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第22話 少人数子供預かり所(宿泊付き)

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皆で夕飯を囲む。
「おいしい!アルさんは美人なだけじゃなくて、料理もうまいのねぇ。うふ」
クワイエットさんはアルにウィンクする。
「ありがとうございます。お口あってよかったです。シズクちゃん今日はうちで元気にしていましたよ。シルカちゃんと仲良くやっているようでよかったです。ね、シズクちゃん」
アルはもぐもぐ元気に食べているシズクちゃんの頭をなでる。すると、シズクちゃんは「う」といって、こっくり頷いてくれた。
嬉しい。
「シズク、アルさんの作るおやつおいしいって、いつも家で話すの。ここ子供よく見てくれてるし、ご飯もおいしいから、最近競争率高くて予約とれないし、もう少しこういうとこが増えてくれると助かるわよね」
クワイエットさんはシズクちゃんの頭をなでた。シズクちゃんはもじもじ嬉しそうだ。
「ここから家帰るまで暗い夜道歩かなきゃいけないし、ここに泊まっていきたいなぁー」
クワイエットさんは天井を見上げてのんびりする。
この家は暖かい感じがにじみ出ている。
「いいですよ」
「え」
あっさりいうアルに、クワイエットは呆気にとられた。
「先着順になるんですけど、一部屋空いています。何かあった時は部屋に呪符が貼ってあるので、安全ですし、部屋にトイレもついています」
ジルさんが貼ってくれた結界の呪符は、よこしまなもの邪念があるものはこの家には入れない。
預かりをするようになってから、大人が色々な事情で帰りが遅くなって大変な時に寝泊まり専用の部屋を仕方なく作っていた。
この少人数預り所にくるのはマフィアらしき人が多いので、なぜか怪我をおった親が子供を迎えに来たとか何度かある。

「それでいいのなら」
「うん!それでいい!!助かる」
クワイエットさんはアルの両手を握って喜んでくれたのだった。

皆で歯を磨き体をふいて、皆それぞれの寝床へと向かった。カラフルな絨毯を敷き詰めたアルたちの寝床へとアルは横たわるが、体がかゆくてぼりぼりかく。
「ダニ根絶させるジルさんのお札もらいにいかなくちゃ」
ジルにもらったダニ根絶の呪符は使いすぎて、もうボロボロだ。黒獣人の人は毛並みがかゆくなると、皆アルのもとへやってくる。アルは美容院じみたことをやってしまう。

「アル、お前、働きすぎだ」
ソニアさんがライをあやしながら言う。
最近はライもソニアに引っ付きに行って、ソルと本気喧嘩になっている。
「ソニアさんも働きまくっているじゃないですか」
ソニアはひっきりなしに街へと買い物と仕事へと行く。
「そうか?」
「そうです」
顔を見合わせると、笑い合う。
「何かあったら俺も手伝うから、大変な時はすぐに俺を呼べ」
「ソニアさんこそ私を大変な時によんでくださいよ。私弱いですけど、森に行くの諦めていないですから」
「今度休みの日に戦闘訓練でもするか。ソルはお前たちを守るために強くなると言っていたぞ。厳しい訓練も半べそで耐えている」
「そうですか……」
いまだにソルはシルカやライの食べ物をとろうとするが、なんか大人になっていっているのかと、アルはなんかじーんっと、感慨深い気持ちになる。

「お前のおかげだな。ソルもシルカもライも強くなろうとしている」
「ソニアさんのおかげでもあると思いますよ。私ももう誘拐されないように、強くなりたいです」
「そうか」
「はい」
「俺も強くなる。もうお前たちを泣かさない」
静かな口調に、強いソニアの決意を感じた。

優しい狼さんだ。鋭く瞳に鋭い牙に怖そうな顔つきのハンサムなのに、心はこんなにも温かい。アルはソニアのそんな優しいところに癒されていた。

「おやすみ、なさい。ソニアさん」
「おやすみ、アル」

アルはゆっくり瞳を閉じた。
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