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ガーデンパーティの裏で
しおりを挟むわたしはあまりのことに言葉失った。あのガーデンパーティで事件が起こったとき、わたしたちはシャルル殿下に挨拶をする直前だった。だんだん大きくなるメーガンの声に顔面蒼白となって立ち尽くしていた姿を思い出す。
「あの子爵令嬢は薬を使ってシャルル殿下の意思や尊厳を踏みにじり、自分に都合のいい妄想を確信に変えていったのですね。ほんとうに醜い行為だ。」
ウィリアムは語気を強めてメーガンを睨む。
そう、ウィリアムもわたしと一緒にあの時のシャルル殿下を目撃している。殿下は婚約者に浮気がバレて顔色を変えていたんじゃない。あれはあの女への恐怖がそうさせたんだ。あのメーガンの卑劣な行為に殿下は深く傷ついていたたに違いない。
傍聴人たちもこぞって非難の視線をメーガンに送っている。
被告席のメーガンは驚いた顔をしている。まるで「そんなことはしていない、ひどい言いがかりをつけられた!」と言いわんばかりに涙に潤んだ目を見開いてウィリアムを見つめている。まったくどこまで厚顔無恥なのだろう。
「ドープレさん、あのガーデンパーティの日の出来事を順を追って話してください」
尋問は一気に核心へ向かう。
メーガンの顔芸を薄ら笑いを浮かべてみていたドープレは真顔に戻るとうなずく。
「あのアバズレ令嬢は、最初に事を成就したあとは王子の寝室に匿われていました。王子側としては、とんでもない弱味を握られてしまいましたからね。王子自身はもちろん、お国から付いてきた側近たちも、下手に警備に突き出すこともできずにいたのです。あの女がそもそもどこの誰なのかも、正確なところはわからなかったでしょう。実際、そういった接待用に送り込まれた遊女のたぐいとも思われていたようです」
ドープレは一旦言葉を切った。ウィリアムの質問以上のことをご丁寧に説明してくるあたり、ほんとうにメーガンを嫌悪しているようだ。メーガン一家のの片棒を担いでいたくせになんてひねくれているんだろう……。
「あの日、王子はあの女にはパーティがあることを言わずに寝室に閉じ込めて、パーティに出席したのです。でもそれなりの規模のパーティです。会場設営の物音やら、使用人たちの話し声でついに気づかれてしまった。あの女は王子が自分の言いなりになるのは薬のおかげなのに、追い出されずに匿われたことで自分が恋人として認められたとでも思ったのでしょう。下品なドレスの着付けをするよう命じられたときは、あきれましたよ。脳内お花畑だとね。そして見張りを振り切って外に飛び出したんです。」
「見張りを振り切ったとは?」
「金切声で叫んで見張りを一瞬怯ませて、その隙に走って逃げたんです。あの声はちょっとした凶器ですから。もちろん私が加勢したから逃げ切れたんですけどね」
「彼女の存在が露見してあなたはよかったんですか?」
「はい、あの女がここで自爆すればこの茶番を終われると思いました。だからもう積極的にね、手伝いました」
「つまり、あなたはこの卑劣な企みに加担しながら失敗することを願っていたということですか? 自分も逮捕されて構わないと?」
「その通りです」
ウィリアムの問いにドープレは今日一番の笑顔で答えた。
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