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しおりを挟むザルフィナの拘束から逃れたラックを確認したメルウィンが、高笑いをした。
「あーっはっはっは! 詰めが甘いねぇ、ザルフィナくん!」
「……本当に不愉快なひとですね」
低い声で呟いたザルフィナの杖の宝玉が光る。
直後、部屋の床すべてを覆うほどに巨大な魔法陣が彼を中心にして広がった。
そうして、その魔法陣から現れたのは、魔法陣の中にいる者すべてを捕らえるほどに巨大な檻である。
この檻によって、室内にいる全員が逃げ出せない状況となった。
メルウィンは檻に目線をやりながら笑う。
「おやおや、ずいぶんと大雑把な捕らえ方だねぇ」
「捕らえているつもりはありませんよ。単に逃がさないようにしているだけです」
返したザルフィナは床を蹴って、メルウィンのふところに飛び込んだ。
「おっとぉ」
振るわれた杖を、メルウィンは回避する。
だが次の瞬間、そんなメルウィンの動きを予測していたふうに、ザルフィナが魔術で編んだ鎖をメルウィンに投げつけ、彼の足を拘束した。
「あら?」
なんともマヌケな声を発したメルウィンの足を、ザルフィナは鎖で引き寄せる。
「あら~~~!」
彼は抵抗も出来ないまま、ザルフィナのもとへ引きずられていった。
「メルさん!」
メルウィンを拘束した鎖をザルフィナは振りまわし、そのままメルウィンを乱暴に床へ叩きつける。
ミサがメルウィンのもとへと駆け寄ろうとしたが、ラックはミサの腕を掴んでそれを止めた。
不安そうに振り返ったミサに、ラックは首を横に振る。
ザルフィナは床で動かなくなったメルウィンを見ながら、薄く笑った。
「ふん、忘れたのですか。ここは私の城です。あなたよりも、私のほうが有利に戦えるに決まって――」
「本体はこっちなんだよねぇ」
いつの間にか、メルウィンの姿がザルフィナの背後にあった。鎖の先には今も確かにメルウィンが拘束されているにもかかわらず、だ。
そう、メルウィンは魔法で囮を作り出したのである。
「なっ――」
驚いた表情で振り返ったザルフィナの胸ぐらを掴んだメルウィンは、そのまま彼に頭突きを繰り出した。
さすがにそんな攻撃をされるとは予想していなかったのか、ザルフィナが立ち眩む。
メルウィンの攻撃は、まだ止まらない。
彼はザルフィナの隙をついて、今度は彼に背負い投げを繰り出した。
魔術師が魔術師を投げる光景は、なんとも奇妙であった。
床に叩きつけられたザルフィナが、痛みに呻く。
そんな光景を、ミサが唖然として見ているのをラックは視認した。魔術師同士の戦い方とは思えないのだろう。
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