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第7章 学園生活 不穏な夏休み編

第178話 ガレス・ストームブリンガー

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 砂浜で野営の準備をするフリと言っても、どうすればいいだろうか?

「まん丸、砂の家建ててくれる?」
『ほ~い』

 まん丸は返事をすると、直ぐに取りかかってくれた。

「その中で、ぼ~っとガレスって人を待ってれば良いかな?」
『良いと思いますよ、なんならこの沖合で取れる魚を捕りましょうか?』
「そうだね、せっかくだしお昼にしようか、まん丸調理する?」
『もちろん~!グレンもお願い~』
『お~よ、任せろ』

 最近、家事は精霊任せになってきたなぁ、洗濯はアクアの魔法クリーンで対応、料理はまん丸が積極的にやってくれる。

 しばらく待っていると、アクアが割と大きな魚確保したらしく、海辺に氷漬になった魚が打ち上げられた。

『ブルーフィン・マーリンだね~』
『えぇ、沖合で採れるので』
『お昼はごちそうだ~、魔素もらうよ~』
「どうぞ~」

 まん丸のテンションが上がっている。

 これは美味しい奴だ!

 まん丸が、砂浜の砂を利用してサンドゴーレムになり、砂浜の砂鉄でナイフを調達して、野外で魚を裁いていく、調理はアクアとグレンの協力を得てどんどん進めていく。

 まん丸が調理中は、まん丸の作ってくれた砂の家でのんびりくつろいでいるが、ここもアクアとフゥが室内温度を快適な状態にしてくれているので、精霊達の調理する光景を見ながら快適に過ごしていた。

「おいおいおい、サンドゴーレムが魚捌いてやがる」

 人の声が聞こえたので砂の家から出てみると、メイとその父親と思わしきガレスが居た。

「こんにちは」
「あっ、お姉ちゃん!」
「おまえがメイの言ってた精霊使いか」
「どうも」
「わりぃ名乗ってなかったな、ガレス・ストームブリンガーってんだ、メイを助けてくれてありがとな」

 ザ・軍人といった感じに図体もでかければ、動作もでかい!

 おもいっきり肩をバンバン叩かれた。

「痛い……、私はラミナです」
「わりぃ、わりぃこんな所もなんだし町の中に、って言いたいが、これから食事か」
「そうですね」

 私が答えると、直ぐ近くから小さな腹の虫の鳴く声が聞こえた。

「お腹空いた……」
「お昼はまだだったからな」

 アクアが確保したブルーフィン・マーリンはかなり大きい魚だし、ガレス親子と一緒にご飯食べても良いかな?

「まん丸、メイちゃんとガレスさんの分もお願いして良い?」
『いいよ~』

 まん丸のサンドゴーレムが2度頷きながら答えた。

「まん丸ってのは、魚を裁いている精霊の名か?」
「です」
「はぁ~、精霊に料理させてんのかよ」

 なんだか、私が料理しないように聞こえるが、それは違う、まん丸が美味しいものを食べるために自らすすんで料理してくれるだけだ。

「まん丸は美味しいものを食べるために料理してくれるんですよ」
「精霊さんもご飯食べるの~?」
「いや、精霊達はご飯食べないけれど、私と感覚を共有するの」
「はぁ、おまえさんが味わっているもんを精霊達も味わえるって寸法か」
「そういうことです」
「大半の人間にとっては食は楽しみだからな」

 多分ミントたち精霊も私と共有するから食を楽しみにしている気がする。

『ボクらも楽しみだからねっ!』

 精霊達を代表してフゥが答えていた。

「精霊達も、みたいですよ」
「だろうな、わりいな俺等の分まで」
「いえ、結構大きな魚を持ってきてくれたので」
「魚も精霊か?」
「水の精霊さん“が”ですね」
「はぁ、便利なこったな」

 色々と助かっているのは事実だ。

 しばらく待っていると、辺りを良い香りが漂い始めた。

「ほぉ、倭国のたたきって料理か」

 倭国を知っている?

「知ってるんですか?」
「何をだ?」
「倭国を」
「知ってるも何も、俺等は元々倭国に住んでたんだよ」
「お母さんの生まれが倭国なんだ~」
「あぁなるほど、それでこっちに引っ越してきたってことですか」
「俺の生まれがこの国だからな」
「なるほど」
『ちなみに、ガレスもルマーン国立アカデミーの卒業生ですよ』

 まん丸の側で調理補助しているアクアが教えてくれた。
 
 なるほど学生時代に出会ったってオチか。

「ガレスさんの奥さんとの出会いは、やっぱりアカデミーで?」
「あぁ、そうだが、何で知ってる?」

 少し警戒してる。

「精霊が教えてくれたんです」
「人の過去を覗けるのか?」
「いえ、ガレスさんが私の先輩だって教えてくれたんですよ」
「ほぉ、おまえもアカデミーの人間かよ、見た感じ基礎学年か?」
「1年です」
「とんでもない1年だな、兵士に聞いたぞAランクなんだってな」
「精霊達がいるので」
「今年の武道会で優勝したか?」

 これはなんと言うべきだろうか?

「私は参加してないですね」
「“私は”?どういうことだ?」
「優勝者とエキシビションマッチって形で精霊達が各部門の優勝者と戦ったんです」
「ほぉ、それは面白そうだな、どうだ、メシが出来るまで手合わせしねぇか?」
「私は無理ですよ?」
『俺が相手をしてやろう』

 精霊達の特攻隊長がお出ましですか。

「火の精霊が相手をするそうですよ」
「ほぉ、戦いを司る精霊だな願ってもない」

 グレンが、まん丸の側から、私の側にやってきた。

『ラミナ、魔素を貰うぞ』
「どうぞ」
『溶岩を頼む』
「はいはい」

 グレンが私の肩にとまり魔素を受け取る。私はカバンから冷えて固まった溶岩石をだした。

「手甲も頼めるか?」

 姿を現したグレンからさらに注文が入った。

「はいはい」

 グレンに手甲を渡すと、腕に装着していた。

「そなたのその姿、バフォメットか?」

 バフォメット?

「さぁな」

 グレンの正体はバフォメットって事だろうか?

「ふむ、関係の無い話だったな、すまん」
「いや、いい」
「あっちの平原でやれるか?」
「あぁ、いいだろう」

 グレンが返事すると、目の前から消えた。

「久々に暴れられそうだな!」

 ガレスはそう言うと、グレンが行ったと思われる方向に走っていった。

「お父さんは強いよ~~」
「へぇ、そうなんだ」

 火そのものを相手にどこまでやれるのかな?

 2人の戦いよりも、目の前の魚がどうなるのかが楽しみだった。


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