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しおりを挟むそれからもエヴァリーは寝食をわすれて勉学に勤しんだ。
一体どうしたんだ……と困惑する教授陣もびっくりの快進撃で、遂には前から数える方が早い順位までエヴァリーは食い込んだ。
やれば出来るじゃん——……と一番驚いたのは他でも無いエヴァリーだったが……
それと同時に、パーベル・アビーの姉妹校留学制度を利用して、留学しないかとお声が掛かった。
外国語の成績が良かったのもあるが、エヴァリーも進路には留学を含めていた。
新しい土地へ行く……––––
不安もあるが、その方が自分の中に居る魔女にとっても、自分にとっても良いと確信があった。
ただ粛々と課題をこなして、他の事を考えないように日々を過ごす——……
「ずっと同じ場所にいない方が良いってデクランさんも言ってたんだよね。
魔女の気性を抑え込むにも、その方が良いって私も思ってる」
エヴァリーがリリアンにそう告げると、リリアンは取り乱したが、丁寧に説明し直すとなんとか納得してくれた。
「エヴァは、それで良いの?エヴァはそれで、幸せなの?」
リリアンがそう尋ねると、エヴァリーも返答に困ってしまう。
「今だって不幸せじゃないよ。いろんな幸せがあるから、世界各国探しに行くよ」
エヴァリーがそう微笑むと、リリアンは大粒の涙を流してエヴァリーに抱きついた。
可愛い、はー幸せ……––––
そう思いながら、エヴァリーもキツくリリアンを抱きしめる。
「どこへ行っても、私達の関係は変わらないわ」
リリアンの言葉に、エヴァリーも込み上げるものがあった。
ただ頷きながら、エヴァリーはリリアンを抱きしめ続ける。この温もりを忘れない様に……––––
時折街に行くと、ダメだダメだと思っても、どこか期待してエヴァリーは古書店を訪ねてしまった。
勿論、そんなばったり会う事は無かった訳だが––––
2度、街でアイゼイアを見かけた。
一度は普通の書店で 女生徒と楽しげに本を選んでいた。
あの日の自分達と重なって、側から見れば、エヴァリーもあんなふうに楽しげにしてたんだと、やはりどこか胸が苦しくなる。
二度目は遠目から、楽しそうに男女のグループで街を歩いていた––––
遠くても、あの麗しさはどうしても視界に入ってしまう。
それに気付くリリアンとオースティンが気まずそうにするので、気にして無いフリをするのにエヴァリーも必死だった。
男女のグループはそんな事はお構い無しにエヴァリー達に近づいて来る。
自然に、避けることも無くエヴァリーはアイゼイアとすれ違った。
ほんの一瞬だけエヴァリーがアイゼイアに視線を移すと、楽しげで話すのに夢中になっていた。
——楽しそう……
アイゼイアは、本来ああいう場所にいる人だ——
人に囲まれて、尚輝く……——
眩しいくらいに、アイゼイアは輝いていた。
すれ違って、エヴァリーはどこか安堵したのに、理由さえ分からない衝動に駆られて、つい後ろを振り返ってしまう。
ただ、頭を後ろに少し、ほんの少しだけだ。
ただ後ろ姿だけでも——……そう思ったのに、エヴァリーは驚きに目を見開いてしまう。
そこには同じ様に振り向くアイゼイアが、煌めく青い瞳をエヴァリーに向けていた。
余りにも驚いて、エヴァリーは呼吸するのも忘れてしまう。
〝「エヴァ?」〟
そう言ってくれるのでは無いか––––
だが、アイゼイアは目があった気まずさから軽く頭を下げて、すぐ視線を戻した––––
胸が引き裂かれる位にエヴァリーは悲しかった。
だが、覚悟していた事だ––––
それに、想像してたより痛く無い……
また魔女のお出ましかとエヴァリーは構えたが、魔女はアイゼイアの記憶を消した日以来出て来てくれ無い。
留学先への日程が決まり、その前に年末の休暇を利用してエヴァリーは現地へ向かう。
今頃向こうは年末の交流会……––––
リリアンはまたオースティンと一緒だ。
アイゼイアも、卒業前の最後のイベントで会長と一緒だろうとエヴァリーは思った。
不意に、エヴァリーは真っ白な便箋を取り出す。
送る予定の無い手紙を、エヴァリーはそこにしたためた。
〝お元気ですか?交流会は上手くいきましたか?こちらは雪が降っていて……〟
そう書き出すと、止まらなくなって、エヴァリーはただペンを走らせる。
それを書き終えると、空になったお菓子の缶へそっと仕舞い込んだ。
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