Destiny ~自衛隊冒険記~

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~魔獣討伐編~

クシャネルゼ公国...異世界からの訪問者...

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クシャネルゼ公国城下町...
この日この街は、いくつもの気の沈むニュースで暗い雰囲気に包まれていた。
「帝国軍の侵略が激化、リテール国が帝国の支配下に!!!」
「プラテニス村の森で突然村人が多数死亡!!新種の伝染病か!?」


「...なんともまぁ、暗いニュースばっかりだこと...」
「でも、この記事見てよ。ほらこれ。」
そう言って少年の一人はある一つの記事を指差した。

「ークシャーク樹海で盗賊団ネクロの全滅を確認!!これは誰の仕業なのか?すぐ近くで緑のまだら模様の入った服を着た集団を目撃!!さらに大規模の盗賊団結成か!?ー」


「それにしても、あのネクロの連中をやっつけるなんて...どんな奴らなんだろ...」
「気になるよなぁ。なんせこの辺りで一番強い奴らだったからなぁ...」
盗賊団ネクロ...この辺りでは一番力をつけていた盗賊団で、そのあまりの強さに王国軍も放置しているくらいなのだ。
「緑の服を着た人...この緑の人に会ってみたいなぁ」
「よしとけよ、もし盗賊団だったらどうするんだ?」
「だけどよぉ~、あれから山路を通る馬車や荷車はひとつも襲われてないじゃん?」
そう、あれから山路で襲われた車両は、ひとつもない訳で、盗賊と確定できず、妙と言えば妙なのである。
そしてこちらでも、その記事に目をつけた一人の少女がいた。
「こんな話信じられる訳ない。でも...あいつを倒してもらうには...何としてもこの人達にも協力してもらわなくては...」
そう呟いた後、少女は緑の人が目撃されたという樹海へと走って行った...





ー護sideー
その頃、護達は街はずれの廃屋にまでやってきていた。
「村上、井上、お前達はここにいろ俺と倉田で偵察に...「隊長!!!」
護の声を遮ったのは、偵察組の中での唯一の女子である井上 香だった。
「隊長!やっぱり偵察は女子がいた方が、相手にも警戒心を与えませんし。私の方が適任かと。」
「んじゃ、井上と村上で...「なんでですか!!??隊長が行かなくちゃ意味ないじゃないですか!!!」
...どうやら井上は、どうしても護と行きたいらしい...
「それもそうか...それじゃ行くか?」
「はいっ!!!」
そのやりとりを見ていた村上と倉田が苦笑する。その時の井上の様子が完全に恋する乙女であったからである...ここだけの話、護はかなりイケメンの部類に入るし、井上にいたってはなぜ自衛官になんぞなったのだ?というほどの美形である。はたから見れば、とてもお似合いのカップルなのだが、好意を向けられる護はそのことに全く気づいていない。そして井上の気持ちはおそらくこの偵察でも理解されることはないだろう...なんだか井上が可哀想に思えてくる偵察であった...


「わぁ~~!!隊長隊長!すごいですよ!?まるでヨーロッパの国みたいです!!」
「おいおい、そんなことより偵察だ偵察」
「は~~い」
驚きながらも冷静な護と、予想外の光景+護と二人っきりであることで若干ネジが外れかかっている井上は、廃屋で拾った大きめのフード付きマントをかぶりながら街の中心部と思われる方角へと歩いていた。
「少なくともこの街にいる人達は、見た限りほとんどが私たちと同じ外見の様ですね...あと信じられないことですが、聞こえる言語も日本語に酷似しています」
「マントはいらなかったかなぁ~。まぁとりあえず言葉が通じるかの確認と、通じたらこの街の情報を仕入れてみよう」
「了解です!!」
「いいか?無線は開いたままにしておくんだぞ?」
「それも了解です」
「それじゃ、15分後にここで落ち合おう。それ以上離れるのは危険だからな。一時解散!」



ー15分後ー
「隊長、公用語は日本語と考えてほぼ間違いないと思います。受け答えも、イントネーションも、私達が話す日本語と相違ありません。それと、この国はどうやらクシャネルゼ公国と呼ばれていて、帝国の侵略に対抗している国の様です。巻き込まれると厄介ですね...」
「こっちも、ほぼ一緒だ。食べ物だけは、いま食ってぶっ倒れても困るからそこはあとで調査しよう。」
「それにしても、このマント暑いですね...とろっかなぁ~」
「やめとけ、いまとったらめんどくさいことになる...」
護はそう言って懐から1枚の新聞らしきものを取り出した。

