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しおりを挟む当然と言えば当然なのだが、疲労感が尋常ではなかった。荒い呼吸を繰り返しながら、紅葉は急速に襲ってきた睡魔に意識を侵食されていく。レオナルドの様子が気になったが、あまりにも体が重かったために、億劫でそちらに視線をやることすら叶わなかった。
瞼がひとりでに落ちていく。彼がなにかを言った気がするけれど、もはや今の紅葉にはそれを理解するだけのちからは残っていなかった――。
*
目覚めると、清潔なベッドの上にいた。紅葉は、自分の身になにが起こったのかを思い出すのに暫しの時間を必要とした。
たしか、空から落下していたのだと思う。そうして誰かに助けられ、それから――。
すべてを思い出して、勢いよく上体を起こした。そこは、紅葉がレオナルドから貸し与えられた寝室であった。
部屋を見まわすとすでに日は落ちていて、窓からは月明かりが射し込んでいる。室内は、薄暗い。
紅葉はあわてて自分の姿を確認した。この世界に来たときに着用していた制服ではなく、明らかにサイズが大きなシャツを着ていたが、下着は身につけていなかった。
あれから――レオナルドに抱かれてから、どれだけの時間が流れたのだろう。彼は魔法使いが使用した魔法の影響を受けていたが、それはもう大丈夫なのだろうか。ひとりきりの室内で、紅葉は様々な疑問を脳裏に思い浮かべる。
すると、静かに部屋の扉がひらいた。見ると、戸を開けたのはレオナルドだった。
彼は起き上がっている紅葉を確認すると、安心したような申し訳ないような、なんとも複雑な表情をする。
「……起きていたのか」
レオナルドはそう呟いて部屋に入ってくると、そのまま紅葉の隣にやってきてベッドのふちに腰をおろした。
紅葉は相手の顔色を窺いながら尋ねる。
「あの、体調は……」
彼は苦笑した。
「まさか、君から体調の心配をされるとはね、……私のほうは、もう落ち着いたよ。おかげさまでね。……君のほうは……」
紅葉はレオナルドに抱かれたことを思い出して、顔を熱くする。
「あ……えっと、その……大丈夫、です。はい……」
そして、室内に静寂が訪れる。
長い沈黙の末に、彼は言った。
「……すまない……。謝ってどうにかなるものではないことはわかっているんだが……。私は、君に酷いことを……」
その姿があまりにも沈痛だったため、紅葉はあわてて首を横に振った。
そもそも、あれはレオナルドのせいではない。悪いのは彼ではなく、あの地震を起こした魔法使いなのだ。レオナルドは、その影響を受けてしまっただけに過ぎない。
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