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第7章 学園生活 不穏な夏休み編

第141話 グレンとワイバーンと地の子

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 イスコの町をでてしばらくは、樹海の真ん中をひたすら歩いていたが、昼前には坂道が多くなり、左側が急斜面になってきた。

『そろそろかなぁ~?』
『そうですね、お願いします』
『は~い、ラミナこっち~』

 まん丸がそう言うと、道を外れてすぐの所に大きな穴をあけた。

「ここに入ればいいの?」

 中は真っ暗闇なんだけど?

『俺の視覚を共有するか』
「お願い」

 グレンの視覚と共有したが、穴といってもあまり深くない状態だった。

「えっと……」

 どのように進んで行くのか分からず戸惑っていると。

『大丈夫ですよ、ラミナが入れば穴は深まっていきます』
「あっ、そうなんだ」

 アクアに言われ、穴に足を踏み入れると、たしかに奥が進んで行く、足元は平面でとても歩きやすい。

 さらに歩みを進めていくと、どんどん穴が進んで行く。

 気づけば背後の穴が塞がっている。天井には木の根と思しきものがちらほらみられる。

「これ地上から大して深くない?」
『だね~今は地上から10mくらいかな~?』
「そうなんだ」

 グレンの視界を共有しても暗い感じがあるが、地の子ども達が整列して道となっている部分を教えてくれている。

「走っても大丈夫?」
『大丈夫だよ~』

 まん丸からOKが出たので走ってみる。

 地の子がせわしなく動いて整列してくれる以外代わり映えの無い真っ暗な世界を身体強化して走り続けた。

『どうしよう~まだ昼過ぎだけど今日の野営予定地が近いよ~』

 私が全力疾走しているとまん丸から声がかかった。

「ワイバーン討伐するなら、地上に出るんじゃないの?」
『そうですね、予定より早いですけど、この先の野営地となるとローグ遺跡ですよね』
『今のペースで進んでも日が暮れるな』
『ここでええんちゃう?』
『それじゃあ、地上に出ましょうか』
『ほーい、ラミナゆっくり歩いて~』

 身体強化を切り、まん丸に言われた通りにゆっくり歩くと、身体が浮く感触に襲われた。

「あれ上昇してる?」
『うん~、もうこの上だからね~』

 上昇している感覚がなくなった瞬間地上に押し上げられた。

 辺りを見渡すと、かなり開けているのだが、崖の側に滑落した馬車の残骸が多く残されていた。

「ここで泊まるの?」
『そうだよ~』
『近くに魚がいる小川もありますし、問題ないと思いますよ』

 いや~、私としては寝ていたら上から馬車が降ってきましたというのが……。

「そっか、それじゃあまん丸、今日泊まる家をお願いしていい?」
『もちろん~』
『じゃあ俺はワイバーンと遊んでくる』
『えぇ、炭にしない程度にお願いします』
『あぁ、任せろ』
『私も森の中の魔物を掃除してきますね』
「うん……」

 なるほど、今日の狩りはグレンとアクア担当と……。

『ラミナ、うちと薪集めしよか』
「そうだね」

 崖を背にして森の入口まで来てから振り返ってみると、峠越えルートをする際の道と思しき場所があったが、1カ所おかしなところがある。

「ねぇ、あそこの部分ってさ」
『なんや』
「崖に、木の杭を打ち付けて、板を乗せてるだけなんじゃ……?」
『せやで、元々道だった所が崩落したんや』
「それで崖に杭を打ち付けて、板を乗せただけと……」
『堅くて丈夫な木材やから大丈夫やで』

 いや、そういう問題じゃない……、私としてはあれを道と呼んでいいのか不明だ、馬車2台並列できるか微妙な広さな気がするけど……。

「この辺りって人いるの?」
『おらんやろ、だれがこんな辺ぴなところに住むねん』
「だよねぇ~、もしかしてあの馬車の積み荷とかってそのまま残っているって落ち?」

 軽く見積もっても道がある所まで4~500mほどある気がするけど……。

『そうやろな、落ちたら拾いに行くのも一苦労やし、崖を降りている途中でワイバーンに襲われるやろ』
「ん~無事なものだけでも届けたりできないかな?」
『ええんちゃう?ランフォール商会の積み荷もあるで』
「ぇ」
『右端のあの馬車ランフォール商会のや』

