者ギルドには非公開だ。ベヒモスの侵攻を知ってるのはローランドさんだけだろう。
 「ご武運を」とローランドさんは言ったが、すぐに普段の業務に戻った。  
 ベヒモスはスタンピード以上の災厄なのだろう。決して外部に漏れてはならない。そういう意思は伝わった。
 
 平原を歩くと俺達はついにバシュミル大森林に進入する。
 目的はただ一つ、魔獣の王の討伐。ルカが言うにはベヒモスには城壁は意味がないそうだ。
 だから現地までいって先制攻撃をしかける必要がある。

 初日、森を歩いて気付いたが、道がある。それこそギリギリ馬車が通れる幅の道が。

「これって人工的に作られた道ですか?」

「さあのう、それは分からんが吾輩が知る限り、昔から草木が生えない道の様な物はあったそうじゃ。我々はそれを道に使っているだけで自然にできたのだろうて?
 まあ、魔物も人もこの道を使うからのう。だがこの道を使えるのは実力に見合った者だけじゃ、左右の森から襲撃される覚悟が出来た者、あるいは万全の備えをした軍隊とかな」

 しばらくしてセバスティアーナさんが戻ってきた。木の上から気配なく飛び降りてきたので驚いた。
 相変わらずこの人の気配を察知することができない。ニンジャーというクラスの特殊技能という事らしいが……。

「皆さま、今日はこの辺で一泊しましょう。ちょうど近くに小川がありますのでそこでテントを張りましょうか」

 目的地があるわけではないので体力の温存の為に休憩は多くとる。そして訓練もするのだ。
 戦場はここバシュミル大森林だ。ここの地形に慣れないと戦闘どころではない。

 だから道中は魔物を発見する役目はセバスティアーナさんで、討伐は俺とシャルロットが担った。

 現れる魔物はマッドフォレストウルフにブラッドラプトルなど単独行動をする奴らばかりだった。群れで行動する魔物はスタンピードの影響でここにはいない。

 訓練には最適と言える。ベヒモスも単体だし、多対一の戦いに慣れないといけないからだ。
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