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しおりを挟むラックがミサに尋ねてきた。
「ミサ、お前……なにをした……?」
「わ、わかりません……私は、なにも……」
「――首からさげているものを、出してごらん」
そう言ったのは、少しふらついた足取りで歩んできているメルウィンである。
ミサはハッとして、言われた通りに首からさげていたものを引っぱり出した。
そう、ミサが首からさげていたのは――アンナからもらった、ラピのネックレスである。
もらったときは普通の青い石のように見えていたそれが、今は淡く発光していた。
もしや、これがミサの身を守ってくれたのだろうか。
驚いた面持ちで、ラックがネックレスを見る。
「なんだ、それは。お前、いつからそんなものを……」
これに答えたのは、メルウィンだった。
「ザルフィナくんの城に向かう前に、ちょっとお世話になった街の女性からもらったものさ。さぁ、ザルフィナくん。君なら、このラピの石がどれほどのものか、わかるだろう」
話をふられたザルフィナは、苦い顔をしてラピの石を注視する。
「……なかなかに良質なものですね。おまけに、長い年月をかけて少しずつ魔力が蓄積されていた痕跡もあります。……なるほど。ラピの石は、災厄を跳ね返すチカラがある。それが、先程の私の魔力に反応したわけですか」
「当たりだ。さらに付け加えると、ここに来る道中で僕やミサちゃんの魔力を蓄えていたのも大きいだろう。それが、今の持ち主であるミサちゃんの危機に反応して瞬間的に魔力を爆発させ、結界を作ったわけだ。
……もっとも、蓄えていた魔力を全部放出しちゃったから、今のそれは普通の石とあんまり変わらなくなっちゃったけどね」
言って、メルウィンはザルフィナに向き直った。
「だが、それで充分だ。悪いけど、君にもう一度同じ手を使わせるほど僕も優しくはない。まぁ、今の君にそんな魔力の余裕はなさそうだけどね」
ザルフィナはメルウィンを睨む。
メルウィンは重ねた。
「大魔術は、本来なら普通の魔術以上に入念で大掛かりな準備が必要だ。でないと、術者に負担が掛かりすぎるからね。だが、君は先程その過程を全部すっ飛ばして強引に大魔術を発動させようとした。そうして、それを跳ね返された……」
瞳を細めて、彼は微笑する。
「しばらくはゆっくり休まないと、体がギッシギシになるはずだよ。あんな乱暴な魔力の使い方、僕だってしたことない」
メルウィンは、未だに起き上がれないでいるザルフィナのもとに歩み寄り、そうして膝をついた。
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