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第三章【陰陽師編】
悪魔とハロウィン
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十月最後の日。
学校にて。
「なぁ恭、やろうぜ?勿論やるよな?」
久し振りに来ました、大吉特有の誘い文句。まずは主語をちゃんと言いなさい。
「やるって何をだよ?返事に困るだろーが」
「決まってんじゃねーか、今日はなんの日だよ?」
「え?十月三十一日……」
「そう!ハロウィンだぜぇ!皆で集まってコスプレパーティしよーぜ?」
おい、まだ俺が答えて無いんだけど。
「いきなり今日かよ!?」
「よし決まりだな」
おい、まだ行くとは言ってないんだけど……まぁ、毎度イベントを用意してくれる大吉には感謝してるからな。ハロウィンは初めてだけど、行ってみるか。
───。
ただ問題は……
俺は家に帰り、玄関のドアを開ける。
ガチャり。
「恭ぉぉぉぉぉ!!!」
サタコをどうするか、だよなぁ……
「帰ってくるなり、なんだよ……いぃ!?」
走って出迎えてくれたサタコの服は、『ドラキュラ』の格好をしており、既に行く準備万端だった。なんてこった……
「どうだ?恭、怖いか?恐ろしいか?」
「そんなに可愛らしいドラキュラが何処に居るんだよ」
「む、なんだと恭」
サタコの機嫌を損ねたのか、俺の腕にかぶりついてくる。
「おぃぃぃ!やめろ!それが八百歳を過ぎた奴のやる事か!」
サタコの額を手で押しのけ、何とか引き剥がす。
「うふふ、相変わらず仲良しなんですね」
奥から姿を現したのはシルシルだった。サタコにドラキュラの格好をさせたのは彼女なのだろう。シルシル自身も、際どい魔女の格好をしていて、実に目のやり場に困る。特に大きく開いたその胸……
「あでぇぇ!」
胸に視線を落とそうとしたその刹那、魔女の箒でスパーンと頭を打たれた。
くそー、見せたいのか見られたくないのか、女って奴は本当に分からねぇ!
「と、所でまさかとは思うけど、もしかしてハロウィンパーティに……」
「ええ、そうですよ!大吉さんがサタコちゃんも連れて来なよって言うものですから」
はぁ……ハロウィンパーティに本物の悪魔を連れて行く事になろうとは。人生何が起こるかわかったものじゃないな。
「恭も早く着替えろ。ほれ」
そう言って手渡されたのが、何故か衣装ではなく『トイレットペーパー』だった。
「何だよこれ?」
「知らんのか?漫画によく出てくるアレだ。『ミイラ男』。早くしろ」
「ミイラ男は分かるけど、なんでトイレットペーパーなんだよ!文字通り紙耐久なんだけどぉ!?」
「お金も時間も無かったのだ、仕方あるまい。それに、仮装パーティーに仮装しないで行くのと、トイレット男として行くの。どっちが恥ずかしいか分からないわけではあるまい。早くしろ」
そ……そうなのか?そういう物なのか。ハロウィンパーティに仮装しないとか有り得ないのか。そういう式たりならば仕方ねぇ。あと、トイレット男ってなんだよ。
──。
十分後、俺はトイレットペーパーを全身に巻き付け、二人の前に登場した。
「フハハハハッ恭ぉ!とっても似合っているぞ!ぷククッ」
「笑ってんじゃねぇよ!助けてくれよシルシル」
「と、とても素敵ですね、、ぷぷ……」
「………………」
シルシルの優しさは嬉しいが、肩が震えてるんだよなぁ……これで街を歩くのが不安になってきた。
するとピンポーンと、
家のチャイムが鳴り、ゾンビメイクの大吉が顔を出す。迎えに来てくれたのだ。
「おー、二人共スゲー可愛いな!……っとコチラはどなたですか?」
「俺だよ、佐藤恭!ミイラ男だよ、察してくれ」
「恭ぉ!?なーっはっはっはっ!完成度高ぇな!」
また笑われてしまった……しかし、顔を完全にグルグル巻にしてあるから、誰だか気づかれないのが救いだな。それに、街に出れば皆が仮装してるに違いない。景色に溶け込むのだ!お前なら出来る佐藤恭!