 ミントが教えてくれた場所に見えるのは車輪がついているから馬車の積み荷を積む荷台部分だと分かるものだったけど、かなりの年月が経っているらしく風化していた。

「積み荷もボロボロになってそうだけど」
『うちが見た感じ、使える道具や薬品やで、衣類なんかはボロボロやけど』
「そっか、後で積み荷みてみようか」
『せやな』

 ミントと2人で小枝や倒木している木を回収して回った。

「結構一杯拾えたね」
『せやね』

 多分、しばらくは薪集めしなくていいはず、それ位大量の倒木等の木材を回収した。

 元の場所に戻ると、平屋建ての建物が出来ていた。

「まん丸ありがとう~」
『ん~ん~、少し魔素分けて~』
「うんうん、どうぞ~」

 まん丸が私の側に来て腕にしがみついた。

「グレンはどこまで行ったのかな?」
『巣やない?』
「ワイバーンの?」
『そうだよ~、ワイバーンの巣ってあっちのほうにあるんだ~』

 まん丸が指さしたのは、崖を背にした先にある岩山だった。

「岩山に見えるけど……」

 私の中では、“あんな所に住んでるの?”と言う発想しか出てこなかった。

『そうだよ~あの頂上付近に巣があるんだよ~』
「へぇ……」
『こっちに来るよ~』
「ぇ?」
『運ぶの面倒やから誘導しとんのや』
「あぁなるほど……」

 そんなこと思っていると、2匹のワイバーンがグレンを追うようにこっちに向かって来た。

『フードかぶっとき』
「うん」

 急ぎ着ているローブのフードを被った。

 グレンとワイバーンの動きを見ていると、グレンが居るほうとは少し違う方を見てる?

「ワイバーンってグレン見えてないの?」
『そらそうやろ、濃い魔素を感じ取ってる位や』
「そうなんだ、そうなると私は?」
『感じ取ってるはずやで、けどな目の前に自分たちを攻撃してくる何もんかがおるんや、そっちに集中するやろ』
「そうだよね……」

 グレンとワイバーンの動きを見ていて思った。

 そりゃ無からファイヤーランスが放たれるんだもん、私よりも攻撃してくるグレンに集中するよね。

「一気に羽を燃やせばいいのに」
『そんなことしたらダメだよ~、一番おいしいのは羽の部分の皮膜なんだよ~』
「あっ、そうなんだ……」

 もしかして食べる場所を残すために苦戦しているのかな……?

 そう思った瞬間、グレンが放ったファイヤーランスが1匹のワイバーンの口の中に入った。

 そして次の瞬間、ファイヤーランスを飲み込んだワイバーンの首が爆ぜ、私がいる方に落ちてきた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 無意識のうちに身体強化をつかい慌ててその場を離れた。

「あぶない……」
『まにあったね~』
「うん……」

 落下してきたワイバーンを見て思う、軽く見積もっても体長20m位はある気がする。

 こんなものの下敷きになったら死にそう……。

『わりぃ~大丈夫か?』

 グレンはもう1匹のワイバーンと対しながら私に謝ってきた。

「大丈夫~」
『そうか、少し離れていろ』

言われた通りに少し離れていると、1匹目と同じやり方で2匹目も仕留めていた。

「ファイヤーランスって爆発するの?」

 口の中に入り喉に着弾したら爆発してるように見えた。

『あれファイヤーランスじゃないよ~、ボムアローって魔法だよ~』

 なるほどね爆発する矢か……。

「そっか……」

 とりあえず1匹は喉で爆発して首と胴体がさよならしたけど、もう1匹は1匹目より大きいせいか、首と胴体が繋がったまま落下してきた。

「これ解体するの……?」

 私が?

 1人で?

 絶対に時間かかるよ!?

 そんなことを内心思っていたら。

『ぼくがやる~、ミスリルの粉だして~』
「いいの?」
『もちろん~』
『まん丸は下手な解体されて不味くされたくないんだよ』
「あぁなるほど……、美味しいものを美味しく頂くためだと」
『そういうことだ、なんなら昨日の奴も出してやれ、全部地の子らが解体してくれると思うぞ』
「ぇ?」

 試しにカバンから昨日の魔物をだしてみると、どこからともなく地の子が私に群がり魔素を受け取った子からマッドゴーレムになり、まん丸からミスリルのナイフを受け取り解体を始めた。

「これってさ、昨日解体所に預けた意味あった?」

 どう考えても、預けずにまん丸達がやればよかったのに……。

『あったろ、ラミナがイスコの町に居たって痕跡になったからな』
「あぁ、そういうこと……」

 地の子結構優秀だななんて思っていると、アクアが帰って来た。

『この辺りの魔物はワイバーンの餌食になっていたのか全然いませんでしたね』
「まぁいいんじゃない?」

 とりあえず、平和な夜が訪れそうだ。
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