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第7章 学園生活 不穏な夏休み編

第180話 アリアナ・ムーンシャドウ

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 食事を終え、ルシャノフの入り口に向かっていた。

「そういえば私って入って大丈夫なんですか?」
「なんでだ?」
「王の命令とか兵士の人が言ってたけど」
「大丈夫だろ、この町の兵士は全員俺の部下だからな、アリアナの奴は砦で書類仕事に追われてるし、奴の部下は王都や各地に散らばってるからな。どうとでもなる」
「騎士じゃないんですか?」
「騎士団という扱いだが、アリアナはどちらかというと暗部だからな」
「暗部?」
「暗殺や諜報なんかがメインの仕事だ」

 それって、騎士じゃなくない?

「騎士なんですか?」
「国の扱い上はな」
「扱い上?」
「あぁ、例えばだ、第1騎士団は近衛だ、王の護衛が主な仕事だな」
「うん」
「第2騎士団は、宮廷魔道士だ、魔法に特化した奴らが所属している」

 リリアンの所だ。

「そして、俺の第3騎士団は海軍だな、平時は海上の治安を守ることが主な任務だ」
「うん」
「そしてアリアナの第4騎士団は、さっきも言ったように暗殺や各地の情報収集なんかが主な仕事だな」

 “4=死”という意味では、繋がりがあるのかな?

「そして第5騎士団は工兵だな、建築なんかを得意としてな、国の施設なんかを修復したりしてる」
「なんかいっぱい役割がありますね……」
「そりゃな、続けるぞ、第6騎士団は純粋な衛兵だな」
「純粋な?」
「光魔法を得意とするやつらでな、攻撃魔法は不得手なんだよ」
「それで、治療がメインと……」
「そういうことだ、第7騎士団から第12騎士団は前線専門の部隊だな」

 まだそんなにあるのか、第10騎士団が後詰め水害で壊滅、第11と第12が自然災害“?”で壊滅したと。

「味方になりそうな騎士団は?」
「リリアンの第2、俺とアリアナの第3、第4、第6のイザベラ、第9のトリスタンと第10のユリウスのとこだな」

 あぁ、やっぱりリリアンが行方不明って言っていたユリウスは水害で流されたのか……。

「第10~12は自然災害とかで既に……」
「自然災害ねぇ……、詳しくは聞かねぇが今回前線に行けって言われた奴らだな」

 グレンとやり合ったガレスには何か思うところがあるんだろう。

「そういえば、メイから馬がいると聞いたがどうしたんだ?」
「いないね~」
「あの子も精霊種なんですよ」
「おまえさんの周りには精霊ばっかりだな」
「そりゃ、精霊使いですから」
「そうだったな」

 そんな話をしていると、町の入り口にある門が見えてきた。

「団長!」
「こいつは俺の客人だ、それから今いる奴に伝えとけ、夕方から行動を起こすと」
「っは!」

 行動を起こすって、王都に向かうって事だろうか?

「さて、行くぞ」
「っは!どうぞお通りください!」

 先ほどとは違って簡単に町の中に入った。

「先にメイを送って行くが良いか?」
「どうぞどうぞ」

 その後、ガレスの自宅にメイと奥さん用のお弁当を届けた。ガレスの奥さんは同じ白狐人族の美人さんだった。

「それじゃ、砦に向かうぞ」

 砦までくると、軽装の兵士達がいっぱいいる。彼らも騎士団の1員ってことだろうか?

 ガレスの後に続いていると、一つの部屋の前で止まった。

「お~い、アリアナ入るぞ」

 ガレスは、そう言いながら扉を開けた。

 中からの返事待たなくて良いのかな……?

 ガレスの横から見ると、中には黒い毛色の獣人女性がいた。

「ガレス、私はまだにも言ってないのだが?」
「俺とおまえの仲じゃねぇか」
「はぁ、ほんとにおまえに何言っても無駄だな……、で、そっちの子がリリアンが言っていた子か」
「あぁ」
「ようやくか」