「よし、じゃぁ行くか!」と大吉の一声で俺達は出発した。目指すは、駅前のファミレスだ。なんでも、仮装して来店したお客様は半額になるんだとか。
──。
時は進んで。
ファミレスに着いて、俺達はそれぞれ注文を済ませていた。半額だけあって、普段より高い物や、数多くの種類を頼んだ。街中で指を指されクスクス笑われたりもしたが、普段食べれない物がたらふく食べられるんだ。何だかんだ来てよかったな。
「おい、恭食わせてやる。はい、あーん。フハハハハッ」
「やめろサタコ、俺の口はまだトイレットペーパーで巻かれたまんまなんだぞ!ってかなんか顔真っ赤だけど大丈夫かよ!?」
まだサラダとドリンクしかテーブルに来ていないのに、サタコのテンションがおかしい。顔も真っ赤でまるで……
「ちょ、ちょっと待って下さい!サタコちゃんの飲み物、オレンジジュースかと思いきや、ファジーネーブルですよ!?」
まるで酔っ払いじゃないですか……
半額フェアで店は大忙しだ。店員が間違えて持ってきたのだろう。そしてサタコさんの暴走は止まらない。サラダをフォークに刺して、俺の口元へトイレットペーパー越しにグイグイねじ込んでくるのだ。
「ちょ、ま、まってサタコさん?今外すから!トイレットペーパー外すまで待ってて!」
「何?恭ぉ、私のサラダが食べれないのか?」
カランッとフォークを落とすサタコさん。なんだ、次は何が起こるんだ……
ドキドキしながら見守っていると、サタコのオカッパが静電気で逆立ってるじゃありませんか。これは、怒っていらっしゃるのかな……
次の瞬間、サタコさんの両手には鎌が握られていた!
「おぃぃぃ待ってくれ!食べる!食べるから待てってぇ!!」
「もう遅いぞ恭ぉぉ!」
「へ?」
「もう切ったのだ。フハハハハッ!」
ジリリリリリッと鳴り響く警報音!火事でもあったのか!?一体どれ程の運を刈り取ったと言うのか!
『皆様、警報音装置が鳴りました!速やかに店外へと避難して下さい!』
慌ただしく店員が避難誘導をしている。早く外に出なくては!
俺達も慌てて出口に向かうも、運悪く列の最後尾だった。
そして回りだすスプリンクラー!!
スプリンクラーの水を浴び、俺達はびしょ濡れになってしまった。そこまではまぁいい。問題は、
「俺の服(トイレットペーパー)がぁぁぁあ!!溶けていくんだけどぉぉ!?」
まだいい、この状況。そしてそして大問題なのは、俺がトイレットペーパーを、素肌に直に巻き付けてきた事だ!
つまり。
グルグル巻き付けられたトイレットペーパーの下は。
スッポンポン!
どうしてこうなった。なぜ俺は直に巻き付けてきたのだろう。少し考えたら分かるはずだろ、佐藤恭。あぁ、そうだ。確かに浮かれていたさ。人生初のハロウィンパーティにな!
「うおおおおぉぉぉ!お前らは先に行けぇぇぇ!!」
溶けて流れ落ちていくトイレットペーパーを、無駄に手で抑えながら俺は叫んだ!
「恭ぉぉぉぉぉぉ!」
「見ちゃダメです!サタコちゃん!」
「おい!早く脱出するぞ!!」
大吉、お前は残れよ!
もうダメだ……このまま外には出られねぇ。
外では、消防車のサイレンが鳴り響いている。響く足音。気づけば数人の消防隊員が、入口に集まってきていた。このままでは、変質者として捕獲されてしまうだろう。それだけは嫌だ……そうだ!
俺は俯き、片膝を付くようにしゃがみ込み、消防隊員が突入してくるのを待った。
遂に、バーンとドアが開かれ、消防隊員が突入して来た!
