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第5章 おっさん、優勝を目指す
第94話 開幕
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高らかにパレードの音楽団が演奏を繰り広げ、競技場は盛り上がりを見せる。
開幕の挨拶は誰かも分からない王国のお偉いさん、そしてクロード王国の現国王、現王妃。
そしてアロナード学園長のフィーネが前に出て挨拶を行う。
ここはアロナード学園、屋外競技場。通称ワイバーンと呼ばれるコロシアム型の競技施設だ。
そして今年もこの競技場で様々なドラマが生まれる。毎年数万人は集まる大観衆の渦の中でアロナードの学生はたちは互いに協力し合い、優勝を向けてしのぎを削るのだ。
そして我が1年A組を本大会で最も重要とされる初戦を迎えようとしていた。
「いよいよですねレイナード先生」
「ああ、待ちに待った日だ」
そう、そしてこの俺が遂に一生ニート生活という素晴らしき願いを叶える日が来たのだ。ここで優勝した暁には俺の人生手帳からからは社畜という言葉が消え、労働という言葉が消え、代わりに新たに手に入るは至高の自由。それは普通の人々では中々手の届かない高みの見物。
最強にして絶対の自由、それがニートだ。
ニートと言っても財力のあるニート。常人ならば引きこもり生活を続けていれば直に限界が訪れる。
だが財力を手にするための強力なパイプを手にすればそのような心配をする必要は皆無。
英雄などとくだらない肩書以上の幸福を味わえるものを手に入れることができるのだ。
(ここで優勝すれば死ぬまでニート生活、あの極楽が再び俺の元に……)
「ふふふ、ははははははは!」
「れ、レイナード?」
「先生?」
「え? あ、ご、ゴホン。すまない、思い出し笑いをしていた」
おっとやばいやばいついつい高笑いを発動してしまった。
俺は未だに生徒やレーナ達に魔技祭に奮闘する目的を語っていない。魔術講師である俺が必死になって汗水たらす理由がニート生活のための資金集めと皆が聞けば当然どのような反応が返って来るかは見当がつく。
その時点で皆のモチベーション、特に生徒たちのやる気が激下がりだ。
まぁレーナだけは薄々感じているかのような仕草が時々見られたが気を遣って黙ってくれているのだろう。
(ともかく今は夢を語るより現実を語るべきだな。早く生徒たちを控室に……ってあれ?)
振り向くと先ほどまでいたはずの生徒たちが一同に姿を消していた。
「お、おいレーナよ。皆はどこに行ったのだ?」
「え、ああ……それが」
少し苦笑しながら事情を説明。
話によれば生徒たちはワイバーンの観客席に直行していったとのこと。
一応見張りとしてハルカも同行したようだ。
「観戦って今の時間は……」
「ちょうど1年B組と3年B組の一戦が始まる頃合いですね」
「なに、もうそんな時間か?」
競技は既に始まっている。今から行われようとしているのは1年B組VS3年B組の一戦だ。
ちなみにもう既に魔技祭開幕から2戦が終わっている。どちらも1年VS3年の対戦カードだった。
結果は言うまでもなく後者の圧勝。学年差を見せつけた試合運びとなった。
だがレーナの話によれば毎年このような感じとなるらしい。まず対戦カードが二学年違いという所に疑問を持ちたい所だがこれも運。仕方ないと言えよう。
(まだ2年が相手なだけ生徒の精神面的にも良かったと言えるか……)
我が1年A組の試合のいよいよ次にまで迫った。
だがその前に……
「レーナ、オレたちも見に行くぞ」
「あ、はい。で、でもデータの最終確認は大丈夫なんですか?」
「ああ、もう一通り見ている。それよりあの馬鹿がどこまでクラスを仕上げたのかも気になる。あいつはともかく生徒一人一人の素質は我がA組とも張り合えるレベルだからな」
「確かにこの前の模擬演習の時は苦戦しましたね。強力な相手になることは間違いないですね……」
「そうだ、そのためにも観戦しに行く価値がある。データでは計り知れないものが発見できるかもしれん」
データはあくまで基礎的な指標。当日は何が起こるか分からないのがこの世で最も恐ろしい不可視な法則だ。
力量を見誤れば泥沼地獄に入る。そして二度と這い上がってはこれない。
