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34 ビジネス・パートナー?
しおりを挟む「これは、大変貴重な『生きたダンジョン』……しかも、もしかしたら『ダンジョン・マスター』すら存在しているかもしれません」
「ダンジョン・マスター?」
「ええ、ダンジョンを管理すると言われている高位の魔族の事です」
この辺りでは、コアの『主』の事を『ダンジョン・マスター』と呼ぶのか。
「へぇ、そんなダンジョンが有るんですね」
俺はあまり白々しくならないように気をつけて相槌を打つ。
「もし仮に、『ダンジョン・マスター』が居てくれるのなら最高です」
おや? 意外だ。
人間は基本的に魔族を毛嫌いする傾向があるのに。
「それは意外です。魔族とは人間の敵ではないのですか?」
俺の質問に、ボーギル殿はニッと朗らかに破顔する。
「理由は簡単ですよ。ヤツ等には知能があります。知能があるヤツであれば交渉が可能。魔族と仲良くできるかはわかりませんが、絶対に譲れない部分さえ折り合うことが出来れば、お互いの落としどころは見つけられるはずです」
「……なるほど。それは良い考え方ですね」
こいつ、目の前の俺こそが、その『ダンジョン・マスター』だと分かってるのか?
まぁ、そこまでは気づいていないだろうなー……
だが、コイツの考え方は悪くない。
こういうタイプの人間は、利害が合えばビジネス・パートナーとして組める人材だ。
「ちなみに、仮にあのダンジョンに『ダンジョン・マスター』が居るとしたら、何を望むんですか?」
「そうですね、第一は、この街の市民だけを守ることでしょうか?」
「市民……だけ、ですか?」
人間を守る、とかじゃないんだな。
淡泊すぎて驚きの回答だ。
思わず俺が目を丸くしてしまったのを見て、彼は豪快に笑った。
「ええ、流石に危険を承知で森やダンジョンに自ら入る者や住民税を納めない犯罪者まで守るつもりはありません」
ふむふむ。
……となると、ゴブリン・コボルト・オーク辺りは雑食性だから別の餌さえ十分ならば「街中の人間は喰うな」という指示が可能なため共存できそうだが、そもそも人間が主食な食人鬼種の育成は難しいってことか。
うーん、オーガ種は単体でもポイント増加率高いから美味しいんだけどなー……
でもオーガは増殖難易度が高いし、人間は万年発情期だから、環境さえ整えてやればモリモリ増える。
まぁ、この辺は地域柄、もともと人間が大量に居るし、この街をまるまる俺のダンジョン陣地内に飲み込んでしまえば最終的に数の暴力でポイント増加力は人間の方に軍配が上がる。
このダンジョンの場合は、人間種メインでポイント増加を目指した方が良いだろう。
「ははは、手厳しい。それでは、私もきちんと納税をしなければいけませんね」
「いや、カイトシェイド殿はこの屋敷を購入した際に納めていただいておりますよ」
そんな訳で、後日、正式な調査団がウチの接待用ダンジョンに入る事で話がついた。
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