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忠告
しおりを挟む遂に、とうとう見つけ出した。
あの後、かの夫人は微かに興奮している様に見えたが、取り乱しはしなかった。
とはいえ、今の私には関係ない、夫人はそんな事を言ってお茶を楽しみ、フィデリオはフェルゲイン夫人を馬車まで見送った。
部屋に戻ると、呆然としてしまう。
大きな目的の一つが遂に果たされた…とはいえ、問題はこれからもあるわけだが…
その前に…
『レオよ』
いつも側に控える側近をフィデリオは軽く睨みつける。
『…フェルゲイン夫人を口説けとは言ってないぞ』
色仕掛け、はこの男の得意分野だ。
時に人種を超えあらゆる情報を収集する能力は他の誰にも真似できないであろう。
しかし、今回の問題は非常に繊細だ。
加えて…あの忌々しい楽園とは名ばかりの代物が更に事を複雑にさせている。
『いくら夫に相手にされていない妻であっても、相手が悪い。いつも通りにはいかないのだ。
あの夫人はフェルゲインでありローリーだ。しかも…上手く事が運んだとして彼女はマルガリテスの血筋…。手を見誤れば、姉上の煩いが増える』
減らそうと思っても、次から次へと問題が起こる。だが…
確証が得られただけでも良き手土産となろう。
『…』
黙り込んでいる側近をフィデリオはふと見やる。
この側近は何を考えてるか…まさか…
『最近、私が留守の間チョロチョロしているらしいな』
側近は気まずそうにフィデリオから顔を逸らす。
『色仕掛けは得意分野だろうが今回はやめておけ。
今回だけはダメだ。そんな事をしたら後が面倒だ。
余計にややこしくなる』
返事もしない側近を、フィデリオは牽制する。
らしくも無い…フィデリオは呆れた様に溜め息を吐いた。
『まさか本気じゃないんだろ?
女の肌が恋しければ幾らでも抱いたらいい。
帰ったら嫁を娶るのも良かろう。
ベルナルディの名を受け継ぐのなら、姉上の許可など要らない。側室も欲しければいくらでも娶れば良い。
だから…もう、やめておけ』
忠告はしたぞ、という目でフィデリオは側近を睨みつける。
この鷲の目の男が素直に聞く事を信じて。
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