上 下
177 / 229
第7章 学園生活 不穏な夏休み編

第177話 ルシャノフ入り口

しおりを挟む
 子供達とルナに乗せルシャノフの町まで来た。

 さすがに今回は子供達が居るためフードを被らずに町の入り口まで来た。

「メイちゃん!」

 門近くまで来ると門番をしている兵士2人がメイに気づきこっちに向かってきた。

「怪我は!?」
「だいじょうぶ~」
「俺らも大丈夫!」

 兵士は安堵した表情を浮かべた。

「えっと、君は?」
「お姉ちゃんが助けてくれたの~」

 私が自己紹介する前にメイがフォローを入れてくれた。

 鞄の中から冒険者カードを取り出し兵士に提示しながら自己紹介をした。

「えっと、ルマーン国立アカデミーの基礎学科1年のラミナです」

 兵士が提示された冒険者カードを受け取ると冒険者カードと私を交互に確認していた。

「Aランク……?」
「当然だろ!風を操るんだから!」

 風を操るのは、私がというよりは、フゥがなんだけども。

「ほぉ、風使いでしたか」
「違うよ、精霊使いさんだよ!」
「「精霊使い!?」」

 二人の兵士が何か驚いているが、何かあったのだろうか?

「すまないが、子ども達をここで下ろし帰ってもらえないだろうか?」

 兵士の一人からよく分からない事を言ってきた。

「ぇ?」
「どうしてだよ!」

 私が“何故と”問い返す前に男の子が叫んでいた。

「王の命だからだよ、俺らとしても団長の娘さんの恩人を捕らえたりしたくはないんだ……」
『やはりな、ラミナを捕縛せよって命令が出てたか』

 もしかして、グレンが私の命を狙っているかもって言ってたのはこれ?

『まぁ、捕縛されて町の中に入っても良いと思いますよ』
『だね~、ボクらがいれば捕縛なんて意味なさないからね~』

 確かに、牢に突っ込まれても楽々と脱獄できるのは容易に想像が付くが、脱獄してトラブルになるよりは、兵士の忠告通りこのまま町に入るのは諦めた方が良い気がする。

「わかりました。町の外の海辺とか川辺とかで野営するのは問題ないですよね?」
「あぁ、それなら大丈夫だ、本当にすまない」

 とりあえず、今日は野営かな?

と思ったが、正直まだ昼前だし、この近くで足止めは気が進まなかった。

「どこかおすすめの場所とか有りますかね?」
「そうだな、そっちの城壁沿いに行くと砂浜に出るから、そこがいいんじゃないか?」

 兵士が指さしたのは門の右側だった。確かに丘の上から見た感じ右側は砂浜が有った記憶がある。城壁を挟んで造船場だったかな?

「左側も砂浜なんですか?」
「いや、磯だな、ごつごつした岩場だから野営にはむかんだろ」

 こちらも城壁を挟んで砦になっていた記憶があるが、いっそのことまん丸の力を借りて砦内部に侵入する?

 とりあえず、この町でアリアナとガレスと接触して、王都に向かいたい。

 そしてなんとしても、ファントムフラワーが開花している時期に戻り、ミアンとミッシェルと夏休みを満喫したい。

「わかりました。砂浜の方で野営します。ルナ」

 私が言うと、ルナが子ども達が降りやすいように膝をついた。

「お姉ちゃん!」

 男の子が私に向かって叫んだ。

「いいよ、問題にならないならそれにこしたこと無いから」
「でも~、町には入れないと困るよね~?」
「まぁ、そうだけど、今は良いよ、兵士さん子ども達をお願いします」
「あぁ、任せてくれ、子どもを助けてくれたことを感謝する」

 兵士が3人をルナから下ろしたのを確認し、私はルナの背にまたがった。

「それじゃあ、ルナ、砂浜に向かってくれる?」

 ルナが立ち上がり、何も言わずに道無き原っぱを砂浜に向かい走り出した。

 兵士達が見えなくなったところまで来たのを確認し。

「ルナ、もういいよ」

 私はルナに声かけした。

「さて、どうしようか、トラブル無く二人と接触したいのだけど」
『ガレスに関しては、じきに接触出来ると思いますよ』
「というと?」
『助けを呼びに行った子がガレスに伝えたんだよ~』
「メイちゃんが森の中に入っちゃったかもって?」
『せや、ほんでな、ガレスが門に向かってねん』
「上手くいけば、メイちゃんとそのまま接触して、私のことを伝えてくれるって事?」
『そういうことです』
『ガレスは恩義に厚いやつだからな、恩人に対して何もせずに居るというのはありえんからな、おまけにリリアンからもじきに精霊使いが接触する旨を聞いているだろうよ』

 ふと思ったことがある。
 王が私の命を狙う理由って、リリアンが王に対して何か言ったからじゃないだろうか?

