上 下
103 / 171

第83話 魔法のことと、月夜の出来事

しおりを挟む
「まぁ、魔力がなければ魔法も使えないんですけどね」
ジルはそうつけくわえる。

「あの魔力って何でしょうか?」
恐る恐るアルは手を上げて、質問する。

「魔力とはですか?……ふむ。なかなか難しい質問ですね。そういう体の器官があると聞いたことがあります。この世界に満ちているエネルギーである魔力を感知し、呼吸と一緒に取り込み、自分の中にもともとあるエネルギーで感応して、願い、魔法を発動するのだと聞いたことがあります。
まぁ、この世界の住人でもなさそうな、あなたには魔力を感知はできないかもしれませんね」

「そんな」
地味にショックである。ソニアたちの助けになりたいのに。この世界の住人でもないアルは魔法を使えないかもしれない。

がっくり肩を落とすアル。

「まぁ、いつかあなたも魔法を使えることができるかもしれませんね。生物は進化してきたものですから。低俗なあなたにもいつか魔法がつかえるやもしれませんね」

「低俗って、ひどいです。ジルさん」
「あなたの顔は歩くわいせつ物です」
「顔で人を判断しないでください。顔と性格は別に関係ない。……それに、そう感じるのは、ジルさんがそう思っているからなんじゃ?」
言ってて恥ずかしくなって、アルはジルから顔をそらす。

その言葉に、ジルは目を見開く。

「あなたは」
何か言おうとして、ジルは青白い顔をして崩れ落ちて、膝をつく。

「だ、大丈夫ですか!?」
慌ててジルの側により、アルはジルの肩に手を置いて、顔を覗き込もうとする。
ジルは苦悶の表情を浮かべて、汗をかいていた。

ジルは震える手で、肩にあるアルの手を振り払う。

「触るな!汚らわしい」
ジルは叫んでから、はっと、我に返り、「失礼します。今日はどうかしていました。もう魔法のことは教えたので、私は帰ります」
そう言い終えると、ジルは速攻でその場から離れて消えた。

アルはただ茫然としていた。

ジルと仲良くしたいのになと、アルは落ち込む。遠くの方から赤ん坊の泣き声がしている。スノーリーが赤ん坊を見ているのだろう。
スノーリーは疲れているから、お茶やマッサージでもどうだろうかと、考える。
寝る前に水を飲むといいということで、アルたちは子供や大人全員に安眠できるような、お茶を出している。今日はクワイエットさんが、お茶係だ。

アルはルナルのおむつというか布を巻いた下着を変えなければと、アルはルナルの元へと向かった。

アルがルナルのいる部屋につくと、なんとルナルはその日初めて独り言を誰もいない空間に呟くこともなく、月を見ていた。

「る、ルナルさん!?」
まさか正気にもどったのかと、アルは興奮する。

ルナルは不思議な瞳で輝く目で、アルのことを見る。

「もうすぐ裁定が始まる。女神がやってくるだろう」
そんなことをルナルはつぶやくと、また月を眺め始めた。
「ルナルさん?」
恐る恐るルナルの肩を手に置き、顔を覗き込むと、ルナルはやはりいつもの調子で、ぶつぶつ呟くだけだった。

ルナルは以前アルを殺しかけたことがある。アルは警戒しながら、ルナルの手を縛り上げて、下半身の布を取り始めた。
手早く下半身をお湯で拭く。
まったくルナルは自分で処理をしていないのか、そこは反応してしまっている。とても嫌だが、別にアルに対して反応しているわけでもないだろう。我慢してとっととアルはそこを処理をすることにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

異世界の美醜と私の認識について

佐藤 ちな
恋愛
 ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。  そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。  そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。  不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!  美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。 * 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

忌み子王子とワガママ姫

朝比奈
恋愛
美醜逆転ものの短編です

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!

杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!! ※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。 ※タイトル変更しました。3/31

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...