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第23話 ギルドへの報告、そしてとある剣豪との出会い

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「いらっしゃいませ……あ、ロイルさん。どうでした、調査の感じは?」

 そして、ギルドに帰還すると。
 俺は受付嬢にそう言って迎えられつつ、クラーケンに関する調査依頼の報告をすることになった。

「クラーケン、確かにいましたよ。これです。森にゲリラ特殊空間ができてましたね」

 俺はそう答えつつ、魔法袋からクラーケンの頭を覗かせた。

「ゲリラ特殊空間……まさか、そんなものが出現していたとは……。って、『これです』て何サラッと言ってるんですか!」

「なんかちょうど出現したんで、持って帰りましたよ。ちなみにですが、泉の女神に願いは叶えてもらったので、もうゲリラ特殊空間は消えてます」

 クラーケンの頭を見た受付嬢が、途端に青ざめて素っ頓狂な声をあげる中……俺は、今回起こったことをざっくりと説明した。

「ま、まあ、ロイルさんなら見つけたらついでに狩ってきますよね。ところで……ゲリラ特殊空間は、どこと繋がってましたか?」

 落ち着きを取り戻した受付嬢は、次はそんなことを聞いてくる。

「海でしたね」

「そうですか。でしたら……一応、証拠として金と銀の斧を見せてはいただけませんか?」

「あ……」

 そして、受付嬢に泉の女神との交渉の証拠を求められ。
 俺は、言葉を濁さざるを得なくなった。
 だって……代わりにゴッドアイを受け取って、それを使ってしまった以上、金や銀の斧みたいな証拠品は持ち合わせていないからな。

「実は……裏オプションで、女神からはちょっと特殊な物を受け取ってしまったもので。そしてそれも剣の強化に使ってしまったので、もう証拠品は無いんです」

 一応俺は、クラウソラスを特殊な光魔法で照らしつつ、そう言ってみることにした。
 この光魔法は「ゴッドアイヒストリー」という、ゴッドアイの使用回数分目玉の模様を照らし出す付与術師御用達の光魔法。
 受付嬢がゴッドアイを知ってれば話は早いのだが……これを見て、分かってくれるだろうか。

「な、なるほど……。まあロイルさんがそう言うなら、信じることにします。本当はそんな手続きの進め方しちゃだめなんですが……ロイルさん、そもそもクラーケン狩ってきちゃってますからね。追加報酬が発生することに変わりはないので、今回はその計算でお支払いします」

 ……それでいいのかよ。
 一瞬つっこみたくなったが、まあ結果往来かと思うことにした。

「こちら達成報酬の十万ジャーチと追加報酬の五十万ジャーチを合わせた六十万ジャーチになります。クラーケンも換金するなら、受け取りますが……その場合は、その報酬は解体後別途お支払いしますね」

 直後、受付嬢はそう言ってカウンターに現金の山を置いたので、俺はそれを魔法袋にしまった。



 さて、じゃあクラーケンを解体してもらうために、解体施設に向かうとするか。
 そう思い、ギルドを後にしようとした時のことだった。

「おい、ちょっと待て」

 ふいに……俺は、屈強なガタイのいかにも剣豪っぽい男に呼び止められてしまった。

「お前がロイルという冒険者で、間違いないな?」

「……はい、そうですが」

 なぜこの男は俺の名前を知っているのか、と疑問に思ったが、嘘をつく理由も無いので俺はそう答えた。
 すると……。

「お前は門下生でもないのに、勝手に我が流派の使い手を名乗った。俺はそう聞いている。そのことでちょっと話がある」

 その男は急に、そんなことを言い出した。


 ◇

 男は、シサムと名乗った。
 シサムは「話は訓練場で」と言うので……俺は訓練場に移動し、話の続きを聞くことにした。

「あなたの……流派、ですか?」

 まずはとりあえず、そう遠慮がちに聞いてみる。

「ああ。お前最近、剣の流派を詐称した覚えはないか?」

 剣の流派。そんな覚えは……あっ。
 そこまで言われ、俺はとある出来事を思い出した。

 ……そういえば、俺がBランク昇格試験で『人工剣聖知能』を使った時、試験官に「八極剣の使い手か?」とか言われたよな。
 まさか、それのことだろうか。

「……もしかしてその流派とは、『八極剣』のことでしょうか?」

「そうだ。……しらばっくれるつもりは、無いみたいだな」

 どうやら、予想は正解みたいだった。

「……なぜ我が流派を名乗った?」

 そしてシサムは、そう問い詰めてきた。

「実は俺……付与術師でして。Bランク昇格試験の際、剣術試験を突破しないといけなくなって、手持ちの剣に剣技補助の付与をかけたんです。それで試験に臨んだら、その剣技補助のおかげで身体が勝手に動いて勝てたんですが……どうやら試験官が、その時の技をあなた方の『八極剣』だと勘違いしたみたいなんです」

 それに対し、俺はありのままのことを簡潔に話してみた。

「何ぃっ!?」

 だが……それが気に入らなかったのか。
 シサムはそれを聞いて、さらに眉を吊り上げてしまった。

「付与術なんかで我が流派の剣術を再現できる訳がなかろう! お前、舐めとるのか!」

 そしてシサムは、そう怒鳴り散らした。

 ……狙って再現したわけじゃないんだけどな。
 正直、俺はそう言われても困惑するより他なかった。


 とはいえ……「付与術なんか」とは、ちょっと聞き捨てならないな。
 俺は困惑すると同時に、このシサムという男に対し少しムカついた。

 ……そんな時だった。

「そんなことを言うなら、我が剣にその『剣技補助』とやらを付与してみよ。それで儂が直々に、本当にそれが我が流派と言っても差し支えないほどの物か判断する」

 シサムがそう続けたことにより……偶然にも、俺とコイツの利害が一致した。

 ……良いだろう。
 そういうことなら……『人工剣聖知能』を付与して、実際に効果を体験させてやる。

「分かりました。剣、お借りしますね」

 剣技に身体がついていけなくて怪我しても知らないぞ、とまでは続けなかった。
 そんなことを言っても、ただただ神経を逆なでするだけになってしまいそうだからな。
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