神様と呼ばれた精霊使い ～個性豊かな精霊達と共に～

第4章 学園生活 友人の難病編

第88話 サウススペルン

　サウススペルンの城壁の中に入り馬車降車場に降り辺りを見渡した。

　いくつか気づいたことがある。

　人族よりもリンクル族、ドワーフ族、エルフ族、獣人族が多い気がする。

「何か気になる事がありますか？」

　横に居たイリーナが私に尋ねた。

「なんか人族が少なくて他の種族の人が多い？」
「あ～そうですね、サウススペルンは獣人、リンクル、ドワーフの割合は高いと思いますよ、エルフの方々は町の南にある森の中に集落があるのでよくこちらに来ますね」
「なんか理由があったりするんですか？」
「ありますよ～、ルマーン革命の話は知っていますか？」

　ミントとアクアからいろいろな話を聞いているから知っている。

「精霊さんから聞いています」
「そうなんですね、ここは革命軍最大の拠点だったんですよ、そのため人族だけではなく、各地から様々な種族の方々が集まったんです」
「すると革命が成り立った後も、ここに住む人が多かったって事ですか？」
「そうです、こっちに来て下さい」

　イリーナの後についていくと、大通りになり、そこから中心部の方をみると、城壁があった。そして、さらに奥にその奥にも白い城壁があった。

「4枚の城壁に囲まれている……？」
「そうです。一番内側の2枚の白い城壁は、スペルン王朝時代の物なんですよ、そして3枚目の城壁は革命以前の城壁で、一番外側の城壁は革命時にリタさんが精霊さんとともに作った城壁なんですよ」

　精霊とって事は、まん丸が作ったのだろう。

「へぇ～」
「ちなみに3枚目と4枚目の城壁の間にある建物もリタさんと精霊さんが作った建物で、内側とは全く違う建築様式なんですよ」
「へぇ……」

　降車場近くの建物は3階建ての建物が多く並んでいた。

「もしかして寮と似たような感じなんですかね？」
「そうですよ、単身用の棟、ファミリー用の棟といろいろな間取りなんですよ」
「へぇ……、兵舎みたいな物だったってことですかね？」
「そうですよ、なので近年は一番外側は住居区として使われていますね、そして商業区等に使われているんですよ、目的の治癒院は住居区と商業区の城壁手前にありますね、いきましょうか」
「はい」

　イリーナの後に付いていく、外側の城壁と、真ん中の城壁まではかなり距離があるきがする。

「帝都より広かったりするんですかね？」
「帝都ほどは広くないんですが、この国では2番目の広さと人口を誇る都市になっていますよ。帝都まで馬車で3時間ほどですからね、サウススペルンの先には大きな港もありますし、東側に住む人たちがキラベル方面よりサウススペルンルートで帝都に向かう人が多いので、人の往来も結構あるんですよ」
「へぇ～」
「特に帝都の収穫祭期間はこの町も結構混むんですよ」
「ぇ？そうなんですか？」
「帝都で宿を取れなかった人たちが、この町で宿を取るので」
「近いからここで一泊してって事？」
「そうですね」
「スペルン遺跡も近いんですか？」
「遺跡なら、西門でて直ぐの所にありますよ」
『この町はね～スペルン王朝時代の衛星都市だったんだ～』
「衛星都市？」
『そうだよ～、遺跡の方には王に近い者たちが住んで、こっちは兵士の家族や、食料の貯蔵庫なんかがあったんだよ～』

　なんかイリーナとまん丸の話を聞いていて町の成り立ちなんかを知るのも興味がわいた。

「はぁ～」
「精霊さんから何か聞けました？」
「王朝時代は衛星都市としてって」
「そうですね、歩いて20分位の所に遺跡がありますからね」

　イリーナの足が止まった。

「ここが、サウススペルン治癒院になります」

　イリーナが見上げている建物を見ると、周辺の住居とはまた違った感じで真っ白な外壁の建物だった。

「ここだけ周辺と違いますね」
「ここはリタさんが錬金科の教師をやっていた頃に治癒院として建て直した場所ですからね」
「目立つのはそのためなんですか？」
「そうですよ、治癒院目的の人が迷わないようにって事です。ちなみに各地の治癒院も白い外壁とあのマークで統一されているんですよ」

　あのマークと指さした先には、2枚のヒール草がクロスし、白い鳥がクロスしたヒール草を両方の羽で包み込んでいるようなシンボルマークがあった。

「ヒール草と白い鳥？？」
「白い鳥はホワイトダヴ、平和の象徴を意味するんですよ」
「へぇ」
「どんな状況下でもあのシンボルを掲げる者を攻撃してはならないって意味もあるんですよ」
「ぇ？」
「あのシンボルの元には怪我人や病人が居ますよって意味もあるんです。そんなところを攻撃すると……」

　治癒院に来るのは治癒師か病人や怪我人となるとそういうことだろう。

「世間に非難されるってことですか」
「そういうことです。中に入りましょうか」

　木製の扉を開け中に入ると、広いロビーが広がっていた。