ある勘違い女の末路

Helena

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メーガンの独白

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【胸糞注意です!】





気持ちいいのが大好き。



ただそれだけだったのに、何がいけなかったのかしら……。
何もない、ただ据え置きのベッドだけが置かれた部屋でわたしはこれまでの人生をはじめて振り返った。

子どもの頃から、可愛いおもちゃや甘くて美味しいお菓子、欲しいとねだれば買ってくれた色とりどりのドレス、そして使用人からの褒め言葉などなど、それらを与えられるとわたしは気持ちよくなれた。ほわって心が浮き上がるようなうっとりする気分。そんな気分になりたくてそれらを求め続けた。
お父様もお母様もそれはいいことねといってくれた。
「メーガンは可愛いんだからそれでいいわ」って。

女学校の先生やクラスメイトたちは、マナーがどうこう、淑女のたしなみがどうとか……いうけれど、そんなの正直誰も気にしなくない? 少なくても周りの男の人たちはみんな「メーガンはそのままでいいよ」って言ってくれていたから問題ないと思ってた。だって胸元の大きく開いたドレスや項をみえる大人っぽい髪型の方がみんなちやほやしてくれるんだもの。


※※※


「もっと気持ちいいこと、してみましょうね」


そういったのはお母様だった。

貴族女学校に入学する数年前、わたしはお母様に連れられて、都の郊外にあるとあるお屋敷に出かけた。そこはお金持ちの伯爵様が住んでいる豪華な建物だった。


「ここで伯爵様がメーガンに気持ちいいことを教えてくれるわ」


お母様はそう言ってわたしをお屋敷の使用人に引き渡すとひとりで帰ってしまった。


「メーガンがちゃんと気持ちいいことを覚えたら迎えに来るわ! 伯爵様の言う通りになさいな」


わたしは心細かったけど、気持ちいいことができるならとそこにいることにした。


「君がメーガンだね?」


エントランス中央の階段から降りてきたのは、お父様よりも少し年上くらいの中年の男の人だった。細身の身体に着崩した衣装をまとい、ゆっくりと近づいてくる。その人が伯爵様でわたしを見る目がひどくギラギラして怖かったのを今でも覚えている。


わたしはそのお屋敷ですごく気持ちいこと教えてもらった。気持ちだけでなくて身体が気持ちいいってことを。はじめは怖いし気持ち悪かったけど、だんだん気持ちよくなちゃって、もうそれそれなしではいられなくなちゃったの。ひと月後、お母様が迎えにきてくれたときには、ちょっと帰りたくなかったくらい。でも伯爵様は初めての子だけが好きだから、初めてではなくなったわたしはもう卒業なんですって。

自宅に戻ってからもあの気持ちよさがほしくて、

「どうしたら男の人に気持ちよくしてもらえるのかしら?」

とお母様に聞いてみたら

「まあ、しっかり仕込んでもらったのね!」

と喜んで、肌のたくさん見えるドレスやすてきな香水、可愛いアクセサリーも買ってもらった。お酒の味も覚えた。飲むと身体がホカホカして気分がよくなるのですごく好きになった。あとは「わたしを気持ちよくしてほしい」って気持ちを込めて男の人の目をみるだけよとお母様が教えてくれた。

手始めにアクセサリーを売りに来る出入りの店の男の人を誘ってみたら、すぐに乗ってくれた。でも伯爵様のところで味わったほどではなかったから、家庭教師の先生や屋敷の下男、庭師とか身近な男の人をみんな誘ってみたの。みんなやり方がそれぞれ少し違っているし、気持ちの良さもバラバラで、わたしはもっともっと気持ちよくなりたいという思いが強くなっていいたの。

しばらくして貴族女学校に入学することになったけれど、ここはとにかく退屈だった。女の子しかいないし、数少ない男性教師はみんなおじいちゃんばかりで、わたしがいつもの誘う目をしても怪訝な顔をされるだけで気持ちいいことが全然はかどらなかった。

でも社交界に出るようになって、それも一変したわ! そこにはわたしと同じように気持いいことをしたい男の人がいっぱいいたの。わたしに集まる視線も、褒め言葉も気持ちよくて、いろんな男の人とたくさん気持ちいいことをしたの。お母様も「まあ、メーガンはモテるのねえ」ってほめてくれてうれしかった。

でもしばらくすると気が付いたの。おじいちゃんでもないのにわたしの誘いに乗らない人がいるということを。若くてハンサムな人が多かったからちょっとショックだったわ。

なかでも女学校のクラスメイトであった伯爵家のアンをエスコートして夜会に出ていたウィリアム様はすごくすてきで、この人と気持ちいいことを絶対にしたいと思ったから、一生懸命アプローチしたけれど、いつも横にいるアンの警戒が厳しくてなかなかうまくいかなかくて悔しかった。

お母様に相談したらもっと素敵な人がいるわよとヴァロア王国のシャルル王子の話をしてくれた。
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