 ガレスの言葉にそう返すと、私の方にツカツカと近寄ってきた。

「私はアリアナ・ムーンシャドウ、第4騎士団の団長だ」

 そう言ってアリアナが右手を差し出してきた。

 握手かな?
 そう思い手を伸ばそうとした瞬間。

『彼女の手に触れないでください』
『試されているな』
『毒針が仕込まれてるよ!』

 なんと……。

 アクア、グレン、フゥが何も言わなければ、間違いなく毒針に刺されていただろう。

「どうした?握手を知らないのか?」
「いえ、精霊達が毒針が仕込まれているって……」
「おいおいおい、そんなことしてんのかよ」
「ふぅ、実力は本物か、それにお前、とんでもない魔素を持ってるな」

 そういえば、私の魔素のせいで圧を感じる人がいるって、以前精霊達が言っていたのを思い出した。

「そうなのか?」
「はぁ……、お前は本当に鈍いな」
「こいつの側にいる火の精霊と手合わせしたが、まったく歯がたたんかった!」
「当たり前だろ、精霊は自然そのものだ、自然にちっぽけな我らがかなうわけあるまい、そうじゃない、彼女自身も相当の実力者だ」
「本人は弱いって言ってたが……?」

 ガレスは、あまり細かいことを気にしないタイプだね。

「はぁ、腕っ節じゃない、魔法だ、この国の魔法の使い手全員集めても彼女には勝てないだろうよ」
「そうなのか!?」
「いや……、そこまでじゃないと思う……」

 過大評価だ、なんて思っていると。

『アリアナの評価は妥当ですよ』
『クリスタル・マリナー使えば国1つくらい余裕で滅ぼせるからね~』
『まぁ、あれはな……』

 ……。

「それほどか?あぁ、だからか」
「あぁ、王都の結界はそれを見越してだろうな」

 そういえば、忘れかけていたけど、それがあったのを思い出した。

「城の一番高いところに埋められてるのですよね」
「ほぉ、それも知っているか、その通りだ、あれをどうにかしない限りは王都内では魔法を使えん、魔法どころか一部のスキルも使えんが」

 スキルも?

「そのための俺等だろ、こいつはあくまでもサポート、俺等が王を倒すためのな」
「そうだったな」

 ふと思うんです。アリアナが暗殺諜報が仕事なら王を暗殺すれば終わると思うのだけど。

「そういえば、アリアナさんが王を暗殺はしないんですか?」
「そんなことが出来ていたら、とうの昔にやってるさ」
「近衛の奴らの中には隠密を看破する奴がいるからな」
「そういうことだ、リリアンと同様に私は王に近づくことすら許されてない」

 リリアンもなのか。

「殺されることを警戒していると?」
「おそらくな、さて長話はここでおしまいだ、ガレス、夕方にも出航するのか?」
「あぁ、そのつもりだ」
「ならば、私は私で与えられた役割を全うしよう」

 与えられた役割?

「って何です?」
「王都内に潜む仲間に連絡だ」
「そういうことだ」

 ということは、一緒には行かずに、一足先に王都に向かうと言うことかな?

「はぁ、なるほど」
「じゃあ、ガレス後は頼んだ」
「あぁ」

 ガレスが返事をすると、アリアナが消えた。

「さて、俺等も準備するか」
「そういえば、ガレスさんはなんで反旗を?」
「ふむ、おれは民を苦しめる王は要らぬと思ってるからだな」

 ガレスとは気が合いそうだ。

「やっぱり生活が苦しいんですか?」
「あぁ、昔は良かったが、今の国王になってからはな……」
「あの……、良かったら何ですが、小麦粉でも麦でも良いんですけど要りませんか?」
「いいか?この国には何千万の人が居るんだ、だから個人で持てる量の麦を渡されてもだぞ」

 ん~、ロシナティスを出てからしばらく経ってるし、多分結構たまってると思うんだけど。

「いまコンテナの中にある麦ってそんなに少ない?」
『いえ、かなりたまっていますよ』
『貯まりにたまっとるで』
「あの、かなりの量があるみたいですけど……」

 どれくらいたまってるんだろうか?

 トロランディア帝国分はもう終わったのかな?

「ふむ、なら事が終わったら頼めるか?」
「はい」
「時間までまだあるが、どうする?」
「ん、暇なんで何か手伝うことがあれば」
「そうだな、兵糧の積み込みなんかがあるが……」
「マジックバッグがあるので良いですよ」
「そうか、なら頼む、こっちだ」

 その後ガレスに案内された兵糧庫にある物を指示通り詰めて、船内に運ぶ仕事を手伝ったけど直ぐに終わってしまった。
 
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