「……君は、一体何を……危ないから早く避難を!」
「タ……ターミネーターです」
「そ、そうか……タ、ターミネーターのコスプレね。またマニアックな……ま、まぁその姿じゃ何だし、コレを着なさい」
隊員が差し出してくれたのは、防火マントだった。俺は「ありがとうございます」とお礼を言って、涙を拭った。
──。
消防隊員のチェックの末、火事ではなく防火装置の誤作動だったと判明した。居合わせた客には、お金が返金され、謝罪の言葉を頂くことに。
「しっかしミイラ男の正体がターミネーターだったとはなー」
大吉よ、それ以上俺を弄るんじゃないよ。
「恭、ターミネーターとはなんだ?」
「知らなくていいってば」
学校にて。
「なぁ恭、やろうぜ?勿論やるよな?」
久し振りに来ました、大吉特有の誘い文句。まずは主語をちゃんと言いなさい。
「やるって何をだよ?返事に困るだろーが」
「決まってんじゃねーか、今日はなんの日だよ?」
「え?十月三十一日……」
「そう!ハロウィンだぜぇ!皆で集まってコスプレパーティしよーぜ?」
おい、まだ俺が答えて無いんだけど。
「いきなり今日かよ!?」
「よし決まりだな」
おい、まだ行くとは言ってないんだけど……まぁ、毎度イベントを用意してくれる大吉には感謝してるからな。ハロウィンは初めてだけど、行ってみるか。
───。
ただ問題は……
俺は家に帰り、玄関のドアを開ける。
ガチャり。
「恭ぉぉぉぉぉ!!!」
サタコをどうするか、だよなぁ……
「帰ってくるなり、なんだよ……いぃ!?」
走って出迎えてくれたサタコの服は、『ドラキュラ』の格好をしており、既に行く準備万端だった。なんてこった……
「どうだ?恭、怖いか?恐ろしいか?」
「そんなに可愛らしいドラキュラが何処に居るんだよ」
「む、なんだと恭」
サタコの機嫌を損ねたのか、俺の腕にかぶりついてくる。
「おぃぃぃ!やめろ!それが八百歳を過ぎた奴のやる事か!」
サタコの額を手で押しのけ、何とか引き剥がす。
「うふふ、相変わらず仲良しなんですね」
奥から姿を現したのはシルシルだった。サタコにドラキュラの格好をさせたのは彼女なのだろう。シルシル自身も、際どい魔女の格好をしていて、実に目のやり場に困る。特に大きく開いたその胸……
「あでぇぇ!」
胸に視線を落とそうとしたその刹那、魔女の箒でスパーンと頭を打たれた。
くそー、見せたいのか見られたくないのか、女って奴は本当に分からねぇ!
「と、所でまさかとは思うけど、もしかしてハロウィンパーティに……」
「ええ、そうですよ!大吉さんがサタコちゃんも連れて来なよって言うものですから」
はぁ……ハロウィンパーティに本物の悪魔を連れて行く事になろうとは。人生何が起こるかわかったものじゃないな。
「恭も早く着替えろ。ほれ」
そう言って手渡されたのが、何故か衣装ではなく『トイレットペーパー』だった。
「何だよこれ?」
「知らんのか?漫画によく出てくるアレだ。『ミイラ男』。早くしろ」
「ミイラ男は分かるけど、なんでトイレットペーパーなんだよ!文字通り紙耐久なんだけどぉ!?」
「お金も時間も無かったのだ、仕方あるまい。それに、仮装パーティーに仮装しないで行くのと、トイレット男として行くの。どっちが恥ずかしいか分からないわけではあるまい。早くしろ」
そ……そうなのか?そういう物なのか。ハロウィンパーティに仮装しないとか有り得ないのか。そういう式たりならば仕方ねぇ。あと、トイレット男ってなんだよ。
──。
十分後、俺はトイレットペーパーを全身に巻き付け、二人の前に登場した。
「フハハハハッ恭ぉ!とっても似合っているぞ!ぷククッ」
「笑ってんじゃねぇよ!助けてくれよシルシル」
「と、とても素敵ですね、、ぷぷ……」
「………………」
シルシルの優しさは嬉しいが、肩が震えてるんだよなぁ……これで街を歩くのが不安になってきた。
するとピンポーンと、
家のチャイムが鳴り、ゾンビメイクの大吉が顔を出す。迎えに来てくれたのだ。
「おー、二人共スゲー可愛いな!……っとコチラはどなたですか?」
「俺だよ、佐藤恭!ミイラ男だよ、察してくれ」
「恭ぉ!?なーっはっはっはっ!完成度高ぇな!」
また笑われてしまった……しかし、顔を完全にグルグル巻にしてあるから、誰だか気づかれないのが救いだな。それに、街に出れば皆が仮装してるに違いない。景色に溶け込むのだ!お前なら出来る佐藤恭!