目で見て、耳で聞いて、肌で感じて……五感をフルに使って相手を見極めることが俺が信じる勝利への方程式。
それに乗っ取り、俺は観戦場へと向かう。
■ ■ ■
コロシアムは未だかつてない盛り上がりを見せていた。
観戦場には多くの人が詰めかけ、その熱気による水蒸気の発生によって上空に雲が出来るという異例の現象が起きていた。
そこに立っているだけでも体力が吸われていき、熱気によって汗も大量に出てくる。
「とんでもない数の人間だ。ここまでとはな……」
「私も驚いています。去年は裏方だったので少ししかコロシアム内は見ていないのですが去年とは比べ物ということだけは分かります」
そしてそんな大観衆に見守られる中、両クラスの指揮官が姿を現す。
『それではー皆さん! これより魔道技術祭第三戦、1年B組対3年B組を執り行いたいと思います!』
選手入場から始まる前置きは生徒のやる気を引き出すには最適な演出と言えるだろう。
多くの人の拍手で出迎えられ、沢山の人間に自らの力を示すことができる。
仲には王国騎士団、魔術団のスカウト陣も目をギラつかせ観戦しているとのこと。結果を残せば後々美味しい特典が付いてくるという王国直属の一級魔術師志望の生徒にとってはこの上ないチャンスだ。
だがそれと共に結果を残さなければならないという緊張感にも駆られることとなる。
俺が特訓カリキュラムに取り入れた精神特訓もこういうところで活かされてくるということだ。
互いに顔を合わせ、握手を交わす両チーム。3年生の方は下級生に負けまいと少し身体に力が入っているようにも見える。対するB組は格上の相手であるにも関わらずかなり冷静さを保っている。
(これは……もしかすると)
そして司会進行役が場の空気を盛り上げながら競技説明を行い、遂に両チームの戦いに火ぶたが切って落とされる。
『それでは魔道技術祭第三戦、開始!!』
巨大コングが鳴り響き、戦いが始まる。
そして―――
『勝者、1年B組!!』
―――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
観客席がどよめき始める。
それもそのはず、結果は1年B組の完全勝利と言う形で幕を閉じたのだ。
開幕の挨拶は誰かも分からない王国のお偉いさん、そしてクロード王国の現国王、現王妃。
そしてアロナード学園長のフィーネが前に出て挨拶を行う。
ここはアロナード学園、屋外競技場。通称ワイバーンと呼ばれるコロシアム型の競技施設だ。
そして今年もこの競技場で様々なドラマが生まれる。毎年数万人は集まる大観衆の渦の中でアロナードの学生はたちは互いに協力し合い、優勝を向けてしのぎを削るのだ。
そして我が1年A組を本大会で最も重要とされる初戦を迎えようとしていた。
「いよいよですねレイナード先生」
「ああ、待ちに待った日だ」
そう、そしてこの俺が遂に一生ニート生活という素晴らしき願いを叶える日が来たのだ。ここで優勝した暁には俺の人生手帳からからは社畜という言葉が消え、労働という言葉が消え、代わりに新たに手に入るは至高の自由。それは普通の人々では中々手の届かない高みの見物。
最強にして絶対の自由、それがニートだ。
ニートと言っても財力のあるニート。常人ならば引きこもり生活を続けていれば直に限界が訪れる。
だが財力を手にするための強力なパイプを手にすればそのような心配をする必要は皆無。
英雄などとくだらない肩書以上の幸福を味わえるものを手に入れることができるのだ。
(ここで優勝すれば死ぬまでニート生活、あの極楽が再び俺の元に……)
「ふふふ、ははははははは!」
「れ、レイナード?」
「先生?」
「え? あ、ご、ゴホン。すまない、思い出し笑いをしていた」
おっとやばいやばいついつい高笑いを発動してしまった。
俺は未だに生徒やレーナ達に魔技祭に奮闘する目的を語っていない。魔術講師である俺が必死になって汗水たらす理由がニート生活のための資金集めと皆が聞けば当然どのような反応が返って来るかは見当がつく。
その時点で皆のモチベーション、特に生徒たちのやる気が激下がりだ。
まぁレーナだけは薄々感じているかのような仕草が時々見られたが気を遣って黙ってくれているのだろう。
(ともかく今は夢を語るより現実を語るべきだな。早く生徒たちを控室に……ってあれ?)
