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しおりを挟む淡く発光する半透明の壁が、ミサと炎のあいだに一瞬にして現れた。
ミサの目の前で、巨大な炎の塊が轟音と共に弾け飛ぶ。
咄嗟に腕で顔を覆い、ミサを両目を瞑った。
次いでおそるおそる目をあけ、顔を上げてみれば――ミサとラックに向かっていたはずの業火は、跡形もなく消滅していたのだった。
唖然としたのはミサばかりでなく、ドラゴンに乗っている男も同様である。
半透明の壁は、依然としてミサの前にそびえていた。ドラゴンの攻撃が直撃したにもかかわらず、傷ひとつ見当たらない。
「な……なんだ? どうして、ドラゴンの攻撃が……」
刹那、戸惑う男の背後に、音もなく人影が現れた。
その人影が手に持った長い武器で男を殴り飛ばし、男をドラゴンの背から叩き落す。
「うわあああああ!」
声を上げながら男は落下して、真下にあった民家の屋根を豪快に割った。
屋根の破片があちこちに飛び散り、舞い上がった砂埃がミサの視界を塞ぐ。
「――まったく、隠れていなさいと言ったのに」
その声に、ミサは半ば無条件で安心した。
風で土煙が薄れ、ドラゴンの背に立っている人物のシルエットが徐々に明らかになっていく。
そう、そこに立っていたのは、メルウィンだった。彼は少しばかり呆れた口調で言う。
「君といい、ラックくんといい、僕の同行者は本当に無茶をする子ばかりだねぇ」
「メルさん……!」
「はい、メルさんだよぉ」
軽く返すメルウィンの足下のドラゴンが、主を失っていくらか戸惑う素振りを見せた。
すると、様々な方角からドラゴン達が何頭もこちらに向かって飛んでくるのが視認できた。仲間がやられたのを察して、集まってきたのかもしれない。
ドラゴン一頭だけでもこの街を破壊するには充分すぎるくらいだろうに、それが複数いる事実にミサは信じられない思いがした。
加えて、さすがのメルウィンでもドラゴンを何頭も相手にするのは厳しいのではないか――という不安も芽生える。
しかし、心配するミサに反して、彼の表情から余裕が失われることはなかった。
やや眉尻をさげながら、メルウィンは飛んでくるドラゴン達を目で確認する。
「ひとを探すだけなのに、あれだけのドラゴンを連れてくるなんてね。ちょっとやりすぎだけど……まぁ、僕のせいでもあるか」
呟いたメルウィンの肉体が、不意に淡い光に包まれた。
そうして、彼は右手で優しく足下のドラゴンを撫でる。
「さぁ、君を支配しようとする人間はもういない。いい機会だから、ここで溜まってたストレスを発散しちゃいなさい」
メルウィンがドラゴンにそう声をかけた直後、ドラゴンも彼と同様の淡い光に包まれた。
次いで、竜の鋭い双眸が真っ赤に発光する。
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