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第3章 スノープリンス編

第34話「決戦1」

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 ―――ガシャンガシャン。

 短剣とマグがぶつかり合う音が研究所内に響く。
 戦っているのはアルベルトとベラルーナの幹部代表のゴルク。
 お互いに一歩も譲らない接戦だ。

「やるねぇおっさんよお」
「お前もな」
「貴様はマグを持っていないのか?」
「生憎だが適正がなくてな。マグを使うよりこっちの方が合っているんだ」
「ほう……だが残念だったな。そんな貧相な装備じゃ、俺とガイアに勝ち目なんてないぜ?」
「それは……どうかな」
「なに?」
「んなもんやってみないと分からんだろ?」
「ふん、そうか。なら教えてやる。マグ使いがどういうものなのかをな!」

 勢いのある一撃。思わずよろける。
 だが、足回りはこちらが上だ。すぐさま連撃、連撃に連撃を重ねる。
 
「ぐおっ!」

 アルベルトに怒涛の猛攻に思わず声が出る。

「おいおいどうした? さっきまでの勢いはどこいっちまったんだ?」
「こいつ……なめやがって!」

 ゴルクは一旦、アルベルトと距離を置く。

「おっさんよ、ただの短剣使いじゃないな?」
「そう見えるか?」
「ああ、動きに迷いがない。まるでワシの次の一手を予測しているかのような」
「へぇ……さすが人の上に立つ者だ。勘が鋭い」
「だが、おっさん。悪いがここまでだ。もうちょっと遊びたかったんだが、気が変わった」

 ―――ガン!

 マグを思いっきり突き立てる。
 そして……

「オラァァァ! 呼応コンコード!」

 激しい地鳴りと共にゴルクの巨大なマグが閃光を放つ。

「なんだこの力は……」
「おっさんよ、悪いが終わらせてもらう。さぁワシの力に呻くがいい!」

 魔力が彼の周りに形となって纏いこむ。
 凄まじい量の魔力だ。
 一瞬の隙を見せただけであの魔力のブラックホールに飲み込まれそうだ。

「どうやらガチで行かないと死ぬかもな……」

 アルベルトは剣を構え、時を待つ。
 
「さぁ……いくぜおっさん!」
「ぐっ!」

 速い。さっきより段違いのスピードだ。
 
「オラオラオラオラ!」

 辛うじて攻撃を回避する。だが、このままでは時間の問題だ。

「くそっ! 怪力の上に俊足とはな」
「どうだ! ガイアの固有能力エターナルスキル豪地の恵グレースオブガイアは!」
「固有能力(エターナルスキル)だと?」
「おうよ、ガイアの固有能力は肉体改造。つまり一時的な戦闘能力の増加だ」
「なるほどな。通りで動きが変わったわけだ」
「さぁおっさん。どうする? 次で決めさせてもらうが」
「さぁなどうするか」

(恐らく次で奴は決めてくる。正直、攻撃を回避できる自信はない。ここは……賭けるしかない)

「ん? どうしたおっさん。死を前に怖気づいたのか?」
「ああ、その通りよ。恐怖でもう逝っちまいそうだ」
「はっはっは! 面白い奴だな貴様は。安心しろ、すぐにあの世に送ってやる」
「それは助かる。早く解放されたくてたまらないんだ」
「ふん、まぁ貴様みたいな実力ある者を殺すのは惜しいが、消えてもらう!」

 ゴルクが猛スピードで迫ってくる。

「ユニークスキル……」

「はははは! あばよおっさん!」

 目の前。ゴルクはマグを振り上げる。

「そこだ! 絶速の刃!」

 一瞬。超速から生み出された一撃がゴルクを両断する。
 
「な……」
「悪いな……俺はまだ、死ぬわけにはいかないんだ」
「バカな! このワシが敗れるはずが!」

 ゴルクはその場で大きな音を立て、倒れる。

「終わったか。リュウタロウ殿……無事だといいが」

 一方、その頃。

「おいヴィーレ。奴の居場所は?」
『こっちから人の気配を感じる。近いぞ』
「りょーかい!」

 奥に入っていったプリシアを追いかけていた。
 ヴィーレの探知能力をあてにプリシアを見つけ出す。
 今思うと、ヴィーレの固有能力エターナルスキルって何なのだろうか。
 一応混沌嵐カオスストームっていう超火力魔術はあるが……

『主様! いたぞ! 目の前だ』
「ん? あそこか!」

 たどり着いたのは巨大なカプセルの前。
 中は……何も見えない。

「ふふふふふ。よく来たわね」
「プリシア・ナパード! お前は一体……」
「あなたたちには本当に驚かされるわね。ゴルクもやられたみたいだし」

(アルベルトさん……勝ったんだ!)

「でももうあなたたちの足掻きもここまでよ。ファックス!」
「はい、プリシア様」

 何もない所からいきなりファックスが現れる。
 その場で消えたり現れたり……こいつは一体何者なんだ。
 プリシアはファックスに準備するよう頼む。

「ファックス、準備して」
「了解いたしました」

 そしてファックスは巨大カプセルの前で大きく両腕を広げ、

「さぁ目覚めなさい! ドグマ・キャッスル!」

 ―――ゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ん? 天井が……」
『気をつけろ主様。凄まじく邪悪な匂いがする』
「邪悪な匂い?」

 とにかく分かったことは何かが動き始めたということだ。
 そしてプリシアは大きく高笑いをする。

「ふふふふふ、ははははは! ここまでよ若造! せいぜい恐怖に滅するといいわ!」
「それでは……しばしのショーをお楽しみください」

 プリシアとファックスはまたもその場で消える。

「くそ! なんなんだよ」
『これは……まずいオーラだ』

 この轟音の原因は巨大カプセルにあった。
 次第にカプセルは開いていく。
 そして中から出てきたのは……

「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

「な、なんだよこいつ」
『準1等級魔獣の配合種だな』
「その通り! これはドグマ・キャッスル。この研究所で開発された最強の#__ビースト__#」
「そしてあなた方を還付泣きまでに倒すための兵器」

 デカすぎる……これはもうあの時のギガンテスや謎の魔獣の時とは大違いだ。
 まさに化学の結晶。そう言えるべきものだった。

「……こんなの野放しにしたら……」
『ああ、大パニックになるな』
「だったらぶっ倒すまでだ!」
『よく言った、主様! あんたのそういう所、グッとくるぜ』
「当然だ。外にはナパードの住民やアイリスたちもいる。絶対に外に出すわけにはいかない!」

 俺の心には恐怖心というものはなかった。というかこの世界に来てから何度か危険な目にあっているような気がするが、怖いと思ったことは一度もない。まぁ……驚きはしたが。
 自分の憧れだった世界だからこそなのかそれとももっと違う理由なのかは分からないが、どんな場面に出くわしても負ける気がしない。

 俺の腰に差していたヴィーレは俺の手元へ。
 そして目の前の巨大な化け物に向けてその刃を向ける……。

「勝負だ! プリシア・ナパード!」
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