「ークシャーク樹海で盗賊団ネクロの全滅を確認!!これは誰の仕業なのか?すぐ近くで緑のまだら模様の入った服を着た集団を目撃!!さらに大規模の盗賊団結成か!?ー」

「うひゃ~...」
「とらなくてよかったな、俺はここでお前を失うのはヤダぞ?」
「はい...心配してくれてありがとうございます。」
「仲間だからな」
「そういうことじゃなくて...その...」
「ん?」
「なっ...なんでもないです!ほら隊長!もう少し観光しましょうよ?」
そう言って井上はさらに街の中心部へと歩き出した。




「...お前この偵察の趣旨忘れてるだろ...」




それからさらに30分ほどたった頃...井上が、ある異変に気付いた。
「なんだか向こうが騒がしいですね...」
「そうなのか?」
正直 護には、全くわからない。井上の聴覚はかなり優れており、本人いわく、常人の2倍は聞こえるらしい...
「行ってみませんか?」
「まぁ、井上がそう言うんならなんかあるんだろう。行こう」
そうして歩くこと数分、さらなる異変に井上が気付き顔色が変わった。
「これは...悲鳴!?何かが壊れる音もします!隊長急ぎましょう!」
「!?っよし行くぞ!!」
そして二人は街の中心へ走って行った。


「なんだこれは...!?」
街の中心の広場にたどり着き、その光景を目にした瞬間、護と井上は凍りついた。

逃げ惑う町人達...20匹以上はいるであろうゴブリンが街を破壊し、逃げ遅れた人を食べている...それを救おうと戦う王国軍と思わしき集団...
その余りの悲惨な光景に井上はヨロヨロと数歩進み、ガクリと膝をついた。
「嘘よ...ゴブリンなんて...そんなの世界にいるはずが...」
「井上!!落ち着け!ここは異世界だぞ!!」
護はそう言って井上を正気に戻す。
「すいません隊長...」
「いいんだ別に、俺も覚悟してなかったらそうなってた」
そう言って護は無線機を手に取り、高機動車の中にいる倉田と村上に連絡をとった。
「こちら日向、こちら日向、倉田聞こえるか?オクレ!!」



ー倉田.村上sideー
「しっかし、平和だね~」
「本当にな~」
護と井上が偵察に行ってる間、倉田と村上はのんきにくだらない話ばかりしていた。
「村上、隊長...井上の気持ち気づいてんのかなぁ...」
「そりゃないだろ。なんせ唐変木が服着て歩いてるって言われてるほどの人だぞ?気づいてても、せいぜいあれを尊敬の念としか受け取ってないんじゃねぇの?」
我らが隊長、日向 護は陰では唐変木と呼ばれている。どんなに井上やその他の女子が熱烈なアプローチをしても、それを自分を面白がり、からかっているとしか受け取らないのである。バレンタインデーなる行事の日も、せっかく井上が手作りチョコを作ってきたというのに、みんなで食べよう。と言う始末である。そして、何も知らない他の隊員達は、蓋を開けてからそれが、井上が護へ作った本命チョコだと気づき、場の空気がかなり気まずくなった。チョコをあげた井上本人はショックで2日寝込んでしまった...
「俺あの時、隊長のことブン殴ってやろうかと思った。はぁ~...本命チョコなんか見せびらかしやがって...」
「ハハハハ...」
それを聞いて、倉田が乾いた笑いをあげる。決して悪気はなく、むしろ自分達のことを第一に考えてくれているのはわかるのだが...素の性格があれでは...なんとも可哀想な隊長である。
『ガガッッ...こちら日向、こちら日向、倉田聞こえるか?オクレ!...ザザザッ..』
「うぁっ!!隊長からだ...」
今まで、無線機の向こうにいる人物の話で盛り上がっていたので、いきなりの本人登場で、二人は少し焦る。
「こちら倉田、こちら倉田、隊長よく聞こえます。オクレ!」
『ザザッ...非常事態だ!!ゴブリンと思わしき生物の集団が街を急襲した。これから撤退する。すぐにここから離脱できるように準備をしてくれ!後、奴らが追いかけてきた時のために援護射撃の用意を!!以上、オクレ!ザザ...』
それを聞いて二人の顔色が変わった。
「こちら倉田、了解しました。撤退と敵の迎撃準備を開始します。オクレ!」
『よろしく頼む。通信は開いたままにしておいてくれ。』
「了解しました。」
護との通信を終えた後、二人は顔を見合わせ...二人同時にそれぞれの役割をこなし始めた。


