上 下
22 / 263
第3章 旅立ち

第22話 入学試験4

しおりを挟む
 実技試験の会場を後にし、受付まで戻って来た。

「すいません~、実技と魔法が終わったのですが~」
「受験番号とお名前を教えてもらってもいいですか?」
「252番のラミナです」
「ありがとうございます。ミランダさん」

 近くに居た女子学生が駆け寄ってきた。

「はい?」
「この方を、筆記試験の教室へ」
「あっ、はい、こちらです」

 1人の女子学生の後に続き校舎内に入った。

 いくつかの教室から受験生と思しき人が出てきたりしていた。

 身なりの良さそうな子達ばかりだった。

「あれ?あっちの教室は?」
「あぁ、貴族の子ども達ですよ、彼等は先に筆記試験で、その後に実技と魔法試験なんです」

 なるほど、待ち時間とかを減らすためか、なんて思っていた。

 そして、誰も居ない教室に案内された。

「それじゃあ、ここで待ってってくださいね」
「はい」

 それだけ言うと、女子学生が教室から出て行った。

 その後、待てど、待てど誰も来ず、やる事もなく暇を持て余していた。

『暇やね』
『ですね』

 ミントとアクアも暇を持て始めた。

 道具があれば薬作りするんだけどなぁ、なんて思いながら窓の外を眺めていた。

 待っていると、次第に人が集まって来た。

 教室が定員に達すると、試験官と思しき人が入って来た。

「はい、それでは筆記試験の説明をはじめます。各机にインクとペンが入っていると思いますので出してください」

 言われた通りに机の中を探ってみると、インクとペンが出てきたので、2つを机の上にだした。

「皆さん出しましたね、これから答案用紙を配布しますが、私が“試験はじめ”と言うまで裏面のままにしてください」

 そう言うと、試験官が、1人1人の机の上に答案用紙を置き始めた。

 最後に私の所に置いて、試験官が教壇に戻った。

「それでは、試験について説明します」

 その後も細かい説明を延々と話しをしていて頭に入ってこなかった。

『なんや、リタの時と全く同じやん』
『計算問題が少し違う位ですかね』

 まだ裏面の状態なのに、問題がすべてわかっているようだった。

 もう2人に任せよう、そんなことを思った。

『いいですよ、直ぐに終わらしましょうか』
『ん?なにをするの?』
『試験が始まったら右手でインクの瓶に触れて、左手で答案用紙を撫でてください』

 ん?
 良く分からないけど、インクを持って答案用紙を撫でればいいだけ?

『わかった』

 とりあえず、アクアの言う事聞いておこう。

「それでは、試験はじめっ!」

 いつの間にか説明が終わっていたようだ。

 答案用紙を表にして、アクアに言われた通りインクの入った瓶に触れて、答案用紙を撫でると……、不思議な事に、撫でた場所に答えが浮き出ていた。

 ぇ?

 そんなことを思いながら答案用紙の全面を撫で、すべての問題の解答を埋めた。

 本来ならあり得ないが、答えを埋めてから問題を見て見た。

 一番最後には、ボッシュから聞いていた通り、得意魔法の魔法陣を書けという問題があった。

 そして、その問題の解答は、“私の使う精霊魔法に魔法陣は存在しません”と記入されていた。

 他の問題は、計算問題以外では、アカデミー志望動機や、将来どうしたいか等簡単なものが多くみられた。

『終わりましたし、家に帰りましょ』
『せやな』
『途中退出していいの?』
『そう説明しとったで』
『手順ある?』

 説明をほとんど聞いてなかったためかどうすればいいのか分からなかった。

『答案用紙を裏面にし、挙手するんです。試験官が答案用紙回収したら退出していいそうですよ』
『そうなんだ、ありがとう』

 アクアに言われた通り、答案用紙を裏面にし挙手すると、すぐに試験官が来て、答案用紙を回収していった。

『ほな、出よか』
『うん』

 静かに席を立ち、廊下に出て、そのままアカデミーを後にした。

 こうして、ほとんど何もしていない入学試験が終わった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...