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 そんなことより――と、ラックは話を戻した。

「これから、どうするんだ。まずは俺達の意見に賛同してくれる魔術師を増やすことが重要だと思うのだが」

 ザルフィナが、自身の顎に指を添えて考える素振りを見せながら返す。

「そうですね……まずは、比較的おだやかな魔術師から声をかけていきたいところです」

 心当たりは?――と問うラックに、ザルフィナは「何人か」と返答した。
 彼はメルウィンを横目で見やる。

「メルウィンさんは、どうですか」
「ん~、僕そもそも真面目な魔術師と仲良くなること、あんまりないからなぁ」
「わかります。見ているだけでイライラしますものね、あなた」

「あっはっは。でもま、ザルフィナくんとはまた違った方向性の魔術師たちにアプローチは出来るかも。自慢じゃないけど、僕の知り合い変わったひと多いし」

 それを頷いて聞き、ラックは今後の方向性をまとめた。

「では、そのターゲットとなる魔術師を探すことからだな」
「すんなりいってくれれば楽だけどねぇ」

「相手が人間ではなく魔術師ですからね。そのあたりは、実際に捜してみないとなんとも」

 そこで、ふと疑問に感じたラックが二人に訊く。

「どうやって捜すんだ? まさか地道に歩いて捜すわけではなかろう」

 ザルフィナは小さく笑った。

「そんなことをしていたら、ひとりを捜すのに何年も掛かってしまいますよ」

 挙手をして、メルウィンが言う。

「僕、ひと捜しの魔術は得意だよぉ」
「私も得意なほうかと。……しかし、意外ですね。誰かを捜すことがあるのですか?」

「いや、どっちかっていうと追うよりも追われることのほうが多いから、その相手が今どこにいるのかを調べるためにね」

 それを聞いたザルフィナが呆れ果てた顔をしたが、メルウィンは呑気に笑った。
 ともあれ、これでしばらくの方針は固まったわけである。

 今ここにいるのは、たった三人の魔術師だ。そのうちのふたりは魔術師として優れているものの、それでもたったの三人である事実に変わりはない。

 三人でどこまで世界を変えられるのか――いったいなにが出来るのかはまったくの未知数だが、それでも、やれるだけやってみようと思う。

 魔術師が不当に傷付けられない世界へ――人間と魔術師が支え合える世界へ――変えていきたい。

 それはシンプルで、故に難しいことだろうけれども。
 ラックは、メルウィンを横目で見た。

 なんだかんだで、彼に関してもまだ知らない部分は多い。そういうところも含めて、少しずつ知っていければいいと思う。

 きっと、メルウィンもこの世界に傷付けられた魔術師のひとりなのだろうから。

 当然、今のラックでは実力はまだまだ及ばない。だからこそ、せめて隣で共に戦えるくらいにはなりたかった。

 そうして、なにかあった際には師匠を支えられるように成長したい。
 ラックは、ミサを思い起こした。
 次に彼女の顔を見るときには、今より少しでも成長していたいものである。

 もしもラックがメルウィンに認められるほどの魔術師になっていたら――ミサはどんな反応を見せるだろうか。ラックをうらやんだりするのだろうか。

 想像してみると、それは少し気分がよかった。なんだか、姉に勝った弟のような気分になる。いや、決してラックはミサと姉弟のごとき関係ではないけれど。

 ラックは、改めて気合いを入れ直した。
 頑張らなければならないのは――これからなのである。



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