凶から始まる凶同生活!

風浦らの

文字の大きさ
上 下
64 / 90
第三章【陰陽師編】

美少女コンテスト

しおりを挟む
 

     俺達は、決勝が始まる前に円陣を組んだ。この戦いは絶対に負ける訳にはいかない。
    みんなの心を一つにして、必ずや勝利をもぎ取るのだ!

「シーちゃんとサタコちゃんを、賭けの対象にするなんて許せません!    絶対に勝ちましょう!」
「勝ってお尻ペンペンだな」


 なんてハレンチな……

 「おぅ、何盛り上がってんだ?」

     野太い声でシルシルの懐から顔を出したのはシーだ。
     今までどこ行ってたんだよ……
     え?     寝てた?    確かに気持ちよさそうなベッドがあるが……って危うく俺のイメージが崩れるところだったぜ。さてと、じゃあ気を取り直して──、

「みんな行くぞぉぉぉぉぉ!!」
「「おおぉぉぉッ!!」」

 円陣を組み、掛け声と共に前を向くと、その視線の先には間場  凛が居た。

「わお、凄い気合いね。私も負けていられないわね。あ、そうだそうだ」

 何かを思い出したかのように、間場  凛は人差し指で、空中に何かを書き始める。信じられない事に、その指先には光が灯り、暗闇でペンライトを動かしたように線を紡ぎ出す。

 これは、漢字……?『封』と読める。やはりコイツも不思議な力があるようだ。シルシルの様な付与型の能力者なのだろうか。

「皆気をつけろ!」

    俺が二人を庇おうとしたが、それより早く間場  凛が気合いの入った言葉を発する!

「封陣!」

 言葉を放っただけなのに、大気が震え、体に衝撃が走った。

「な、何すんだよ!!」

 俺の声は思わず荒くなった。

「ごめんね。なんの心配も要らないよ、ただ──、私は『ズル』が嫌いだからね。念の為、念の為」

 アッケラカンと笑ってみせる間場  凛。確かに俺達の体にはなんの異変も感じられない。

 健闘を祈ると手を振り会場に向かう彼女の背を見ながら、シルシルが俺に向かって呟いた。

「凶さん……み、未来が……見えません」

 ──ッ!

 一体どうした事か。シルシルの能力が消えた──、という事なのだろうか?
    サタコの方に視線を落とすも、サタコは無言で首を横に振る。

 最後の言葉『私はズルが嫌い』から察するに、能力を封じられたのだ。

 こんな力を隠してやがったとは。絶対に勝って正体を暴いてやるぜ!

「私は最初から能力に頼るつもりは無かったですから、別にいいんですけどね」
「そ、そ、そうだな!    わ、私もだ!    奇遇だなシルシル」

 サタコさん。そこは嘘でもハッキリそうだと言ってくれ。

「んじゃ、俺は客席から応援してるから、しっかり頼むぜ!!」

 俺は二人とハイタッチを交わし客席側に向かった。


 ■■■■


 観客席側に着くと、会場は異様な熱気に包まれていて、さながらアイドルの野外コンサートだ。

「それでは、エントリーナンバー二番、モブ子ちゃんの登場です!!」

 司会者に呼ばれ姿を現したのはモブ子ちゃん。名前に騙されていたが、この子もめちゃくちゃ可愛い。観客席には『愛loveモブ子』の横断幕や、写真付きの団扇を持った男達が居る。

「モブ子ぉぉぉぉぉぉ!!!」

 うわぁ……すげぇ声援だな。

 モブ子の特技披露は、カラオケだった。今流行りのloveバラードを披露し、会場では涙を流す者が出る程だ。
    そして自己アピールは大盛況のうちに幕を閉じた。

 これは……強敵だ……

『続きまして、エントリーナンバー四番サタコちゃんの登場でーす!!』

 司会者に呼ばれてペタペタと、裸足で会場に登場したサタコの頭には、猫耳が付けられている。

 正解だサタコ。よくぞここまで成長したものだ。ロリ+ケモミミは鉄板中の鉄板。これが嫌いなオタクなんてオタクじゃない。

「サタコちゃーん!    こっち向いてー!」
「可愛いー!」
「愛くるしすぎる!」

 サタコにもかなりファンが付いたようだ。元々見た目は可愛いからな。見た目は。
    これならなんとかなりそうだけど、問題はサタコの特技だ。一体何を披露するつもりなのだろうか。

「特技は歌を披露する。心して聞くが良い」

 え、特技が歌!?
    聞いた事ないんですけどぉ!?ってかモブ子と被ってるんだよ、ダダかぶりなんだよ……

 音楽が流れ、サタコがマイクを手に歌い出す。

 こ、この曲は……サタコの大好きな、魔女っ子マジョリんのOP曲だ!

    サタコの自己アピールは歌だけに留まらず、音楽に合わせて踊りだした。

    俺のいない所で、コッソリ振り付けを練習していたと思うと正直可愛い。

 歌も振り付けも完璧だ!伊達に何十回と繰り返し見ていないな。お前こそ本物のオタクだぜ!

 俺は成長したサタコの姿に感慨深くなり、ポロリと目から涙が零れた。きっとお遊戯会を見に行く父親ってこんな気持ちなのだろう。

「マジョリんパウワー!エグゼンティボーッッ!」

 最後の決めポーズが終ると、会場からは惜しみない拍手と、オタク達からの歓喜の声が響いた。

 ペコリとお辞儀をして、サタコはまたペタペタと帰っていく。

    こんなお利口なサタコちゃん見た事ないんですけど……ともあれ、オタク票は完全に頂いたな。


『続きまして、エントリーナンバー五番、天神  瑞ちゃんの登場でーす!!』

「キター!!」
「神がかってる!」
「可愛すぎる巫女さん!」
「瑞ちゃーん!」

 出てくるなりシルシルの顔は既に真っ赤だ。人の事は言えないが、元々こういうのには向いてないタイプなのだろう。

 四人の中ではシルシルが一番バランスが良い。可愛さ、綺麗さを併せ持ち、年上、年下にも対応できそうだ。問題は特技だな。

「あ、あの、その……特技は……猫と戯れることです」

 そ、それは特技なのか……

 シルシルは服の首元のボタンを一つ外す。観客席からは「おー!」という声が響き渡る。

 すると服の隙間から、ひょっこりと顔を出した真っ白な子猫が、ぴょんと飛び出してきた。そして、シルシルが楽しそうに戯れ始めると「可愛いー!」と会場のあちらこちらから聞こえてくる。

 美少女と子猫。
   
    やるなシルシル。これ以上の癒しを俺は知らない(あくまで個人的な意見です)

 シーの存在が助けてくれたのか、シルシルの表情が柔らかになり、より一層その可愛さが際立っている。

    これは貰ったんじゃないか!?


「ありがとうございました!」

    深々とお辞儀をして、割れんばかりの拍手に送られ、シルシルはアセアセと帰っていった。

『最後はエントリーナンバー十番!    間場  凛ちゃん、お願いしまーす!!』


 司会者にアナウンスされ、銀髪を靡かせ間場  凛が登場する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

処理中です...