69 / 90
第三章【陰陽師編】
復活の魔王
しおりを挟むサタコの容態は相変わらず良くない。俺は携帯電話の電話帳を見て、誰か居ないか探ってみる。
『雪水 涼』
こいつだ!サクは病気になったらどうしているんだ?俺はすぐさま電話をかける。
とぅるるる……とコール音がなった後、涼が電話に出る。
「やあ恭。珍しいな、どうした?」
「悪い涼、早速聞きたいんだけど、サクが病気になったらどうしてるんだ?」
「サクが病気ねー、考えた事も無かったな。どうするんだろ?」
くっ、コイツらいったいどれだけ体丈夫なんだよ!
「そ、そうか……わかった。わざわざ悪かったな」
「力になれなくてすまない。もしかしてサタコちゃんが病気とか?」
「いや、何でもねー……また皆で遊びに行こうな!」
そう言って俺は電話を切る。雪水達が来ると、余計に混乱しそうだからな……
他に誰か居ないのかと、再び電話帳を眺める。
『末永 大吉』
駄目だ……
『福田 幸』
駄目駄目!サタコが異世界から来た魔王だなんて言えねぇ。
他に、他に誰か居ないのか……ん?
『間場 凛』
これだ!!
俺は早速電話する。初めての電話だとか、敵かもしれないだとか、今は関係ない!もう頼れるのは間場 凛しか居ないのだ。
「も、もしもし!恭だ!佐藤恭だけど」
「あ、佐藤恭!?連絡待ってたんだ~、なにか慌ててる様だけど、どうかしたのかな?」
「サタコが、サタコが熱とクシャミで倒れたんだ。何か知っているなら、力を貸して欲しい……」
「なんですって!それは大変ね、場所は何処!?すぐ行くわ!」
「え?」
「場所は何処って聞いてるのよ!」
「えと、A区のA駅で、駅から近い神社だけど……」
「わかったわ!じゃまた後で」
そう言ったきり電話は切れた。間場 凛が、助けてくれる……?
──。
三十分後、間場 凛から電話がかかってきたので、シルシルが神社の入口で出迎えることに。そして、間場 凛を連れて戻ってきたのだが、俺の目の前に現れたのは……
「え……ま、マジョリん!?」
何故か魔女っ子マジョリんのコスプレをした少女が目の前に居た。確か、前に秋葉原で会った……
「久し振りね、佐藤恭」
ふわりと銀髪をかきあげるその姿は、間場 凛のそれと同じだ。
つまり、間場 凛→まじょうりん→マジョウリン→マジョリん??どういう状況だよ。本名が似てるからコスプレしているのか?
「秋葉原でイベントがあってね。急いできたのよ、それよりもサタコちゃんは?」
俺の頭の中を読んだのか、マジョリんは質問するより先にサタコの安否を気遣った。
「そ、そうだった!こっちだ」
俺はマジョリんをサタコの前に連れてくる。サタコは相変わらず苦しそうにしている。顔は真っ赤で、額には汗が滲み、時々魘されていた。俺はそんなサタコを見ているだけで辛かった。
「どうだ?何か分かるのか?」
「そうね、これは『魔熱』だと思うわ」
「魔熱??それは一体……」
「詳しい原因は分からないわ。ただ、私の家に伝わる記述によれば、大魔王サターオも同じ様な症状が出たの。その時、苦しんでいたサターオを救ったのが、町娘お京の『接吻』だと伝えられているわ」
確か、サターオはサタコの父親だ。そして、お京はその契約者だ。つまり、サタコを助けるには、俺がサタコにキスをすれば、もしかしたら助かるのかも知れない、という事か。
キス……
「佐藤恭、頼んだわよ」
「よ、よしきた」
俺はサタコに顔を近づける。近くで見ると、睫毛が長いのがよく分かる。マシュマロの様な、ふわふわほっぺに触れ、俺は目を閉じる。
「へっくちゅ」
くっ、負けるな佐藤恭。サタコを助ける為だ。
クシャミまみれになった顔を拭き、再トライ。
そしてついに、俺の口とサタコの口とが重なり合う。
柔らかい感触が口元に伝わってくる。「んん、」と、サタコの声がする。と同時に、俺の体の中に、口を伝って熱い『何か』が流れ込んできた。その『何か』は、俺の身体中を駆け回り、やがて頭の天辺からスーッと抜けていった。
俺は何事かと唇を離し、目を開けてみる。すると、サタコの目がパチっと開き、ガバッと起き上がったのだ!
「サタコ!?起きて大丈夫なのか!??」
「うむ。よく分からないがスッキリしたぞ」
サタコは唇の辺りに指を当てながら、いつもの様にふてぶてしく言った。
まさか、キスしたの気づいてたのかな……でも、元気になって良かった!
俺は周りの目もはばからずに、サタコを抱きしめた。なんだかんだ俺はサタコが大好きだ。その事を改めて思い知ったのだ。
「マジョリん、ありがとうな!本当に恩に着るよ」
「いえいえ、私もサタコちゃんが大切だからね」
マジョリんこと間場 凛とは一体何者なのか。今の発言からすると、敵でないことは明らか。真相に迫るには今しかない!
「マジョリん、聞きたいんだけど、お前は一体何者なんだ?何故俺達の前に現れる?」
この時ばかりはサタコも、シーも、シルシルも邪魔はしなかった。
「そうねー、約束は約束だものね。いいわ」
マジョリんは一息ついて話し始める。
「私は悪魔を魔界に送り返す仕事をしているわ。職業は『陰陽師』って事になるわね。こう見えても正当後継者よ」
「なんだとぉ!??」
皆が一斉に驚きの声をあげる。
マジョリん=間場 凛=陰陽師!?追い求めていた者が一度に揃った!?
「陰陽師だって!?そ、それじゃあサタコを魔界に返す事が出来るってのかよ!?」
「そうね、ただ今は無理ね。春にならないとそれは出来ないの」
「なにか理由があるのか?」
そこまで話した所で、マジョリんの携帯が鳴った。マジョリんは携帯の画面を見るや、
「ごめーん、仕事抜けて来ちゃったから、皆大激怒みたい……また今度ゆっくり話しましょ」
と言って、急いで支度をして部屋を飛び出して行った。
「え、ちょ、、、」と俺の声だけが遅れて部屋に響いた……
──。
シルシルとシーにお礼を言って、すっかり元気になったサタコを連れ、俺達は家に帰ることに。
その帰り道。
「恭、なかなかうまかったぞ」
「え!?な、なんの事かなぁ……」
「昨日食べた、栗マシュマロだ」
こいつぅぅどこまで気づいてやがるんだ!!
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる