記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

法と正義のシルベリア編 完結 短い。

ロゼット姫が言うには、王は別にこの法庁自体を滅ぼすつもりはないらしい。ロゼットを暗殺しようとしたのは、軍部の人間らしいと、アルは聞いた。
ヴェルディは邪魔なので、殺そうとしていたらしいが。

アルたちはそして無罪放免だといわれ、こうして釈放された。
ロゼット姫も一緒に来るかと誘ったが、微笑んで首を横に振って断った。ロゼット姫の側に、翼が生えた黄金のライオンがやってきた。
黄金のライオンは、「俺はヴェルディだ。アル、結婚してくれ。答えはイエスだな。うむ。わかった。俺の法律に俺の求婚を断ることは書かれていない。なんでかライオンの姿になってしまったが、俺はアルのことを愛している」
そう一方的な求婚をしてきて、アルは苦笑いをするしかなかった。

　ロゼットは最後に「ありがとうございます、アル様。私はここに残り、この法庁を立て直していきます」そう言って、アルたちに頭を下げた。周りの人間は高い身分であるロゼットが頭をさげたことに、慌てていた。

アルは牢屋に入れられていた皆と一緒に、家路についた。すっかり焼け焦げていた家だが、簡易な仮設の家が建っていた。
その家から出てきたレオンは、釈放された父親のジャファールさんを見た瞬間、なきながらジャファールに抱き着いた。
それを見ていたアルも涙ぐんだ。

エルフのジルが気難しい顔でアルを見て、「ソニアが待っています」とそういうので、慌ててアルはそちらに駆け付けた。

ソニアは傷だらけで、包帯を巻いた姿で布団の上に寝かされていた。随分長い間目覚めていないらしい。
ソニアは子供たちを救うため、かなりの無茶をして大けがをして寝たきりになってしまったらしい。
子供たちは皆無事で、ジルの家に隠れているらしい。
「この辺りは軍の連中がうろうろしていますから。ソニアもそうしたかったんですが、意識があるときこの家をあなたたちを守ると言ってきかないのだから」
そうジルがいった。

アルはそっとソニアの頬に触れていった。
「ただいま、ソニアさん」

ルナルは一時期正気にもどり、ソニアやジルに力を貸してくれたらしい。ルナルも今はジルの家にいるらしい。

アルは寝ているソニアに抱き着き、やっと帰ってこれたと、涙ぐんだ。



誰もいない牢獄。
ぼんやりクロウは一人座禅を組んでいた。
そこに外から狼の獣人が囁いた。
『狼獣人にも人間に手を貸す裏切り者がいる。放っておいていいのか？』
悪意のある声。
『このまま醜悪な人間をほうっておいていいのか？』

「……」
クロウは無言である。
脳裏にはあの人間の姿がある。

『邪悪な人間と悪意がある人間を選別するがいい。そうすれば、お前は救世主。神もほめるだろう』
そう悪意ある声はいい、牢屋の鍵が一人でに開いた。
だからクロウは思った。
そうだ。邪悪な人間を殺せばいい。
クロウは牢の外へ出た。
邪悪な人間を殺すために。