舜国仙女伝

チーズマニア

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英文の敵①

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「お前が毒を盛られる可能性が高い理由だが……」


英文が続きを言いかけた時、嗄れた声が扉の向こうから飛んできた。


「陛下、みそぎのお時間でございます。それから、天文博士が謁見を願い出ております」

「すぐに向かうからそこで待て!続きはこの周瑛しゅうえいに聞くが良い。夕餉の時にまた会おう」


一方的にそう言い残し、英文は颯爽と部屋を出ていった。

残された周瑛は、雪香の前で片膝をつき頭を垂れた。

優美な美しさの英文とは違い、周瑛の顔立ちはあくまで精悍であり、男らしい。


「ただ今ご紹介に与りました、周瑛にございます。仙女様、どうぞお見知り置きを」

「わわ、そんな、頭下げたりしなくて結構ですから!っていうか居心地悪いからやめてください!」


周瑛を立たせようと慌てて立ち上がり走り出した瞬間、雪香は自分の足首が嫌な音を立てて、体の力が抜けるのを感じた。

床に一直線に倒れかけた雪香を、電光石火の速さで支えたのは周瑛だ。

相撲のぶつかり稽古よろしく、がっちりと両肩を押さえてもらい、雪香は転倒を免れた。


「す、すみません……」


そのまま椅子に座らせてもらい、雪香は改めて周瑛に椅子をすすめた。


「仙女様、この国であなた様に跪かなくても許されるのは、皇帝陛下、皇太后陛下、皇后陛下のお三方のみでございます」


仙女とはそんなに偉い存在だったのかと、雪香は口をぽかんと開けた。


「私が誰にも跪いて欲しくないって言ったら?」

「一度は跪づくのが慣例でございますので。気になるようでしたら、“楽になさい”か“お立ちなさい”とご下命くださいませ」

「絶対そうします」


現代社会では考えられないルールに、目眩がしそうだった。

この世界に順応出来るか早くも不安になってきた雪香だが、ふとあることを思いつく。


「あの、私は皇帝……陛下にどのように接すれば良いのでしょう?」


周瑛が自分にしたように、膝をついて仰々しい話し方をしなければいけないのか。

雪香の考えていることを察した周瑛は、柔らかく微笑んだ。


「仙女様はこの世の者にあらず、人智を超越した存在であらせられますので、例え陛下であろうと跪く必要はございません」


(なんか、敬われているっていうよりも宇宙人扱いされているみたい……)


漏れでそうになる本心をおさえ、雪香は本題に戻した。


「わかりました。じゃあ、さっきの続きをお願いいたします。なぜ私は命を狙われるのですか?」


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