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声
しおりを挟む○男狼の呼び出しかた
1.紙に4分の1の面積ずつ、願い事を書く。
2.4枚に、破る。
3.重ねてシャッフルする。
4.一番上の紙をめくる
ある日の夜に5人の生徒は学校に忍び込んだ。
門を登り、窓を割り、教室へと向かった。
「なあ、学校にくる意味あったか?」
そう聞いたのは石田。
それに杜山が答える。
「その方が雰囲気でんじゃん!」
陽気に答える杜山と相対した様子の石田がつぶやく。
「‥‥‥‥これ、明日絶対怒られるよ」
今日は日曜日。
明日は学校だ。
「なんとかなるって!」
杜山がまたもや陽気に答える。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥気楽ね。今からすることに対して、少しは危機感を持ったら?」
西之が冷たく2人にいい放つ。
「お、俺は危機感もってるのに‥‥」
「まー、まー。杜山も少しは気を引き締めてくれよな。
それと、石田。
固くなりすぎだ。リラックスしろよ、
頼むぜ?キング」
憐が2人に指摘する。
「‥‥そーだったな。俺は王様なんだから!!」
「似合わねーな、‥‥‥‥まー、少し気を引き締めてみるよ」
2人はなんとかまとまったようだ。
「西之、お前も具体的に言えよなー」
憐が西之に話しかける。
「‥‥‥‥いいじゃない。別に」
そう答える西之の顔は少し赤くなっていた。
それを横目でみる坂口はなんだか悲しそうだ。
「なー、こんな集まりにさ、西之さんみたいな人が来てくれたのってさ‥‥‥‥」
杜山が石田に言う。
「ああ、憐のやつ、羨ましいぜ」
その話を少し耳にした憐が2人に不思議そうに言う。
「‥‥?西之はオカルト好きなんだぜ?
オカルトのことには目がないんだ。
だから来てくれたんだぞ?」
先程の話の意味を理解できていない憐に、
安心しながらも、呆れたように2人は憐を見た。
「な、なんだよ」
「「なんでもないよ」」
2人の声が重なった。
「‥‥‥‥?気味悪いな」
そんな3人のやり取りの中、坂口は西之に話しかけていた。
「ねぇ、みーちゃん」
「何?」
坂口は西之のことをみーちゃんと呼んでいる。
レイと呼ぶと、自分と区別がつきにくいからだ。
「憐くんのこと、好きなの?」
西之の顔がまた赤くなる。
「ば、ばか。そんなわけないじゃない」
「じゃー何で告白してきた人達、皆ふるの?
憐くんが好きだからじゃないの?」
動揺しながらも、その坂口の問いに、西之は答える。
「別に、‥‥‥‥‥‥好い人(いいひと)じゃ、なかったからよ」
そうこうしているうちに、5人は目的の教室についた。
そして、準備が完了した。
杜山は“伸長を伸ばしたい”。
石田は“大金持ち”。
西之と坂口は“ずっと一緒にいられるように”。
そして憐は、“不老不死”と書いた。
西之と坂口は2人で1つの願い事だ。
ビリッビリッ
静かな教室に、小さな雑音が響く。
カサッカサッ
シャッフルが始まった。
シャッフルしているのは憐だが、
不正があるとダメなので、順番に回してシャッフルしていく。
紙だからやりにくいのか、意外と時間がかかった。
「めくるぞ?」
一周して、回ってきた憐が聞く。
声もださずに、4人は頷いた。
サッ
一枚の、四角く破られた紙がめくられた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥!!よしっ!」
そう叫んだのは憐。
めくられた紙に書かれたのは、“不老不死”だった。
「‥‥不老不死とかバカみたい」
「‥‥バカってなんだよっ!」
西之と憐が軽く口論をする。
「おい、2人とも止めろって」
杜山が2人を止めようとする。
「これじゃほんとに叶ったかわからないじゃない」
「そっちだってそーだろ!」
2人はそれでも口論を止めない。
その時。
「止めて!!!!」
そう叫んだのは坂口。
なにやら焦っている様子だ。
「い、石田くんの、石田くんの様子が変なの‥‥‥‥!」
皆が石田の方向を見る。
石田は男狼の儀式をやり終えてから、
珍しく一言も喋っていない。
その石田の顔は、ひどく青ざめている。
また、よく見ると体も小さく震えていて、
ただ事ではないことは、一目見てわかった。
「どうした?石田?」
憐の問いに、石田は震えながら答えた。
「き、聞こえたんだよ」
「何が?」
杜山が聞く。
「お前らが、口論してる時、俺のう、後ろで!」
石田はどんどん落ち着きをなくしてゆく。
「わ、笑い声が!聞こえたんだ‥‥‥‥!
憐の声に似てた。‥‥けど!絶対憐の声じゃないんだ‥‥!」
皆の顔が、青ざめていく。
「う、嘘‥‥‥‥だよね?」
坂口がつぶやく。
「こんなところで嘘つくやつじゃねぇよ」
杜山が坂口に言う。
「俺、‥‥‥‥笑ってなんかいねぇ。
‥‥‥‥‥‥ってことは‥‥」
「‥‥‥‥男‥‥‥‥‥‥‥‥狼?」
憐の言葉に、西之が反応する。
「い、いや!やめてよ!」
坂口が叫ぶ。
「落ち着けって!まだそうと決まったわけじゃない」
憐が坂口を落ち着かせようと試みる。
「‥‥整理しましょ。
もし、石田君の聞こえた声が空耳ではなかったら、
男狼である可能性が高い。
そして、それはこの教室にいる」
西之が皆に確認する。
震えている坂口は憐の袖をつかむ。
「私‥‥‥‥こわい」
「大丈夫。大丈夫だから」
その様子を見た西之は、少し不機嫌になった。
「とりあえず、この教室を探索しましょ」
冷たく西之はいい放った。
「か、帰らないの?」
坂口が聞く。
「明日、学校に、この教室にくるのよ?
その時にまだいたら、かなり危険でしょ。
考えてよ‥‥‥‥」
「ご、ごめん」
普段は仲の良い2人だが、この時はなんだかピリピリしていた。
「んじゃまー、とりあえず調べるか‥‥‥‥」
憐が気弱な声で言う。
「そんなに男狼がこわいのか?」
杜山が憐に聞く。
「‥‥こわくないけど?」
「じゃーなんでそんなテンションなんだよ」
「俺の願い事が叶えてもらえてない可能性が高いからだよ」
憐が不機嫌そうに言う。
「ったく、‥‥‥‥‥‥出るんだった出るでしっかりと‥‥‥‥‥‥‥‥!!」
後ろを振り向いた憐が固まる。
振り向いた憐の後ろにいた人達も、‘それ’に気づき、固まる。
そして、‘それ’はにわかに信じがたいことを口にした。
「「やあ、こんばんわ。
僕はレン。男狼だ。
さあ、願いを叶えようか」」
突如現れたら‘そいつ’の声は、
1人なのに、
2人いるように聞こえた。
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