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しおりを挟む「……うちの子が、世話になったようだね」
「ああ、すみません。お世話をするつもりはなかったのですが、少しばかり察しの悪い子でしたので」
「ふふ、逆だろう? 察しがいいから、君のお世話になってしまったんだ」
「なにをおっしゃっているのやら」
「あっはっは」
直後、ミサの目の前で急に爆発を思わせるほどの強風が巻き起こった。
なにが起こったのかわからず、ミサは腕で顔を庇う。
続いて、なにかが激しくぶつかる音が何度も繰り返されたが、舞い上がる砂埃も視野の妨げをして、状況を把握することが出来なかった。
が、その砂塵の幕はすぐに風に裂かれることとなる。どうやら、家の壁や屋根にあいた穴から風が入り込んだ結果らしい。
砂埃が薄れていき、徐々に視界が明らかになった。
見ると、メルウィンとザルフィナがそれぞれ自身の杖を武器にして、それを剣のごとく至近距離で噛ませ合っている。
二本の杖は交差して、軋んだ音をあげていた。
ミサの目には、ふたりのチカラは互角に見える。
双方が互いの杖を弾いて床を蹴り、後方へ跳んで距離をとった。
メルウィンは依然としてミサを庇うふうに立ちながら言った。
「ふむ。さすがは世界屈指の魔術師なだけはあるね。不意を突いたつもりだったけど」
「あなたの性格を把握していれば、これくらいは容易いですよ」
「おや、僕の性格を知っているのかい?」
「知っているもなにも、魔術師メルウィンが優柔不断で女性にだらしがなくて、約束もすぐにやぶる卑怯者だという事実は有名ではないですか」
ザルフィナの発言のあと、僅かな沈黙があった。
軽くショックを受けた様子で、メルウィンが返す。
「え……ぼ、僕って、そこまで皆にクズだと思われてるの……?」
「もしや無自覚だったのですか? ならば、もう少し日頃の言動を改めたほうがよろしいですよ。私とあなたは確かに世界指折りの魔術師として皆に名を知られてはいますが、正直に言いますと、あなたと共に名を語られるのは非常に不愉快なのです」
「ああ、さっきから妙に態度が刺々しい理由って、それ? おかしいなぁと思ったんだよね。僕と君、初対面なのに」
「ふふ。本当は、顔を合わせたくすらなかったのですけれど」
「わぁ、笑顔で言われるぶん攻撃力が高い」
どうやら、ふたりの相性はとんでもなく悪いらしかった。
だが、見たところ彼らの性格は正反対であるようなので、それも仕方がないのだろう。
相変わらずの冷ややかな微笑のまま、ザルフィナが継ぐ。
「そんなわけですので、私は早く仕事を終えて帰りたいのですよ。本当はあのドラゴンライダー達が彼女を連れて帰ってきてくれれば一番よかったのですが……さすがに、メルウィンさんがいればそんなわけにもいきませんしね」
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