一通り準備が終わったところで、護からもう一度通信がはいった。
『ガガガッこちら日向、こちら日向、計画変更だ、今から作戦を伝える...作戦は...
その作戦と周りの状況を聞き、村上は小さく呟いた。
「おいおい...こりゃあ失敗出来ねぇじゃん...」
二人の顔は、失敗出来ないことからの緊張と、それをはるかに上回るやる気で満ちていた...



時を少しさかのぼり...

ー日向 護sideー
「隊長...」
「どうした?」
突然、井上が護に話しかけてきた。そして、護にこう提案した。
「あの人たち、助けましょうっ!!」
「はぁっ!!!???」
「そうしないと、あの人たちが死んじゃいます!!!」
「.........」
井上の言う通りである。先ほどからの状況を見ている限り、王国軍の全滅はもはや確定的になっていた。しかし...
「......ダメだ...」
護は静かに言い放った。
「!!??どうしてですか!!!??」
「俺たちはなんだッ?自衛隊だろ!!命令もされてないのに、国民でもない人たちの為に大事な仲間を危険にさらせないんだよ!!!」
そう言って護はかたく目を閉じた。その様子を見て、井上は全てを悟った。口ではそんなことを言っているが、護も、あの人たちを助けたくてたまらないのだ。しかし、護は決心出来ないでいるのだ。この状況で、自分の命を賭ける覚悟を、大切な仲間の命を賭ける覚悟を...その時、護の手が、温かいものに包まれた。見ると、井上が、護の手を優しく握っていた。
「大丈夫ですよ!隊長!私にも夢があるんで、それを叶えるまで死ねません。それに、たとえどこの国だとしても、市民を...平和を守るために戦ってなんぼの自衛隊でしょ?隊長...私を信じて下さい」
その言葉で護の覚悟は決まった。
「わかった...その言葉を信じる。こうなりゃやるだけやってやる!!!井上!!死ぬなよ!!??」
「了解!!」
「これより、一般市民の救助に向かう!!」
そして、護達は背中に背負っていた36式小銃を構えた。この36式小銃は、従来までの日本の小銃と異なり、弾を入れたマガジンが銃の下部ではなく、上部についている。そして、そのマガジンは、まるでひたすら長い「ようかん」のような形をしている。何より決定的に違うのは、弾が、発射される方向から直角になるようにマガジンに入っている。これにより、1個のマガジンで60発という大量の弾丸を相手に打ち込めるのだ。
「いいか?狙いはゴブリンだ!!目標を全て殲滅せよ。」
「了解!!」
「弾込め!!」
「よし!!」
「装填!!」
「よし!!」
「安全装置解除!!」
「安全装置解除よし!!」
この瞬間、二人の持っている小銃は、ありえないほど凶暴で凶悪な殺人兵器となった。
「前進!!」
その声と共に二人は王国軍と市民をかばうようにゴブリンの前に立った。遠くから様子を見ていた人たちが、口々に怒鳴る。
「おいっ!!!何してる!!お前達まで死ぬぞ!!」
「早く逃げて!!!」
そして、皆が思った。次の瞬間、この勇敢な二人は、ゴブリン達に蹂躙されるだろうと...しかし...
「正当防衛射撃!!!!!!!」
ババババババババババッッ!!
その声と共に響いた凄まじい破裂音に皆が驚き、目をつぶった。そのあとの嘘のような静けさに目を開けた人々はその光景を驚愕と共に見つめることとなる...
「.........へ?......」
そう呟くのがやっとだった。
なぜなら、あんなにも凶暴なゴブリン達が、たった二人の少年と少女の前に死体の山として積み上がっていたからである...
なんとも奇妙な模様の入った、緑の服を着た二人の前に...

           To be continued ...
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