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12.Sランク冒険者、困惑する

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「このロングソードが耐えられるとこまで上げておくか」

 クリエイト盤に術式を加え、指でなぞっていく。
 武器の能力よりもリアナさんの能力が圧倒的過ぎて調整が難しい。

 というのも、能力値を上げ過ぎれば武器破損に繋がるからだ。
 人も無理をし過ぎれば身体を壊してしまうように、武器にも同じことが起きる。

 だから武器の能力と使用者の能力を照らし合わせながら、適切な調整しないとならない。
 クリエイターの腕の見せ所の一つだ。 

 その点、一から作る時はそれらを度外視できるから楽ではある。

「よし、最後は……」
 
 次が最後の工程、属性の付与だ。

 無属性武器の場合はこの時点で最終調整を加えて終了なのだが、今回は属性を付与してみようと思う。

 属性付与は自分の腕の向上にも繋がるからな。
 今回のような繊細な調整を必要とする場合は特に。

(属性は……氷属性にしよう)

 理由はリアナさんの属性値の中で一番高かったからだ。
 まぁ、ぶっちゃけどれも高いので何の属性にしてもいいんだけど。

 今回は一番高い数値に従うことにした。

「≪グラント=アイスアトリビュート≫」

 ゆっくりとゆっくりと。
 少しずつ属性を付与していく。

(くっ、基礎値を少し上げ過ぎたか……)
 
 基礎能力を上げ過ぎたからか、あまり属性効果を付与できなかった。
 とはいえ、属性武器としてはほぼ完璧なものができた。

 流石に特化型までは破損の恐れがあるので、できなかったが。

「……うしっ! 完成だ!」

 最終調整まで済ませ、完成。

 クリエイター盤から剣を取り上げ、天に翳す。
 
 個人的には中々いいものができたと思う。

 後は実際に使ってみてだが……

「あれ、もうできたの!?」

 ちょうどいいタイミングでリアナさんが戻ってきた。

「はい。できましたよ」

「早いね! まだ30分も経ってないのに」

「そうですかね?」

「うん! 普通改造は最低一時間でもかかるって、前にジャクソンさんから聞いたけど……」

「ジャクソンさん?」

「あ、前にうちのパーティーにいたクリエイターだよ。家庭の事情で今はもう止めちゃったけどね」

 なるほど。
 俺はその後任ってことか。

 でも一時間はかかるってのは初耳だ。

 能力等の問題で個人差はあるけど、改造なら誰でも30分くらいでやるもんだと思っていた。
 一時間あれば生成ができるぞ。

 まぁ俺は特にクリエイターの友達とか知り合いとかいないから、基準は分からないけど。

「もう使っていい?」

「どうぞ」

「じゃあ遠慮なく……………はぁぁぁぁッ!」

 リアナさんは構えることなく、一刀。
 剣を振りかざす。

 だがその瞬間。
 周囲に暴風が巻き起こり、剣を振った方向に氷波が形成。

 ガガガッと地面を抉り、遂には演習場の壁を突き破るほどの氷山が形成される。

(す、すげぇ……! これが……)

 Sランクの力か!

 圧倒的だ。
 あの一振りでここまで能力を引き出すなんて……流石としかいいようがない。

 俺は思わず震えた声で。

「す、すごいですねリアナさん! たった一振りでここまでの力を出せるなんて!」

「え? え、ええ……まぁね~」

 少し唖然としながらも、ニッコリ笑顔で返答してくる。
 だが、彼女の内なる心は驚きで支配されていた。


 ど、どういうこと? ただ普通に振っただけなのに……たった一刀でこの威力って……
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