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第138話 アルの試練

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「・・・・・・・・・っ」
息が漏れてしまい、恥ずかしくてアルは顔を赤くする。
人に胸を吸われまくっているのは、すごく恥ずかしいし、胸が痛い。


どーして、こういうことになったのか??

最初アルは確かにエルフの赤ん坊に、ミルクを上げていた。
いや、子供に母乳を上げていたはずなのに、なぜか途中から大人のエルフにも母乳をあげるようになってしまった。
なぜに?

アルの目の前で胸を吸っている男エルフの鼻から、鼻血が流れ出している。

「あの、大丈夫ですか?」
 心配になったアルが聞くと、エルフは目を輝かせ、アルに抱き着きながら、口づけてきた。
アルが抵抗する間もなく、そのエルフは他のエルフに頭を殴られ、他の複数のエルフに引きずられていった。

「あ、え?」
アルが呆気に取られていると、複数の女性のエルフが、アルの目の前にやってくる。

「ごめんね、内のエルフがとんでもないことをしちまって。ありがとう。あなたがいてくれるおかげで、子供に乳を上げることができた。ここいら、食べ物が少なくてさ、乳がだせないんだよ」
「そうそう。乳しぼり出そうとマッサージするんだけんどさ、胸痛くって」
綺麗なエルフ女性が、髪を後ろに手で流す。

モデルみたいだなと、アルはぼうっと、その光景をみる。
エルフの容貌を神秘的で、まるで妖精のように綺麗だ。

ジルはエルフの中でも一際美しい容貌をしていることに、アルは気づく。だから、ジルは肉親にも狙われたのだろうかと、アルは悲しく思う。
いや、違う。なぜかこの世界では醜いものほど、美しく見えるんだっけなと、アルは思い出した。

「時々ほかのエルフどもは簡単に胸から乳がでるって勘違いしているんだけど、乳が出るのも大変だし、子供に乳やるの、けっこう痛いときもあるんだよ。
本当に助かるよ、あんた名前は?私はエアルドってんだよ。よろしくね?」

エアルドさんはにっこり笑い、アルの頬に触れる。

「い、いえ、私はあるといいます」
アルは照れて、顔を赤くする。

「あ、そうだ。私らにもあなたの乳貰える?お腹すいちまってさ。あんたのお乳おいしいんだって聞いたよ」

頬を赤くした女性エルフがそういう。

アルは硬直した。

アルが試練を迎えた。

「ゼノム、エルフの森を復活させたいんですよね?」
ジルは目を閉じているゼノムに話しかける。

「ああ、もちろんだ」

「ここにいるエルフの皆に、まずは話があります。なるべく多くのエルフに集まっていただきたいのですが」

「分かった。まずは、エルフの村長に話してからだ。それまで余計なことをするな、いいな?」
ゼノムの言葉に、頷く。

その時エルフの悲鳴が上がり、ジル達が駆け付けると、大人エルフに乳を上げていたアルが倒れていた。

「大丈夫ですか?」
ジルはアルを抱き上げる。

「お、お腹減りました」
物悲しそうな顔で、アルは呟く。
ジルはため息をついて、「ご飯にしましょう」といった。
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