上 下
30 / 263
第4章 学園生活 友人の難病編

第30話 サバイバル学習1

しおりを挟む
 サバイバル学習の初日

 動きやすい服装に身を包み、薬品を中心に必要そうな物を詰め込んだカバンを持ち、部屋の外でミアンと合流し教室に向かった。

 教室に入ると、皆私服を身に纏っていたが、一部の女生徒はスカートだけどいいのかな?

 そんなことを思っていると、クロエ先生が教室に入って来た。

「よっし、揃ってんな、今回のサバイバル学習の課題を発表する。ホーンラビットの角、ワイルドプラントの蔦、スペルンウルフの牙、ミニブラックバードの嘴だ、各パーティ1個ではなく人数分集めろよ」

 魔物退治が前提……?

『楽勝やな』
『ですね~』

 2人に任せよう。その後もクロエ先生が色々と注意事項を話していた。

「よっし、これから帝都南部にあるスペルン平原に向かう、今回はAクラスと合同だが問題は起こすなよ?」
「「「はい」」」
「それじゃ、ウェール川の港に移動!」

 学園を出てウェール川の港に行くと、大きな渡し船が停泊していた。

「SクラスもAクラスも全員そろっているな、乗船しろ!」

 皆乗船し、直ぐに出航し15分後には対岸の港に降り立った。

 そこには、既に幌馬車が15台停まっていた。

「右6台がSクラス分だ、1台2パーティーで考えてある」

 クロエ先生がそう言うと、皆が馬車の乗り込み始めた。

 乗り込む生徒が少なくなると、ミアンが。

「それじゃあ、私達も乗りましょうか」
「は~い」「ほいよ」「ほ~い」

 自分たちも馬車に乗り込んだ。

 乗り込みが終わった馬車からどんどん出発していった。

 帝都グリーサを出ると、のどかな麦畑が広がっていた。

「久々に町の外に出ました」

 突如ミアンが言った。

「そうなの?」
「えぇ、帝都に居ると、外に行く必要性がないんですよね」

 貴族だと他家との交流とかあるんじゃ?

「パーティーとかは?」
「基本的に帝都内の貴族邸でやるので」
「そっか」
「ラミナは?」
「入試前に帝都に来てからは出てないかな?」
「そうなんですか?」
「うん、帝都内で薬草類も含めて一通りの物がそろうから」
「そうですね~」
「暇だな」

 出発して間もないのに、ジョーイが暇だと言い出した。

 ジョーイの気持ちはわかる。私もじっとしているのは、そこまで得意ではない。

 暇な時間があるなら、ポーションでも何でもいいから作っていたかったが、今日は道具を持ってきていなかった。

「俺は馬車の横を走る」
「ぇ?何言っているんですか!?」

 ミアンの言う事もわかる。私も“はっ?”って思った。

「暇だからな、トレーニングがてら馬車の横を走る」

 そう言うとさっさと外に出て行った。

「獣人は、野蛮ね……」

 相乗りしている別パーティーのクラスメートがぼそりと言った。

『ラミナもやってみては?』
「ぇ?」

 アクアの提案に思わず変な声が出てしまった。そのせいで周囲の視線が私に集まる。

「どうしたんですか?」
『そやな、毎日スタミナポーション飲んどるから、めっちゃ体力はあるはずやで』
「いやいやいや、何言ってんの……、どれだけ走り続けなきゃならないのさ……」
『このペースなら、昼過ぎ位やんな?』
『そうですね、それ位になると思いますよ』

 何時間走れと……。

「いやいやいや……」
「ラミナさん~、大丈夫ですか~?」

 ミアンが、太ももをペシペシ叩いてきた。

「うん、大丈夫……」
『余裕でたどり着けると思うんやけどなぁ』
『ですよね~』

 スタミナポーション飲むようになってから疲れる事もないし、自分の限界が分からないのも事実。

「精霊さんですか?」
「うん」
「何の話をしていたんですか?」
「馬車と並走して走っても疲れないみたいなことを……」
「へ?体力に自信あるんですか?」
「あるかどうか、と言われたら分からない」
「そうなんですか?」
「うん、ここ数年疲れたことないから……」

 実際に町中で生活する分には疲れる要素がないと思っている。

「サバイバル学習が終わったら、実技テストがあるんですよ」
「ぇ?初耳なんですけど……、ってか何のために?」
「自分自身の今の強さを知る為じゃないですか?」
「へぇ~、全力出さないと駄目なのかな?」
「じゃダメなんじゃないんですか?」
「そっか……」
 
 何をやるのかが分からないけど、体力も魔素も一般以上にあるから目立つ気がしている。

 そんなこんな雑談やらしていると、昼過ぎにはスペルン平原に到着した。

 馬車から降りて見渡した感想は、丈がくるぶし程度草に覆われた平原で、奥には森が見えているくらいだった。

「よっし、Sクラス全員そろったな。5日後の昼までここで過ごしてもらう。ケガとかしたら、直ぐにここに戻ってこい!それから、森に入るのは構わないが、ゴーレムがいる遺跡には近づくなよ!」
『なぁなぁ、アクア、ゴーレムって、地の子どもやったやろ?』
『そうですね、私達が居ればゴーレムは問題ないですね』

 それって、遺跡行くって事なのかな?

