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しおりを挟むどれだけの時間が流れただろう。ほんの数秒だった気もするし、何十分も経ってしまった気もした。
感情の読めなかったメルウィンの表情が、不意にほぐれる。
彼は微笑して、短く言った。
「……わかった」
彼は居住まいを正して改めてミサに向き直り、続ける。
「なら、協力しよう。っていうか現実的な問題として、この件には僕のような優秀な魔術師がいないと、話にならないからね」
「自分で言うな」
ラックの指摘に「だって本当のことだもん~」と、先程の真剣な雰囲気が嘘のような軽さでメルウィンは返した。
ミサは不思議な心持ちで、メルウィンを見上げる。
すると、ミサの視線に気付いた彼が片方の眉を持ち上げた。
「ん? どうしたんだい」
「いえ、あの……協力してくれるのは、とても有難いんですけど……でも……」
先が言いづらく、言葉を濁したミサの心情を察したのか、メルウィンは「ははーん」とミサの顔を覗き込む。
「どうして僕達が協力するのか、その理由がわからないんだね?」
「う……。まぁ、はい。私、お返し出来るものもなにも持ってませんし……私に協力するメリットが、メルさん達にあるのかなって……」
「まぁ、君が男だったらたぶん見捨ててたよね」
さらりと、とんでもないことを言われた。
ラックも眉間にしわを刻み、苦言を呈する。
「もう少しオブラートに包んだらどうだ」
「だって、嘘はよくないよ。嘘は」
「貴様、どのくちで……」
「あっはっは」
弟子の鋭い眼差しを、師匠は無駄に軽やかに笑って受け流した。
メルウィンは話題を戻す。
「まぁ、半分は冗談として」
「半分は本気だったんですね」
「まぁまぁまぁ。ともかく、君からすれば、僕達が協力することにメリットはないように見えるのかもしれないけれどね。そもそも魔術師というのは、基本的には好奇心が旺盛なんだよ。旺盛な好奇心のままに突き進んだ結果、魔術師になった――という言い方も出来るけどね」
「師匠の場合は、もう少し女性に対する好奇心を抑えてもらいたいものだが」
「それは僕に、呼吸をするなと言うのに等しいよ」
手をひらひらと振って、メルウィンは継ぐ。
「そんな魔術師からしてみれば、異世界から来た人間なんて興味深いに決まってる。本当なら、わざわざ探し出してでも交流を持ちたいところだよ」
「そんなもの……ですか」
「そんなものです。だから、共に行動するだけでメリットはあるんだ。実際、面白い話はたくさん聞けるしね。あとは……」
考え込むように、彼は僅かな沈黙を挟んだ。
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