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しおりを挟む「何をしているんですか?」
白崎が不思議そうに、一歩一歩こちらに近づいてくる。
黒星としては、パニックである。
ベッドの下ではまだ、桜田と黒星は結合している状態である。
桜田もパニックなのか、硬直してしまっている。黒星は慌てて、桜田の体を肘でつついたり、体を放そうと身じろぎする。桜田はくぐもった声をあげた。
「く、来るな!!来るなよぉ」
黒星は恐怖で、泣き出してしまった。自分が情けない。子供のように本気で泣く。涙が勝手にあふれ出て、止まらない。
「ごめん!」
次の瞬間、黒星は白崎に抱きしめられて、口づけられた。
「お、俺もゲイですぅうう!!泣かないでくださいぃいい」
そう叫んだ白崎にもう一度抱きしめられる、黒星。
いや、そこで口づけいる?
呆気に取られている桜田と黒星。
そしてなぜか白崎は、一気にベッドの布団をめくりあげ黒星と桜田の姿をあらわにする。
そして白崎は取り出した携帯電話(スマフォ)を、黒星と桜田に向けると写メをとり、そのまま白崎は走って逃げていった。
『おい、まてぇえええええええ!!!』
黒星と桜田は叫び声をあげるが、もちろん白崎には届かない。
「ふざけんなよ」
うなだれる桜田の声が、むなしく保健室に響いた。
白崎のサイドの話。
女と男が恋人になって、結婚するんだよ。
白崎は子供のころから、そう聞いて育った。
じゃぁ、男しか好きになれない白崎はずっと、一人ぼっちなんだろうか?そんな思いが心の中でくすぶっている。
高校一年のころ、白崎は吹奏楽部の男の先輩を好きになった。自分の心の中でも名前を言えないほどの、隠したい想い。
告白なんて、そもそもするつもりなんてなかった。
けれども、先輩が優しくて、あまりにも好きになってしまい、つい白崎は言ってしまったのだ。自分の想いを。
家庭でも一人ぼっちの白崎は、先輩への想いにすがりついてしまった。
そして、先輩は白崎を軽蔑したまなざしを向け、避けるようになってしまった。
好きでもない人間に告白されたら、気持ち悪いだろうなと、白崎にもわかっている。
学校中に白崎が同性愛者だと噂が広がってしまっていた。
白崎の家は名家だ。外聞が悪いことを嫌う。
白崎の両親は駆け落ちだ。母親が子供を産んだ後、父親は逃げた。母親は水商売をしながら白崎を育てた。
ところが白崎が九つのころ、母親は麻薬で警察に逮捕され、白崎は母親の実家の華道の名家に引き取られた。
白崎は実家から監視され、いつも素行調査をされている。
白崎の素行はすぐに実家の両親に知らされた。
そもそも白崎は、従弟の兄の白水と違って成績も悪くて、家族にはあまり口をきいてもらえる立場でもない。
同性愛者であることなんて知られたら、想像を絶する。
白崎の予想通り、家族に同性愛だとバレた白崎は、高校を卒業したら家を出て、遠縁の養子にはいることを告げられた。
白崎への学校でのいじめもどんどんひどくなった。
ある時白崎の机の上に、倒れた花瓶と花が散乱していた。クラスの皆が白崎のほうをみて、笑っていた。
ぼんやりこれからのことを考えていると、クラスでも評判が悪い黒星が、なぜか白崎に口づけてきた。
「・・へ?」
呆気にとられる白崎の時が止まった。
「・・・・・・・え」
衝撃で白崎の周囲の景色がモノクロームから、色鮮やかに変化する。
王子様のキスで目覚めるというけれど、本当にそんな感じだった。
いや、あの黒星が、白崎にキスしたのは、何らかの嫌がらせだというのはわかっていたが、初めてのキスに、白崎のなにかが動き出して、脈動混乱していたのだった。
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