振り向くと先ほどまでいたはずの生徒たちが一同に姿を消していた。
「お、おいレーナよ。皆はどこに行ったのだ?」
「え、ああ……それが」
少し苦笑しながら事情を説明。
話によれば生徒たちはワイバーンの観客席に直行していったとのこと。
一応見張りとしてハルカも同行したようだ。
「観戦って今の時間は……」
「ちょうど1年B組と3年B組の一戦が始まる頃合いですね」
「なに、もうそんな時間か?」
競技は既に始まっている。今から行われようとしているのは1年B組VS3年B組の一戦だ。
ちなみにもう既に魔技祭開幕から2戦が終わっている。どちらも1年VS3年の対戦カードだった。
結果は言うまでもなく後者の圧勝。学年差を見せつけた試合運びとなった。
だがレーナの話によれば毎年このような感じとなるらしい。まず対戦カードが二学年違いという所に疑問を持ちたい所だがこれも運。仕方ないと言えよう。
(まだ2年が相手なだけ生徒の精神面的にも良かったと言えるか……)
我が1年A組の試合のいよいよ次にまで迫った。
だがその前に……
「レーナ、オレたちも見に行くぞ」
「あ、はい。で、でもデータの最終確認は大丈夫なんですか?」
「ああ、もう一通り見ている。それよりあの馬鹿がどこまでクラスを仕上げたのかも気になる。あいつはともかく生徒一人一人の素質は我がA組とも張り合えるレベルだからな」
「確かにこの前の模擬演習の時は苦戦しましたね。強力な相手になることは間違いないですね……」
「そうだ、そのためにも観戦しに行く価値がある。データでは計り知れないものが発見できるかもしれん」
データはあくまで基礎的な指標。当日は何が起こるか分からないのがこの世で最も恐ろしい不可視な法則だ。
力量を見誤れば泥沼地獄に入る。そして二度と這い上がってはこれない。
目で見て、耳で聞いて、肌で感じて……五感をフルに使って相手を見極めることが俺が信じる勝利への方程式。
それに乗っ取り、俺は観戦場へと向かう。
■ ■ ■
コロシアムは未だかつてない盛り上がりを見せていた。
観戦場には多くの人が詰めかけ、その熱気による水蒸気の発生によって上空に雲が出来るという異例の現象が起きていた。
そこに立っているだけでも体力が吸われていき、熱気によって汗も大量に出てくる。
「とんでもない数の人間だ。ここまでとはな……」
「私も驚いています。去年は裏方だったので少ししかコロシアム内は見ていないのですが去年とは比べ物ということだけは分かります」
そしてそんな大観衆に見守られる中、両クラスの指揮官が姿を現す。
『それではー皆さん! これより魔道技術祭第三戦、1年B組対3年B組を執り行いたいと思います!』
選手入場から始まる前置きは生徒のやる気を引き出すには最適な演出と言えるだろう。
多くの人の拍手で出迎えられ、沢山の人間に自らの力を示すことができる。
仲には王国騎士団、魔術団のスカウト陣も目をギラつかせ観戦しているとのこと。結果を残せば後々美味しい特典が付いてくるという王国直属の一級魔術師志望の生徒にとってはこの上ないチャンスだ。
だがそれと共に結果を残さなければならないという緊張感にも駆られることとなる。
俺が特訓カリキュラムに取り入れた精神特訓もこういうところで活かされてくるということだ。
互いに顔を合わせ、握手を交わす両チーム。3年生の方は下級生に負けまいと少し身体に力が入っているようにも見える。対するB組は格上の相手であるにも関わらずかなり冷静さを保っている。
(これは……もしかすると)
そして司会進行役が場の空気を盛り上げながら競技説明を行い、遂に両チームの戦いに火ぶたが切って落とされる。
『それでは魔道技術祭第三戦、開始!!』
巨大コングが鳴り響き、戦いが始まる。
そして―――
『勝者、1年B組!!』
―――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
観客席がどよめき始める。
それもそのはず、結果は1年B組の完全勝利と言う形で幕を閉じたのだ。
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