 リリアンのスキルが占星術、ある程度の未来が見えるなら、王国に害する者として“精霊使い”と言っていたら……。

「ねぇ、質問なんだけどさ、リリアンって昔から騎士団員だったのかな?」
『そうですよ、彼女は長い間王国の最高顧問として、この国の繁栄に尽力してきたのですが、王の暴政に耐えかねて最高顧問を降りたんです』

 暴政に関しては、リリアン自身が言っていた。

 そんなにひどいのかな?

 コーレンの町に一泊しただけだけど、そんなに変な感じはしなかったけども。

「降りた先が騎士団?」
『いや、最高顧問の時から第2騎士団の団長の座には着いていたようだぞ』
「へぇ……、ところで暴政って程なの?」
『そうですよ、本当に昔のルマーンを見ているようですね』
『だな、ルマーンは、収穫の2割が年貢だが、この国は6割なんだよ』
「ぇ……、3倍……?」
『せやで、おまけに国から逃げ出したら死刑もんや』
「ぇ……、国境に川流れてたけど、普通に往来できないの?」
『できませんよ、港や桟橋なんてありませんからね』
「ぇ??」

 丘の上から見たときも確かに桟橋っぽいのとか港は無かった記憶はあるけれど。

「この国ってどうやって外に出るの?」
『ミネユニロント方面も、トロランディア帝国にも湾内を船で移動すればいけますよ』
「ぇ?陸では繋がってないの?」
『ミネユニロントとは繋がってるで、川と険しい山やけどね』
「もしかして、戦場になっいてたあの川の上流?」
『そうです』

 なんというか、孤島みたいな状態じゃん!

「ん……、とりあえずこの後どうする?ガレスって人が来るまでここで待つ?」
『砂浜で野営の準備してるふりしといたほうがええんちゃう?』

 まぁ、門番達には野営って言っているし、そうしますか。

「んじゃ、ルナ砂浜までお願い」

 野営の準備をしているフリをするために砂浜に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました

トール
恋愛
駅の階段から足を滑らせて死亡した高橋由利(享年25)は、親友がハマっていた乙女ゲームの世界に似た、しかし微妙に異なる世界へと転生してしまった。 そこは平凡な日本人顔が絶世の美人と言われる、美醜逆転の世界で、ゲームに出てくる攻略対象者達は面影を残しながらも、地味な日本人顔になっていた! そんな世界で、絶世の美女と呼ばれ、大富豪で王族よりも権力があるといわれている公爵家の跡取り娘として転生した由利だったが、まさかの悪役令嬢だった?! しかし、悪役令嬢のフラグを折る運命の相手(婚約者)が現れる。それはヒロインに罵詈雑言吐きまくる名も無きブサモブ(由利視点では超絶美形)。 確かこのモブ君、ヒロインを虐めたとかでゲームの前半に学校を退学させたられたよね? 学校を卒業しないと貴族とは認められないこの世界で、果たして攻略対象者、ヒロインから婚約者を守れるのか!? 良識のある口の悪いモブ(超絶美形)な婚約者と、絶世の美女(地味な日本人顔)主人公との、ざまぁありの美醜逆転ラブファンタジー。 ※この作品は、『小説家になろう』でも掲載しています。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

モブな私は猫と暮らす~婚約破棄されたモブなので猫と静かに暮らしていくはずが大変なことになりそうです~

とわ
ファンタジー
婚約破棄をされた瞬間、同じように婚約破棄されていた貴族令嬢ミーガンに転生した私。 転生早々、元婚約者に悪態をついて追放されて森に追いやられることになる。 そこで出会った黒猫と、森の中で平和に暮らしましたとさ、めでたしめでたしかと思いきや。おとなしい悪役令嬢や元気のいいヒロインがあらわれて、この世界が以前読んでいた小説の中だとわかる。しかも自分の立ち位置は悪役令嬢と暗躍する悪い魔女らしいことも。 そのうえ、登場するはずの3人の王子は現れないしで、知っているストーリーとはことごとく違っていく。 てっきり、モブの令嬢なんだろうとのんきに構えていたのに。猫と平和な生活を送るべくなんとかしなきゃと作戦を考えるけど、なかなか思ったようにはいかなくて…… この作品は「小説家になろう」さんでも掲載しています。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

処理中です...