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129.立ち塞がるもの

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「あ、あれぇ……」

「起動……したんですかね?」

「そうみたいですね……」

 適当に並べた五桁の文字。
 まさかまさかのそれがビンゴだったみたいで、ポータルを起動させることに成功してしまった。

 ちなみに俺が並べた数字は12345というごく単純な文字列だ。

 正直、10万通りを越えるものを一発で引き当ててしまったのには困惑したが、まぁ生きていればこんなこともある。

 俺たちとしては嬉しい誤算だ。
 これで先へ進むことができる。

「先へ進もう。追手が来るのも時間の問題だからな」

「は、はい!」

 俺たちは急いでポータルへと駆け寄ろうとする――と、その時だった。

「おい、ちょっと待てや」

「「……っ!?」」
 
 俺たち以外には誰もいないはずの空間から、何者かの声が聞こえてくる。
 声質的にソフィアでもブライアンさんの声でもない。

 これは……

「まさか、一発で暗号を見破られるなんてな」

 その声の主は俺たちが辿ってきた方から聞こえてきた。
 ツカツカと足音を鳴らし、それが大きくなっていくにつれてその姿が露わになっていく。

「何者だ……?」

「それはこっちが聞きたいね。ま、王国の潜入工作員か何かなんだろうけど」

 男の姿はさっきの奴らと同様に黒いローブで身を包んでいた。
 敵であることは確実……だがその顔には見覚えがあった。

(こいつ、あの時の……!)

 潜入する際に術式のことについて話していた連中の一人。
 確かこいつは自分のことを術式師だと言っていた。

 ソフィアたちもそれに気が付いたようで俺の方へと目線を向けてきた。

「俺たちを見張っていたのか?」

「一応上からの指示でここの護衛を任されたもんだから、仕方なくね。あと俺の仕掛けた罠にハマるネズミたちを鑑賞するためってのもあるかな?」

「罠だと……?」

「そ。もう君たちも知っての通り、そのポータルは暗号解読式の特殊仕様だ。近くに置いといた起動デバイスで正しい暗号を入力しないと起動しないようになっている。もちろん成功すればポータルは起動する……が、失敗したら俺が予め用意しておいたゲートが起動してその中からおっかない魔物さんたちがわんさか出てくるってことになっていたんだけどね……」

 なるほど。
 あの時に言っていたことはそういうことだったんだな。

 でもまさかの俺が暗号を解読してしまったことで計画は崩れた。
 よってご本人が登場したってわけか。

「でもまさかこんなことになるなんてね。あえてわっかりやすい暗号にしたのに……」

 それが仇になったな。
 残念ながら俺はそこまで深い考えが出来ない人間なんだ。

「ま、そんなことはどうでもいいや。どうせ君たちはここで朽ち果てるんだから」

「なんだと?」

 男はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
 同時に片手を天高々に上げると、

「悪いけど、君たちをその先へ誘うわけにはいかないんだ。だからここで……消えてもらうよ」

 パチンと一発、指を鳴らすと天井に巨大な魔法陣が。映し出される。
 そして中から数体の魔物が、俺たちの行く手を阻んだ。
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