舜国仙女伝

チーズマニア

文字の大きさ
上 下
25 / 86

安慶⑦

しおりを挟む
「じゃあ、入宮は無理なの?」


あてが外れてしまい、木蓮は落胆の色を隠せなかった。

しかしこのまま引き下がるわけにはいかない。

別の方法はないかと考えていると、周瑛が何かを思いついたようだ。


「仙女様はお住まいこそ後宮になりますが、お立場は朝廷の人間になります。まだ一人も付き人がおりませんので、その娘を侍女に召されては?」

「その案採用!周瑛凄い!天才!」

「陛下のお許しがあれば、出立の際に莞莞を連れていくことも叶いましょう」


胸を撫で下ろして安堵する木蓮を、周瑛は何か言いたげな目で見ていた。

その視線に気づき、木蓮は首をかしげた。


「私、何か変なことしてる?」

「一般的には、どんなものであれ親が決めた縁談に娘は従うものです。拒絶した莞莞も、その莞莞を受け入れた貴女も、大胆なことをしたなと……そう思っただけです」

「へえ」


薄々気づいてはいたが、周瑛の言葉に木蓮ははっきりと確信した。

この世界の価値観は、男尊女卑が基本のようだ。

帰るのがいつになるかはわからなくとも、しばらくは過ごす世界である。

木蓮は挑むように言った。


「私の国では今じゃほとんど男女平等だから、莞莞を助けることこそ私の中では一般的なことだよ」

「そう睨まないでください。私は大胆だと言っただけで、別に非難はしておりません。むしろ好ましく思っておりますよ」

「えっ、そうなの?」


毒気を抜かれた木蓮は、脱力しきった、あまり賢くなさそうな緩い顔に戻った。


「私は、自分の信念をはっきり持っている仙女様のような女子おなごが好みです」


サラッと付け加えられた周瑛の一言は、あまり木蓮のハートに響かなかった。

それどころかデュフフフという木蓮の気持ち悪い笑い声の引き金になった。


「英文とはタイプ違うけど、イケメンにそんなお世辞言ってもらえるとか異世界最高かよ。いや、ありがとう。今までの人生で一番嬉しいお世辞だった」

「いえ、決してお世辞などでは……」


曲解した木蓮の誤解を解こうとした周瑛だったが、タイミング悪く木蓮の部屋の扉が叩かれた。


「仙女様、そろそろ広間へ移動しなければなりませぬ。お支度を整えるため、入ってもよろしいでしょうか?」

「はーいどうぞー!じゃあね、周瑛!また後で」


周瑛は、ピシャリと閉まった扉の外でしばらく呆然としていた。

真面目に褒めたつもりだったのに、いまいち伝わらなかったようだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...