124 / 127
第5章 おっさん、優勝を目指す
第122話 取引
しおりを挟む遅れてしまい申し訳ありません!久々の投稿になります!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうぞ、好きなところに腰をかけてください」
「……長居するつもりはありませんので、私はここで結構です」
「そうかい? まぁどっちでもいいんだけど」
ここは建物内にある応接室。
私はルーカスに導かれ、ここへ案内された。
「さてと……話はなんだったかな?」
たいそうご立派な革製の椅子にドサッと腰をかけそう呟くルーカス。
周りにはかなり高価な絵画や彫刻物が所狭しと並べられ、天井には多種の宝石による装飾が施されたシャンデリアがあった。
「レイナード先生のことです。先生が殺されるというのはどういうことですか?」
「ああ、そうだったね。だがその前に君にはある提案を飲んでもらうよ」
「……その提案とはなんです?」
何を強要されるかという不安が心臓の鼓動をアップテンポにする。
でも全ては真意を聞くため。
覚悟はできているつもりだ。
私はグッと身構える。
ルーカスは少し間を置くと、その提案とやらを話し始めた。
「そんなに身構えなくても別に大したことじゃないさ。君にはレイナード先生をここに連れてきてほしいんだ」
「先生を……ここへ?」
「そう。少しあの人には話したいことがあってね。どうかな? 難しい話ではないだろう?」
「……なぜですか? レイナード先生に何の御用が?」
「ん~それはちょっと言えないかな。ちょっとした大人の事情って奴だよ。ま、君にような一般生徒が口を挿んでいいようなことじゃないとだけ言っておくよ」
ルーカスは続ける。
「で、どうかな? この要件を飲んでくれるかい?」
「飲んでくれるかいと言う前に貴方は元から飲ませるつもりだったのでしょう?」
「ふふ、流石は学年主席の優等生だね。中々鋭い勘をしている」
「お褒めに預かり、光栄です」
「それで? 返答は?」
ルーカスは机に肘を立て、聞いてくる。
もちろん、答えは決まっている。
当人のいないところで私なんかが勝手に決めていいものかと思う節もあったが、今は仕方ない。
未来で起こるであろう最悪の事態に備えるために今は細かいことなんか気にしていられない。
私はルーカスの目をしっかりと見つめると、即答した。
「……分かりました、約束しましょう。決勝競技が終わった後、ここに来るように先生には伝えておきます」
「ありがとう、フィオナさん。じゃあ、そういうことでこの話は終わるとして次は君の話を――」
「ルーカス様、今宜しいでしょうか?」
と、その時。
部屋の外から何者かの声が聞こえてくる。
「おっと、使用人の方かな? 悪いね、フィオナさん。ちょっと席外すよ」
「はい」
そう言ってルーカスは一旦部屋の外へ。
そして数分後、ルーカスは再び部屋へと戻ってきた。
「ごめんね、フィオナさん。待たせた上にこういうことを言うのもあれなんだけど、急用ができちゃってね。今すぐ行かないといけなくなっちゃったんだ」
「今すぐ? 先生の話はどうなるんです?」
約束が違うと言わんばかりの私の反応にルーカスは、
「その話は必ずするよ。君にはまた連絡する。それまで少し待っていてくれないか?」
「本当に……話してくれるんですね?」
「もちろんだ。こう見ても僕は約束には堅実な男でね。今まで交わした約束を一度も破ったことがないんだ。だから安心してほしい」
本当に信じていいのか?
私の心中ではそんな迷いが渦巻いていた。
でも、この人が嘘を言っているようにも思えなかった。
「分かりました。不本意ですが、今は貴方を信じます。ですが、その間にレイナード先生の身にもしものことがあったら……」
「あったら?」
「……いいえ、何でもないです。では、ご連絡のほどお待ちしています。ルーカス生徒会長」
私はそう最後に一言だけ述べると、「失礼します」と言って部屋を出る。
(ルーカス・アルモンド。まったく先の読めない人だ……)
何が起こるかは分からない。
警戒しておかなければ。
私は心にそう誓うと、屋敷を後にしたのだった。
0
お気に入りに追加
2,109
あなたにおすすめの小説
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!
転生令嬢の幸福論
はなッぱち
ファンタジー
冒険者から英雄へ出世した婚約者に婚約破棄された商家の令嬢アリシアは、一途な想いを胸に人知の及ばぬ力を使い、自身を婚約破棄に追い込んだ女に転生を果たす。
復讐と執念が世界を救うかもしれない物語。
この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件
なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。
そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。
このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。
【web累計100万PV突破!】
著/イラスト なかの
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~
島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!!
神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!?
これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。
追われる身にもなってくれ!
文月つらら
ファンタジー
身に覚えがないのに指名手配犯として追われるようになった主人公。捕まれば処刑台送りの運命から逃れるべく、いつの間にか勝手に増えた仲間とともに行き当たりばったりの逃避行へ。どこかおかしい仲間と主人公のドタバタ冒険ファンタジー小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる