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第45話  夜は終わらない

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その夜子供の泣き声で、アルは目が覚めた。

子供が急変するかもしれないと、ハウナと交代で寝ている。ハウナは起きている番だったが、寝てしまっている。疲れているんだろうと、アルはため息をついて起きた。

玄関の方から子供の泣き声がする。
恐る恐るアルは、子供の泣き声の方へと向かう。
ホラーは苦手だ。暗い中、脳裏にソルやシルカやライみんなの顔が思い浮かべながら、薄暗い廊下を通り抜ける。

そしてたどり着いた玄関先には、泣いているシズクの姿があった。
シズクちゃんはアルの子供預かりで、たまに預かっている黒猫獣人の女の子だ。
シズクちゃんの家は母子家庭で、お母さんのクワイエットさんは水商売しているということだったが。
どうしてこんな夜遅くにこんなおさない子が一人で?

慌ててアルはシズクの元へと駆け寄る。
「ど、どうしたの?シズクちゃん」
「お母さんを助けて」
そう言ってシズクは泣いている。

クワイエットさんに何かあったのでは?
アルは上着を着て念のため仮面をかぶり、短剣とジルさん特性ファンタジー紙をポケットに入れて、外に飛び出した。

夜の道は本当に真っ暗で、心臓がどきどきする。あまりにも慌てていたので、シズクちゃんもつれてきてしまった。
シズクちゃんは家に置いてきた方がよかったのでは?と思うが、シズクちゃんを抱っこし、アルはひたすら、鈴クちゃんに家の方向を聞きながら、以前クワイエットさんに聞いた家の住所を思い出して、急いだ。

岩を積み上げてできた家がみえた。木でできた玄関を開けて、アルは中に押し入る。
「クワイエットさん!!どこですか!!」
必死でクワイエットの姿を探す。アルが抱っこしているシズクが、「あそこ」と指さす。

シズクが指さす部屋に行くと、そこには手首を切った状態のクワイエットさんがいた。手首から血が大量に出ている。
アルは頭が真っ白になった。
このままではクワイエットさんが死んでしまう。
とにかく止血をしなければと、クワイエットの腕に、落ちていた服の布や布切れで、縛り上げる。
ジルさんに連絡する用の護符をもらっていたのを忘れていた。その護符は紙一枚で遠くまで声を届けることができる。

今から取りに行くのも間に合わないかもしれない。布で縛り上げて何とか止血しているが、流れ出している血の量が多い。
火で傷口を焼いて止血する方法も聞いたことがあるが、実際素人であるアルがやると危険だ。
確か豚しゃぶとか作るときに氷水に入れると、肉が引き締まると聞いた。冷やすと血管も肉だから引き締まるかもしれないと、アルは慌てて台所から氷を持ってきて、クワイエットの腕におく。

「あれ?アル先生何しているの?」
ぱちっと、クワイエットは目を覚ましてアルの方を見た。アルは力が抜けて、その場にへたり込んだ。
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