「行く気なの……?」
『そりゃ、ノームはそこにおるからね』

 ノームが居るなら行かないと。

「ラミナ、何か言ったか?」

 念話で話す癖がなかなかつかない……。

「あっ、大丈夫です!」
「そうか、では解散!健闘を祈る!」

 各パーティーがばらけていく。

「ミアンよ、俺らはどうする?」
「そうですね、課題のアイテムは全部森の中なので、森に行きませんか?」

 4人で決めた結果、ミアンがこのパーティーのリーダーをすることになった。

「はい」「了解」「は~い」

 ジョーイを先頭に、私、ミアン、クロードという陣形で森の中に入った。

『狼ばっかりやん』
『そうですね、かなり数が多いようで……』

 索敵でもしてくれているのかな?

「ジョーイ君、精霊達が狼の数がかなり多いって」
「わかった」
「精霊さん便利ですね」
「まぁねぇ」

 確かに森の中は、ミントが一番本領発揮できる領域だ。

『いっちょ上がり!ラミナ両手を前に出しぃ』

 いきなりミントが叫んだ。

「ん?」

 立ち止まり、ミントに言われた通りに手を前に出すと。

「ん?急に立ち止まって、どうしたんですか?」

 どこからともなく、蔦に絡まれた黒い小さな鳥の死体が飛んできて両手の上に落ちた。

「ぇ?うわぁ!」

 驚きのあまり、叫んでしまった。
 
「なんだよ、うるせぇな……、ミニブラックバードじゃねか……、いつやったんだ……?」
「今右の方から放り投げられたような感じで飛んできたよね~」

 クロードはちゃんと何処から飛んできたか見ていたようだった。

「でも、この子……、まだ温かいですけど、死んでいますよ?それにこの蔦ワイルドプラントの……」
「なんか、精霊さんが両手を出せっていうからだしたら、飛んできたというか……」
「精霊がやったってのか?」
『せやで~』
「そうみたい……」
「好戦的なのか、課題に協力的なのか……、まぁいい、どこか見晴らしの良い所でばらそう」
「ばらすって、解体するってことですか?」

 ジョーイの発言に対し、ミアンが応えた。

「あぁ、その血の匂いで、狼を引き寄せる」
「そんなことして大丈夫ですか?」
「大丈夫だろ、ラミナの精霊が力を貸してくれるなら、どんなに狼が寄って来ても対処できるだろう」
『ええで、気合が入りなや』
『私も構いませんよ』
『このまま歩くと、開けた場所にでるから、やるならそこでええんちゃう?』
「精霊さんは、やる気満々みたいです。それからこのまま歩くと、開けた場所にでるそうです」
「わかった。このまま行こう」

 開けた場所に行く前に、ワイルドプラントの蔦に絡まれたミニブラックバードの死体6羽分が、私の腕に飛び込んできた。

『なぁ、ラミナ』
「ん?」
『ホーンラビット、森の中におらんで』
「ぇ?」
『ホーンラビットは本来、この森に棲んどるんやけど、狼が増えすぎて生態系が崩れとる』
「それって、課題達成できなくない?」
「どうした?」

 ジョーイが前を歩きながら聞いてきた。

「この森にホーンラビットが居ないって、狼が増えすぎて生態系が崩れているんじゃないかって」
「全く居ないのか?」
『森の中には居ませんが、遺跡の中にいますよ』
「遺跡の中に居るらしい……」
「はっ?ゴーレムと戦うのか?」
「一応中に居るってだけだから、行かなくてもいいんじゃない?」
『ノームもおるから、行かへんと……』

 確かに私としては、そっちの方が大事だが、他のメンバーに迷惑かけるのも気が引ける。

「まぁいい、とりあえず進もう」

 しばらく歩くと、開けた場所に出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

追放された薬師は騎士と王子に溺愛される 薬を作るしか能がないのに、騎士団の皆さんが離してくれません!

沙寺絃
ファンタジー
唯一の肉親の母と死に別れ、田舎から王都にやってきて2年半。これまで薬師としてパーティーに尽くしてきた16歳の少女リゼットは、ある日突然追放を言い渡される。 「リゼット、お前はクビだ。お前がいるせいで俺たちはSランクパーティーになれないんだ。明日から俺たちに近付くんじゃないぞ、このお荷物が!」 Sランクパーティーを目指す仲間から、薬作りしかできないリゼットは疫病神扱いされ追放されてしまう。 さらにタイミングの悪いことに、下宿先の宿代が値上がりする。節約の為ダンジョンへ採取に出ると、魔物討伐任務中の王国騎士団と出くわした。 毒を受けた騎士団はリゼットの作る解毒薬に助けられる。そして最新の解析装置によると、リゼットは冒険者としてはFランクだが【調合師】としてはSSSランクだったと判明。騎士団はリゼットに感謝して、専属薬師として雇うことに決める。 騎士団で認められ、才能を開花させていくリゼット。一方でリゼットを追放したパーティーでは、クエストが失敗続き。連携も取りにくくなり、雲行きが怪しくなり始めていた――。

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

処理中です...