「よし、じゃぁ行くか!」と大吉の一声で俺達は出発した。目指すは、駅前のファミレスだ。なんでも、仮装して来店したお客様は半額になるんだとか。
──。
時は進んで。
ファミレスに着いて、俺達はそれぞれ注文を済ませていた。半額だけあって、普段より高い物や、数多くの種類を頼んだ。街中で指を指されクスクス笑われたりもしたが、普段食べれない物がたらふく食べられるんだ。何だかんだ来てよかったな。
「おい、恭食わせてやる。はい、あーん。フハハハハッ」
「やめろサタコ、俺の口はまだトイレットペーパーで巻かれたまんまなんだぞ!ってかなんか顔真っ赤だけど大丈夫かよ!?」
まだサラダとドリンクしかテーブルに来ていないのに、サタコのテンションがおかしい。顔も真っ赤でまるで……
「ちょ、ちょっと待って下さい!サタコちゃんの飲み物、オレンジジュースかと思いきや、ファジーネーブルですよ!?」
まるで酔っ払いじゃないですか……
半額フェアで店は大忙しだ。店員が間違えて持ってきたのだろう。そしてサタコさんの暴走は止まらない。サラダをフォークに刺して、俺の口元へトイレットペーパー越しにグイグイねじ込んでくるのだ。
「ちょ、ま、まってサタコさん?今外すから!トイレットペーパー外すまで待ってて!」
「何?恭ぉ、私のサラダが食べれないのか?」
カランッとフォークを落とすサタコさん。なんだ、次は何が起こるんだ……
ドキドキしながら見守っていると、サタコのオカッパが静電気で逆立ってるじゃありませんか。これは、怒っていらっしゃるのかな……
次の瞬間、サタコさんの両手には鎌が握られていた!
「おぃぃぃ待ってくれ!食べる!食べるから待てってぇ!!」
「もう遅いぞ恭ぉぉ!」
「へ?」
「もう切ったのだ。フハハハハッ!」
ジリリリリリッと鳴り響く警報音!火事でもあったのか!?一体どれ程の運を刈り取ったと言うのか!
『皆様、警報音装置が鳴りました!速やかに店外へと避難して下さい!』
慌ただしく店員が避難誘導をしている。早く外に出なくては!
俺達も慌てて出口に向かうも、運悪く列の最後尾だった。
そして回りだすスプリンクラー!!
スプリンクラーの水を浴び、俺達はびしょ濡れになってしまった。そこまではまぁいい。問題は、
「俺の服(トイレットペーパー)がぁぁぁあ!!溶けていくんだけどぉぉ!?」
まだいい、この状況。そしてそして大問題なのは、俺がトイレットペーパーを、素肌に直に巻き付けてきた事だ!
つまり。
グルグル巻き付けられたトイレットペーパーの下は。
スッポンポン!
どうしてこうなった。なぜ俺は直に巻き付けてきたのだろう。少し考えたら分かるはずだろ、佐藤恭。あぁ、そうだ。確かに浮かれていたさ。人生初のハロウィンパーティにな!
「うおおおおぉぉぉ!お前らは先に行けぇぇぇ!!」
溶けて流れ落ちていくトイレットペーパーを、無駄に手で抑えながら俺は叫んだ!
「恭ぉぉぉぉぉぉ!」
「見ちゃダメです!サタコちゃん!」
「おい!早く脱出するぞ!!」
大吉、お前は残れよ!
もうダメだ……このまま外には出られねぇ。
外では、消防車のサイレンが鳴り響いている。響く足音。気づけば数人の消防隊員が、入口に集まってきていた。このままでは、変質者として捕獲されてしまうだろう。それだけは嫌だ……そうだ!
俺は俯き、片膝を付くようにしゃがみ込み、消防隊員が突入してくるのを待った。
遂に、バーンとドアが開かれ、消防隊員が突入して来た!
「……君は、一体何を……危ないから早く避難を!」
「タ……ターミネーターです」
「そ、そうか……タ、ターミネーターのコスプレね。またマニアックな……ま、まぁその姿じゃ何だし、コレを着なさい」
隊員が差し出してくれたのは、防火マントだった。俺は「ありがとうございます」とお礼を言って、涙を拭った。
──。
消防隊員のチェックの末、火事ではなく防火装置の誤作動だったと判明した。居合わせた客には、お金が返金され、謝罪の言葉を頂くことに。
「しっかしミイラ男の正体がターミネーターだったとはなー」
大吉よ、それ以上俺を弄るんじゃないよ。
「恭、ターミネーターとはなんだ?」
「知らなくていいってば」
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