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本編

ショートケーキ①

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 ──ピーンポーン──

 夜だと言うのに、インターホンの音が鳴り響いた。

 時計を見ると、午後9時だ。誰かが訪ねてくるにはいささか遅い。誰だろう? と訝しがりながらも、なんの警戒もせずドアを開けた。



「はーい。」



 ガチャっとドアを開けるとそこには、徳仁のりひとの姿があった。

 ドアスコープで確認しなかった自分を恨みながら 急いでドアを閉めようとするが、ドアの隙間に徳仁の足が入る方が速かった。



「なに俺から逃げてんだよめぐる。」

「……明日、入社式で早いから帰って」

「ああ、知ってるよ。だからお祝いにケーキ持ってきてやったんだよ」

「いらない。いいから帰って」

「なんもしねぇよ。入れろよ。」

「嫌だ。帰ってよ徳仁」

「……環が男に突っ込まれてアンアン喘いでる動画、ネットに流されたくなかったら入れろよ」



 手に持ったスマホから大音量で聞こえて来たのは苦しげに喘ぐ俺の声とぐちゅぐちゅと響く卑猥な水音で、画面にはネクタイで手首を縛られ目隠しされてぐったりとしている俺が何度か来た事のある徳仁の友人に犯されている姿が映し出されていた。

 驚きに手の力が緩んでしまった瞬間 ドアが大きく開いて徳仁は家の中に入ってきてしまった。



「……消してよ。そんなのいつ撮ったの?」

「俺とのハメ撮りも有るし、迅雷じんら達と回した時のもある。環が飛んでんのにヤられまくってイキまくってるえっろいヤツ。エロビにしたら売れるぜ? いっそ会社員なんかやめてソッチでデビューしたらどうだ? とりあえずまだ・・何処にも流してないから安心しろよ」




 卑下た笑みを浮かべて 俺の服を脱がそうとしている徳仁に 愕然としながら従うしかなかった。



「……絶対に、そんな動画どこにも流さないで。お願い。お願いします」

「まあまあ、お祝いのケーキ有るって言っただろ? 玄関じゃなくてソッチで食わせろよ」



 渋々部屋に入れると、案の定フローリングに押し倒されて身動きができないまま服を乱され、そのまま欲望の捌け口とされた。

  事が済んでから、ケーキを食べると言う徳仁に 仕方なくコーヒーを入れた。




「……なんで家わかったの」

「なんでだろうな? 俺と環には赤い糸が繋がってるからかなぁ?」




 ニヤニヤと卑猥な笑みを浮かべながら気色悪い事を言われる。




「……」

「おい、なんか反応しろよ。可愛くねぇな」

「……さっきも言ったけど、明日入社式なんだ。それ食べたら帰ってよ」

「俺は明日休みなんだよ。あ、環はもう寝ていいよ。あとは勝手にヤルから」




 弱みを握られた状態では強く出ることも出来ず、渋々徳仁をそのまま放置してシャワーを浴びに向かった。

 部屋に戻ると徳仁はソファに腰掛けてテレビを見ていた。

 はぁ……やっぱりまだ居る。



「ねえ、帰んないの? 終電無くなるよ?」

「……環、こっち来い。」



 嫌な予感を携えながら横に座ると、先程食べなかった俺の分のケーキを取り出した。



 
「何? 俺今食べないけど」

「俺が食べるんだよ」




 そう言ってドンとソファに俺を 押しつけた。
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