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第一章【光と闇・そして崩壊】
始まり
しおりを挟む雪道を歩く三人の子供達が居た。
この子供達は氷の張った湖に穴を開けて魚を吊り上げていたが、急に吹雪いて来た為に帰る途中であった。
「くそっなんだってんだ! まだ全然釣ってねぇってのに」
「急に吹雪いちゃったもんね……しょうがないよ。今の私達じゃリスクの方が大きいもん。最近の天気は不安定だから、おとなしく引き返すのが賢明だよ」
ここ最近の悪天候続きで、まともな食料を確保するのが難しいにも関わらず、釣果の出なかった事に腹を立て、文句を言っている子の名はコチトラ。
そんなコチトラを降りつける雪を腕でガードしながら、ノイがフォローの言葉をかけている。
「コチトラ、ノイ、待ってよ~。ちょっと待って~」
そして十メートル程、二人に遅れて歩くのがヌー。
「おいヌーっ! 視界が悪いんだ、あんまり離れるなよ! 早くこーい」
コチトラは吹雪の中でも聴こえるように、大きめの声を響かせた。
そしてノイは二人を見失わないように二人の間に入って取り持っている。
「コチトラ、ノイ、聞いて! あそこに何か埋まってるんだよ~、何かな? よく見えないけど大事なものかも!」
ヌーは身振り手振りを使って方向を指さした。
「なにぃ……? こんな時に……おい、ノイ、行くぞ!」
「うん、了解っ」
三人がその、何かが埋まっているであろう場所まで来ると、確かに何かが埋まっていた。
見方によっては人間の一部に見えなくもないが────
「よし、掘り起こすぞ!」
「ええっ!? 危ないものだったらどうするんだよ~」
「あのなぁヌー、この世界に危険な物なんてねぇんだよ。なぁにファンタジー見てぇな事言ってんだ! そもそもお前がみつけたんだぜ?」
「それは……そうだけど……」
「ほら早くしろっ! ますます吹雪いてきやがった。そら、やるぞ!」
コチトラの掛け声と共に、三人は一気に埋まっていた物を掘り起こした。
掘り起こしていくうちに分かったのだが、最初の見立て通りそれは明らかに『人』だった。
「人……だよな……?」
しかしこんな状況下で埋まっていたのだ、無事である保証はない。
三人は呼吸を確かめようと、その人間を仰向けにしてみた。
すると──────
「─────ええっ!?」
「嘘……でしょ……」
「なんでこんな所に……?」
これには三人同時に驚いた。
そして顔を見合わせ、すぐに村まで運ぼうと意見が纏まった。
だが三人の体は小さく、この雪の中運ぶのには無理があった為、魚釣りの道具を運んでいたソリの中身を全て退かし、その中に人間を積み込んだ。
「あぁ……魚まで置いていくのかよぉ……」
「しょうがないでしょ? どっちが大切かなんて一目瞭然でしょ」
「ま、そりゃそうかぁ」
コチトラは惜しそうに魚を眺めていたが、直ぐに頭を切り替えソリを引き出した。
雪道でソリを引くのはコチトラの役目。周りを注意しながら、道案内をするのがノイ。そしてヌーは後ろからソリを押し援護する。
そんな感じで適度にローテーションをしながら、三人は二時間かけて村へと帰って行った。
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