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第二章【能力者狩り編】
違和感の正体
しおりを挟む錆び付いた扉が開かれ、光が差し込む。逆光でよく見えないが、男達が十数人建物の中に入ってくる様子が伺える。
全員が中に入り終えると、人目を避けるかのように再び扉は閉ざされた。
逆光が遮られ、俺の目にも男達の姿が良く見える。
黒いスーツを身にまとった男達十人程に、一人だけ赤いスーツを来た男。赤服の手にはロープが握られており、その先には腕と胴体をぐるぐる巻きにされた小さな女の子。見た目はまだあどけなく、余計な事を喋らせない為か、口にはガムテープが貼られている。
ズラリと並んだ黒服達、全て合わせると二十近い人数で、それだけでかなりの威圧感がある。そしてそれらを束ねる赤服男が、俺達を指差し喋り出す。
「根津君、このアニマル軍団が能力者なのかね?」
「あぁ。アニマルは関係ない。身バレを防ぐ為の被り物だろう。能力は分かってはいないが、間違いなく契約者達だ」
「それは素晴らしい! これで一生遊んで暮らせるだけの金が手に入るぞ!」
赤服は俺達を見て高笑い。
秋葉原での事件の時もそうだったが、俺達にはかなりの価値が付けられている様だ。
「ベルぅぅ! 私だ、助けに来たぞ!」
ベルゼブブを目の前にしてサタコが叫んだ。妹同然とまで言っていたのだ。仕方が無いだろう。しかし、当のベルゼブブはピンと来ていない様子で、やや反応が悪い。
「分からないのか、私だ! サ──、」
俺は咄嗟にサタコの口を塞いだ。
彼等の前で名前を名乗るのは、今後の生活の上で支障になるからだ。もし、生きて帰って戻れたならば──、の話だが。
「ほほう。これは本当に本物らしいな」
サタコの反応を見て確信した様子の赤服男は、手を叩き喜びを示した。
しかしこの後、事態は思いもしなかった展開を迎える事になる。
なにやら私服男と赤服男との間でもめ出したのだ。
「約束は果たした。早くベルを返して貰おうか」
「約束ぅ? 確か約束は契約者十人だった筈だが?」
「まさか、お前ら約束を──、」
「簡単な事だ。今回と同じ様にやればいいだけの事。なんにも難しい事じゃない。だろ? 根津君」
「貴様らぁ!」
「おっと、動かないで貰えるかな? この娘の頭がぶち抜かれちゃうよ? 根津君は賢いから分かるよねぇ」
縛り付けられた幼女の頭に銃口を突き付け、私服男の動きを抑えた赤服。それを見て叫んでいるのは、私服男とサタコだ。
何となく状況が分かってきた。つまり──、
ベルゼブブを人質に取られた私服男は、能力者を集めたら解放してやるという条件の下、仕方なく俺達を誘い出した──、と言った所か。
さっき感じた違和感の正体って奴が見えてきた。
根津が俺達を拘束したのは本意では無い。それは、俺達の拘束の仕方を見ても明らかだ。
俺達は一見、両手を後ろで結ばれて身動きが取れない様には見えるが、実はそうでは無い。この状況がもし仮に一人だったならば絶望的だが、俺達は四人居る。
そしてこの覆面──、
「ちょっと、馬さん」
「なんだよ、クマさん。今考えてんだよ」
「オレは気づいた。この鉄格子、入り口が無いよな? では一体どうやって俺達をこの中に入れたと思う?」
「──ッ! そ、そうか……」
この瞬間、俺は全てを理解した。
俺の感じた違和感は全部で四つ。
①私服男の時折見せる沈んだ顔。
②未だに付けられた覆面。
③磔にせず、後ろで縛られただけの両手。
④入口の無い鉄格子。
それら全ては、ある一つの事を示している。
なかなかやってくれるじゃねぇか、根津さんよぉ。
上等だ、やってやろうじゃねぇか!
俺は四人にだけ聞こえる声で、皆んなに話かけた。
「皆んな聞いてくれ──、」
────、
「わかったか? 質問は今のうちにしてくれ。この作戦のカギはパンティーさんだ。頼んだぞ」
「任せてダ~リン♡」
「了解。しくじるなよ」
「わかった」
思いは一つ。やる事も一つ。
よし──、やるぞ!!
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