上 下
67 / 229
第4章 学園生活 友人の難病編

第67話 アクアの歌声

しおりを挟む
 翌日、午前中の授業を終え、昨日と同様にプリム達が居る場所に行った。

 昨日の場所に来ると、メンバーはロックが欠けているだけで昨日と同じ場所に座っていた。

「いらっしゃい」
「ミーちゃんラミちゃんいらっしゃい~」
「ん」

 3人の先輩と挨拶を交わし、昨日の場所に座り、今日もまん丸のリクエストの海鮮丼を食べ始めた。

「海鮮丼気に入ったの~?」
「ん~まん丸が今日も食べたいってことで」
「なるなる~昨日アクアちゃん見ていて思ったんだけど」

 ん?
 アクア?

「アクアがどうしたんですか?」
「あのさ、アクアちゃんって歌得意だったりするのかな?」

 今まで一緒に居たけど、歌以前に鼻歌すら聞いたことなかったけれど、どうなんだろうか?

『もちろん得意ですよ』
「ぇ、そうなんだ、得意みたいですよ」
「やっぱり、良かったら聞かせてもらえたりしないかな~?」

 やっぱりって何か思い当たる事があるのだろうか?

『いいですけど、今ですか?』
「良いみたいですけど、今か?って」
「うん、良かったら聞きたい」

 食堂で歌わせても良いのかな?

「ここで歌わせて良いんですか?」
「大丈夫ですよ」

 プリムが大丈夫というなら大丈夫なんだろう。

「だって、アクアどうする?」
『いいですよ、魔素貰いますね』

 アクアは、そう言うと私からごっそり魔素を吸いとると、可視化した。

「ふふふ、歌うのは久しぶりですね」
「アクアちゃんいらっしゃい」
「それでは皆様よろしくお願いします」

 アクアはそう言うと、プリムとミアンに頭を下げ、ミラとハンゾーの方にも頭を下げた。

 少し発声練習をすると、目を閉じ大きく深呼吸してから歌い始めた。

「ラ~ラ~ラ~♪」

 アクアの歌は、聞いたことのない言語で歌い始めた。歌い始めると周囲の雰囲気が一転したのが分かった。

 なんというか、何を言っているのか分からないけど、胸がすごく締め付けられる位寂しいとか切ない気持ちになり、帰りたくても帰れない故郷と、会いたくても会えない家族を想う気持ちが痛いほど伝わり自然と涙があふれ出てきた。

『良い歌だよな』

 アクアが歌っていると、グレンがぼそりとつぶやいた。

「うん……」
『アクアの歌は魔素と想いがこもってんねんで』
「そうなんだ」

 想いはすごく分かる。魔素がこもっていると言うことは魔法みたいな物なのだろうか?

 歌魔法といわれたら信じられるくらいに良い歌だと思う。

 そんなことを思いながら聞いていると、第1節目が終わり第2節目に入ったのか先ほどとは一転して、こんどは勇気や元気を与えてくれるような雰囲気の歌に変わった。

 第1節目は、ホームシックになりそうな歌だったけど、第2節目は1人でも頑張ろうと思える歌だった。

 2節目がおわった。

「ふふふ、御清聴ありがとうございました」

 そう言うと、アクアは全方向にお辞儀をしていた。

 そして次の瞬間、食堂に大歓声が湧き上がり、私はびっくりして後ろを振り返ってみると、たくさんの人が私達の机を囲んでいることに気づいた。

「「「「「アンコール!アンコール!アンコール!」」」」」

 食堂のあちらこちらからアンコール希望が飛んでいた。

「ふふふ、それではラストの曲ですよ」

 アクアは何というか、こういう大衆の面前で歌う事が天職のように思える。

「では、皆さんが午後の授業を頑張れるように」

 アクアはそう言うと、大きく深呼吸するような動作を見せてから歌い始めた。

 最後の曲はノリノリのアップテンポな曲だった。

 アクアが歌っている途中で周囲を見渡したが、皆がノリノリでアクアの歌を聴いていた。

 そしてその歌が歌い終わると、やはり周囲から大歓声が上がった。

「ふふふ、それでは皆さん、良い昼休みを……」

 そう一言残して、可視化を解いた様子だった。

『久々に歌えて楽しかったですが、疲れましたね』
「おつかれさま」

 アクアはぐったりした様子で、私の左肩に停まり休んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました

トール
恋愛
駅の階段から足を滑らせて死亡した高橋由利(享年25)は、親友がハマっていた乙女ゲームの世界に似た、しかし微妙に異なる世界へと転生してしまった。 そこは平凡な日本人顔が絶世の美人と言われる、美醜逆転の世界で、ゲームに出てくる攻略対象者達は面影を残しながらも、地味な日本人顔になっていた! そんな世界で、絶世の美女と呼ばれ、大富豪で王族よりも権力があるといわれている公爵家の跡取り娘として転生した由利だったが、まさかの悪役令嬢だった?! しかし、悪役令嬢のフラグを折る運命の相手(婚約者)が現れる。それはヒロインに罵詈雑言吐きまくる名も無きブサモブ(由利視点では超絶美形)。 確かこのモブ君、ヒロインを虐めたとかでゲームの前半に学校を退学させたられたよね? 学校を卒業しないと貴族とは認められないこの世界で、果たして攻略対象者、ヒロインから婚約者を守れるのか!? 良識のある口の悪いモブ(超絶美形)な婚約者と、絶世の美女(地味な日本人顔)主人公との、ざまぁありの美醜逆転ラブファンタジー。 ※この作品は、『小説家になろう』でも掲載しています。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

モブな私は猫と暮らす~婚約破棄されたモブなので猫と静かに暮らしていくはずが大変なことになりそうです~

とわ
ファンタジー
婚約破棄をされた瞬間、同じように婚約破棄されていた貴族令嬢ミーガンに転生した私。 転生早々、元婚約者に悪態をついて追放されて森に追いやられることになる。 そこで出会った黒猫と、森の中で平和に暮らしましたとさ、めでたしめでたしかと思いきや。おとなしい悪役令嬢や元気のいいヒロインがあらわれて、この世界が以前読んでいた小説の中だとわかる。しかも自分の立ち位置は悪役令嬢と暗躍する悪い魔女らしいことも。 そのうえ、登場するはずの3人の王子は現れないしで、知っているストーリーとはことごとく違っていく。 てっきり、モブの令嬢なんだろうとのんきに構えていたのに。猫と平和な生活を送るべくなんとかしなきゃと作戦を考えるけど、なかなか思ったようにはいかなくて…… この作品は「小説家になろう」さんでも掲載しています。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

処理中です...